システム工学

システム工学(systems engineering)は、システム思考=システム理論的パラダイムを工学的に応用し、システムにまつわる問題解決を行う工学分野である。ひらたくいえば「問題解決の工学」といえる。このため対象とするもの(システム)は、森羅万象であり、物理的システムとして機械システム(制御システム)、生体システム(バイオシステム)などがあり、概念的システムとして社会システム、組織システム、経済システムなどがあり、実体物と概念が混合したところでは、教育システムや、情報システム、通信システムなどがある。これらの対象から立ち上がる様々な問題を解くための技術を開発することがシステム工学の目的である。

システム工学との対比において、システム科学はこのシステム工学で扱う様々な対象と解法を抽象化したときの統一的な性質を抽出、検討、理論化する科学であると言え、数学的な手法の検討がその中心となる。

システム工学の基本手法は、システムモデルを作成し(モデル化)、シミュレーションを援用しつつ、分析や解析を行ない(分析)、目的に対する解法を構築し(デザイン・求解)、解を得るという流れである。線形システム論では、対象システムを状態を持つ遷移行列で表現し、微分方程式化でダイナミクスを記述し、目標との誤差を最小化する適応要素を線形代数と微分方程式にもとづいて設計するという手順となる。

モデル化、分析、求解のそれぞれのステップで対象に応じて様々な手法がある。

システムエンジニアとは本来、様々な課題において、このシステム工学の手法に基づいて、問題解決を行う技術者のことである。2021年現在の日本では系統的なシステム工学すなわちモデル化やシステム分析の技術が十分浸透しておらず、コンピュータやパッケージを用いた体当たりな解法を適用する技術者を指す言葉になっている。

本来のシステムのモデル化と分析では、ユーザや運用者(の能力やミス)もモデルとして組み込んでいる。その上で、トータルな最適化を行うことがもっとも大切である。しかし多くの実際のシステム構築ではこうしたヒューマンファクタを見逃してトラブルとなりがちである。

問題解決において、設計者も含めて人の要素が大きいため、人材開発もシステム工学の一分野となっている。創造性開発、クリティカルシンキング、論理思考、発想法などもシステム工学に含まれている。