オープンキャンパス2025/6/15
システムの複雑さのうち、包含するサブシステムなどシステムを構成する要素数に起因する複雑さがある。システムの性質を決める主たる要素の数の規模をシステムサイズといい、大きくミクロ、マクロ、メソに分けることができる。
ミクロなシステムとは主たる要素数が少なく、それらの相互作用が全体システムの挙動を決め忠実に記述できるシステムである。たとえば地球を回る月の挙動は、地球と月の質量と距離から運動方程式によって精度良く記述される。部品点数が数百程度の電子回路の挙動も個々の要素の挙動を積算することで設計や推定が可能である。
マクロなシステムとは、システムの構成要素数が莫大であり、個々の状態を追跡することが実質的に不可能ながら、要素の挙動をある一定の確率分布で記述することが可能であり、全体システムでは比較的単純なシステム則が成り立つシステムである。実空間での気体の挙動は、個々の気体分子の運動の総和であるが、全ての分子を追跡することが現実的には不可能である。その上で、ボイルシャルルの法則のように、分子群がなす温度、圧力、体積の関係にはシンプルな比例則が成り立っている。これを熱力学といいマクロなシステムの良い例となっている。このとき気体分子の数はアボガドロ定数以上を想定しておりその個数は膨大である。
構成要素の挙動が比較的簡単に記述可能なミクロなシステムでありながら状態遷移が非線形なときには、全体挙動がミクロでもマクロでもない複雑な様相をもつことがある。このようなシステム感をカオスと呼び、1990年代に精力的に研究がすすめられた。システム全体は発散はしないものの、一見して不安定(予測困難)な挙動となる。このような挙動を埋め込みによって記述した軌道をストレンジアトラクタという。
ミクロな記述をするには規模が大きく、しかしマクロな記述では抑えることのできない、中程度の複雑さと難しさをもったシステムのサイズを、メソサイズシステム(中規模システム)という。2000年代以降、ミクロシステム、マクロシステムについての研究がそれぞれ深まり、計算機の能力が向上してミクロよりは大きなシステムが扱えるようになりメソシステムが注目されている。
医療問題や、社会問題、経済問題などを含む、自治体サイズ(100万人の相互関係)の問題はメソサイズである。その特徴は、ミクロに記述するには大きすぎるが、個々の要素の特性が強く例外が多くなり熱力学的に全体モデルも構築が難しいところにある。ミクロベースの社会シミュレーションなどがこのサイズであり、モデルの検証がミクロにもマクロにも比較しずらい特徴がある。