地獄はここにあるぞと、鈴藤は目を細めてつぶやいた。
鈴藤:エクスカリバーさん救出ゲームにうかがいました。よろしくお願いします。 こちら使用するアイドレスになります。鈴藤(ver1)
君が見る限り、蒼梧藩国がなんとか形を保っているのは奇跡に見えた。設定国民に武器を自由化していたのが良かったようだ。他の国民に武器を渡してない国が急速に侵食されて滅亡する中、まだどうにか形をなしている。一番遅く、そして一番長生きする形になっていそうだ。
鈴藤:まずカレンを探します。カレン限定能力という大部品に犬をも超える嗅覚という部品を設定してあります。これを使ってカレンの臭いを探します。
見つけるための評価は3だ。 探すための関連大部品はあるかね。
鈴藤:大部品: 長距離走の訓練を提出します。評価8です。とにかく走って探します。
走って探すことにしたが、それが最近ではなかなか難しい。
すぐ敵にぶつかるからだ。あなたは竹林にまぎれてじりじり探す。
敵、というか裏切り者たちは火炎放射機を使って蒼梧の街を燃やそうとしている。それを狙撃で防いでいるという格好だ。元は同じ国民だったであろう者が殺しあっている。
カレンなら……どうしているだろう。
鈴藤:カレンなら狙撃で街を護っている側を指揮、もしくは援護していると考えます。街を護っている側の勢力と接触してカレンらしい人物がいないか聞いてみます。
狙いは当たったようだ。何千も死体が散乱する郊外の畑で、ハリセンで戦っている彼女を見つけたが、心が痛む。殺し合いをしている中でハリセンを使っているのが、バカみたいに見えるのが腹立たしい。
鈴藤:「カレン! いちど引いてこっちへ!」 拳銃で援護しつつ声をかけます。
カレンは泣いているように見えた。無理やり手を引いて一度撤退する。
嫌な沈黙が続いている。
鈴藤:「泣かないで。目が見えねば、勝率が下がります」ハンカチで目元をふきます。
カレン:「気持ち悪いやつ……こんなとこまで来るなんて」
涙をふいてあげていたら、そんなことを言われた。
しばらく待っていたら彼女は落ち着いたようだ。涙を呑んでまた立ち上がった。鈴藤の目でなくても、その姿はたいそう格好よく見えた。
カレン:「行ってくる」
鈴藤:「まった、大事な話があります。真面目に聞いてください」と引き止めます。
カレンは難しそうな顔をしている。なんと説明する?
鈴藤:「未来から援護に来ました。すべての国は、T19で一度滅びます。その運命は変えられない。あなたがここで死ぬまで戦ってもです。そのうえで、時間犯罪を解決し、最大限を助けて未来へ撤退します」
カレンは唇をかんだ。
カレン:「じゃあ、私は死ぬまで戦うわ。でも時間犯罪は分かった。解決する。でも、なんで気持ち悪いのは自分で行かないの」
鈴藤:「貴女を死なせたくないからです」
カレン:「ば、ばっかじゃないの」 思ったより声は小さかった。「そもそも私が生き残ったら時間犯罪でしょ」
鈴藤:「逆です。本来なら、あなたは生き残るはずでした。ほかの眠りについたみんなのように。それを変えたやつがいる」
カレン:「だれ……?」
鈴藤:「それが誰かは、生き残ったら話します。今はエクスカリバー氏を救出にいかなければ。間に合わなくなる」
カレンの目が細められた。
カレン:「あんたね。そうでしょ」
鈴藤:「証拠はないでしょう? 逮捕はできないはずです。 心配しなくても、すべて終わったらちゃんと話しますよ」
カレンは歯を見せて怒った後、あなたを殴ろうかと考えて、やめた。
カレン:「どこ? そのエクなんとかは。偽名臭いけど」
鈴藤:「街を襲っている連中に捕まっているはずです。場所は調べなければわかりませんが・・・それと、死体代わりに折れた剣を用意しないと」
カレンは難しい顔をしている。
カレン:「言ってることが分からない。死体の代わり? なにそれ」
カレンは腕時計型時空震動測定器をいじっている。
カレン:「ノイズが多い。あいつらだ……アルファコンプレックスがあれば……」
鈴藤:「非科学的ですが、エクスカリバー氏の本体は剣なんです。なので、死ねば折れた剣が残る、と、こういう寸法です」「アルファコンプレックスとは?」
カレンは鈴藤を見た。
カレン:「それを知らないってことは時空警察機構の捜査官でもないのね」 カレンはため息。 「アルファコンプレックスはコンピューター。位置だけではその前に飛べない。下手に飛ぶと遡行競争になる」
鈴藤:「となると、足で探すしかないわけですか・・・まぁ、死体代わりの剣は街中で手に入るでしょう。動きつつ話ましょう」街で剣を探しつつ会話します
街を歩くと花売りの老婆がいる。
カレンが慌てて彼女の手を引いて避難させ始めた。
老婆:「悪いねえ。昔と同じくらいここも物騒になっちゃって」
老婆はお礼がしたいようだが、何も持ってないらしい。
カレンはいいんですと言ってちょっと笑った。
カレン:「私は警察官だから」
鈴藤:「・・・変わりませんね、警察官らしい」
カレン:「変わらないってに? 改変される前の私を知ってるってこと?」
カレン:「まあいいわ。探し物、見つかるといいけど」
鈴藤:「失礼、おばあさん、もしやエクスカリバーという優男をご存知では?」
老婆は鈴藤の言葉に目を大きく開いた。白内障の目から涙が出ている。
老婆:「聖剣さまは我々の代わりに死んでしまわれた……」
カレン:「いつ頃?」
老婆:「三年ほどまえ……」
カレンと鈴藤の姿は消えた。
3年前に戻った。6年前に戻った。15年前に戻った。
ここはまだ静かな蒼梧藩国だ。緑が多く、少し蒸し暑い。
人々が行き来している。
鈴藤:「・・・ちなみに、なにゆえ15年前に?」
カレン:「バカね。時間犯罪はいつだってその前に阻止しなきゃいけないのよ。それにこの時代にならあいつらも……あった。やった」
カレンとは鈴藤の手を引いて飛んだ。
ここは元の時代から27年前だ。羽黒の家の前にいる。
カレン:「ここね。ここで歴史が改変されてるわ」
鈴藤:「ほうほう、またずいぶん飛びましたねぇ」なんか襲われそうな気もするので周囲警戒してます
扉の向こうから殺気がするね。
どうしよう。
鈴藤:ふつうにノックします。コンコン。
エクスカリバー:「悪いが帰ってくれないか。今忙しいんだ」
カレンが鈴藤を見ている。
鈴藤:扉をけり破って中に入ります。「お邪魔しまーす」
気があったようだ。カレンも一緒に蹴り破った。
エクスカリバーは羽黒を地下に隠していた。殺す目で見られたが何もしない。そのまま作業をしている。
鈴藤:「正直に答えろ。すべてはぐろさんのためにやったというなら情状酌量も考えてやる」
作業が終わったようだ。
エクスカリバーは目をつぶって何やら愛の言葉をささやいている。
そして顔を上げて鈴藤を見た。
カレン:「あ! あんた前に見た時間犯罪者!」
エクスカリバー:「今すぐミンチにしてやってもいいが、今日はやめといてやる。時間犯罪を捜査しているつもりなら、ここには何もない」
鈴藤:「どういう意味だ? カレンはここが時間犯罪の基点だと言っている。だがあんたは何もないという。どっちが正しい?」
エクスカリバー:「時間など……跳躍技術ができた今、何の意味がある」
カレン:「職業犯罪者らしい言い方ね。クロス・アクシャ」
エクスカリバー:「男の力を借りないとこんなところにも来れないのか」
カレンは半眼になった。
カレン:「女の力を借りないと犯罪もできないんでしょ」
エクスカリバー:「残念だが外れだ。本当は友が死んだ時点で俺も眠ろうと思っていた。それがお前たちのいう犯罪なんだろうだが……」
エクスカリバーは窓の外に目をやった。 美しく成長した花売りの女が、子供を抱き上げて元気に花を売っている。
エクスカリバー:「私が好きにやって何が悪い」
鈴藤:「なるほど、たしかに花売りの女を助けようというのなら、お前は悪くない」肯定します
カレンが激怒した。
カレン:「どっちの味方よ! 裏切り者!」
エクスカリバーは鼻で笑うと剣を抜いて外に出た。
エクスカリバー:「私はもう、ここには戻らん。これから私は……ただの剣だ。折れるまで戦う。好き勝手に。去れ、傍観者ども」
鈴藤:「勝手に去るんじゃない阿呆。勝手に折れるんじゃない。いいか、死ぬ前日に回収してオマエを未来に連れて行く、これがギリギリの妥協点だ」
エクスカリバーは笑った。
エクスカリバー:「断る。一人でも助けられるそのうちはあきらめてやる道理がない。友誼は守る。後の時代には名を遺す。それで十分だろう 」
鈴藤:「その程度の戦果で十分とか言うんじゃない。まったく足りない。生き残って100年平和に生きてから十分とかいえ。あとこれは言いたくなかったが、はぐろを悲しませるな」
鈴藤の説得は一定の効果があったようだ。
エクスカリバーはため息。
エクスカリバー:「それはマクイックに言え。そいつが本当の意味の時間犯罪者だ。で、見たところ妥協するなんてお仲間のようだが。どうだ、一緒に戦わないか。失敗するかもしれないが、そうでないかもしれない」
鈴藤:「ああ、マクイック本人には今頃伝わってるだろう。俺はギリギリまで戦ってもいいですが、カレンさんはどうします?」
カレンは足を踏み鳴らしている。
カレン:「だから! それが! 時間犯罪なの! どんなに悲しくてもそれは歴史なの!」
エクスカリバー:「行くか。相棒。そういえば、名前はなんだっけ」
鈴藤:「鈴藤 瑞樹だ、いいか、俺はお前を助けにきたんだ。最後の最後で、俺はお前を助けてカレンと未来にいく。それを忘れるな」
エクスカリバー:「二人ならどうにかなるかもな」
カレン:「犯罪者!」
そういいながらもカレンはついては来た。まあ、自身も必死に戦ってた口なので、強くは……しかし泣いてる。
介入は終了した。任務は達成できなかった。明後日の方へ転がったので評価は不能だ。