私たちは、「未来予想図」ではなく、2127年の日常を描いてみました!
Code for Hodogayaでは、2027年に保土ケ谷区が区制100周年を迎えることを一つの契機として、そのさらに100年後、区制200周年となる2127年のJR保土ケ谷駅西口をテーマに、未来の駅前風景を制作しました。
2026年現在から見れば101年後(100年後と表現する)です。
本作品の目的は、「100年後には必ずこうなる」と未来を予測することではありません。現在のJR保土ケ谷駅周辺に存在する地形、鉄道、暗渠、都市構造、地域の歴史といった比較的長期に残りうる条件を出発点として、人口構成、交通、エネルギー、モビリティ、物流、情報技術、建築、地域文化などが今後100年間でどのように変化しうるかを仮定し、2127年に暮らす人々にとってのごく普通の昼下がりを一つの未来シナリオとして可視化したものです。
2027年の区制100周年について、保土ケ谷区では過去100年を振り返るだけではなく「次の100年」を考え、未来へつないでいくことを基本的な考え方としています。そこでCode for Hodogayaでは、「次の100年」の先にある区制200周年の瞬間まで視点を伸ばしてみました。
本作品は、一般的な意味での「未来予想図」とは少し異なります。100年後の社会を高い精度で予測することは困難です。人口、気候、経済、制度、交通、エネルギー、人工知能、ロボティクスなど、都市を構成する要素には大きな不確実性があります。そのため本研究では、2127年を一つの確定した未来として提示するのではなく、「現在確認できる地域特性を残しながら、技術や社会が100年間変化した場合、どのような日常風景が成立しうるか」という問いを設定しました。現在の地域を観察し、長期間残りそうな条件と、将来変化する可能性の高い条件とを分け、複数の仮定を組み合わせたうえで生成AIを反復的に利用して可視化しています。したがって本作品は、未来を「当てる」ためのものではなく、未来を「考える」ための探索的未来シナリオ/Future Scenario Visualizationとして位置づけています。
制作にあたって重視したのは、単に高層ビルや空飛ぶ乗り物を大量に配置して「未来らしく」することではありません。むしろ、100年経っても、ここが保土ケ谷だと分かること。そして、2127年の人々にとっては、そこに描かれている未来技術が特別なものではなく、日常の一部になっていることを重視しました。現在の保土ケ谷駅を完全に消して別の未来都市に置き換えるのではなく、現在の地形や地域資源、駅の位置関係、宿場町としての歴史などを引き継ぎながら、その上に約100年間の都市更新が積み重なった状態を想定しています。
2127年の保土ケ谷駅前を考えるにあたり、巨大な超高密度都市を想定しているわけではありません。一方で、人がほとんどいない静かな郊外都市でもありません。学生、働く人、高齢者、子育て世代、外国人など、多様な人々が駅前を行き交い、その間を新しいモビリティや物流システムが動いている。人と技術が共存し、活気はあるけれど、過密ではない。そんな駅前を目指しました。言葉にするなら、「区制200周年の保土ケ谷も、ほどほどに、がやがや。」というイメージです。
未来都市のイメージでは、建築物や乗り物ばかりが強調され、人間の生活が見えにくくなることがあります。本作品では逆に、「2127年にも駅は人が利用する生活空間である」という前提を置きました。現在確認できる横浜市の人口動態や高齢化等の傾向を参考にしつつ、100年以上先については不確実性が極めて大きいことを踏まえ、特定の将来人口を断定するのではなく、一つの人口・社会構成シナリオとして人物を配置しています。高齢者、学生、子育て世代、働く人、外国人などを混在させ、人口構成の変化を意識しながらも、特定の属性だけに偏らない駅前風景としました。重要なのは「未来の人物を展示すること」ではなく、2127年の人たちが普通に駅を利用している様子をつくることです。
未来を考える際にも、都市には簡単には変えられない条件があります。保土ケ谷駅周辺についても、丘陵地形、鉄道、道路、暗渠など、現在の街を形成している構造があります。本作品では、そうした地域固有の条件を可能な限り無視しないことにしました。特に西口側には暗渠が存在することから、その上部空間の活用を意識し、松並木や公園空間につながる緑地を想定しています。西口と東口は、将来的な駅施設の更新によって駅ビルとしてよりシームレスに接続される設定とし、東口側についても既存市街地が長期間の再開発を経て高層化したものとしています。これは具体的な再開発計画を予測したものではなく、「既存の都市骨格を完全に消さずに100年間更新を続けた場合」という仮説です。
鉄道についても、現在の路線体系が100年後までそのまま存続すると断定することはできません。一方、本作品では「横須賀線という鉄道軸が形を変えながらも未来へ継承される」というシナリオを採用しました。未来型の横須賀線車両や、成田エクスプレスの系譜を想定した列車を配置し、現在の保土ケ谷駅から未来への連続性を残しています。ホームには安全性を高めるガラス状の防護設備を設け、駅全体には大規模な透明屋根を配置しました。大屋根は単なる未来的デザインではなく、雨天時の快適性、駅東西の回遊性、自然光利用、エネルギー利用などを包含した未来の駅空間を想定しています。駅名表示についても「JR 保土ケ谷駅/HODOGAYA STATION」といった現在につながるアイデンティティを残し、どれほど設備が変化しても「保土ケ谷駅」であることを重視しました。
尚、画像中の鉄道車両、設備、路線等はJR東日本その他の事業者が公表している将来計画を示すものではなく、本研究における架空の未来設定です。
2127年の社会では、自動運転や小型モビリティが現在よりさらに日常化している可能性があります。そこで駅前には、人の歩行空間を残しながら、新しいタイプのモビリティが共存する空間を設定しました。
作品中には、次のような要素を細部に配置しています。
自動運転を前提とした地域交通
高齢者等の移動を支援する小型パーソナルモビリティ
自走するビジネスバッグ
未来型ベビーカー
人流と干渉しにくいモビリティレーン
自動化された貨物輸送
貨物を扱う複数の物流ドローン
高性能な太陽光発電や振動発電等のエネルギー技術を想定した駅設備
紙媒体に代わる大型デジタルサイネージ
バリアフリーを前提とした駅前動線
災害時にも都市機能を維持しやすいレジリエントな駅空間
但し、これらを「未来技術の展示会」のように見せないことにも注意しました。2127年の住民にとって、自動運転車や物流ドローンは、2026年の私たちにとってのスマートフォンや交通系ICカードのように、存在すること自体を意識しない日常技術になっている可能性があるからです。
画像の中には、未来の物流システムとして貨物車両や物流ドローンを配置しています。その貨物車両には、遊び心として「SBC.logistics」の名称を入れています。これは単なる企業ロゴ風の装飾ではありません。現在地域で活動している主体やコミュニティの系譜が、形を変えながら100年後にも何らかの形で続いているかもしれない、という小さな未来設定です。2127年の社会に現在の組織がそのまま存在することを予測しているわけではなく、「2020年代に地域で活動していたものが、100年後には物流や都市サービスの一部へ発展していたら」という架空のストーリーを街の片隅に忍ばせています。大きく主張するのではなく、気付いた人だけが少し楽しめるディテールとしました。
もう一つの小さな仕掛けが、駅前を歩いている「星川とばり」の格好をした人物です。星川とばりは、私たちCode for Hodogayaの活動において3Dアバター化させて頂き、VR・メタバース空間などで利用できるデジタルデータとして展開しています。2127年の場面では、そのキャラクターを大型広告として目立たせるのではなく、あえて「星川とばりの装いをした普通の人」を街の中に配置しました。そこには、2020年代に生まれたデジタルキャラクターが、100年後には地域文化の一部として定着しているかもしれないという設定があります。キャラクター文化が100年間そのまま維持されるという予測ではありません。しかし、現在の祭り、伝統衣装、地域キャラクター、スポーツチームなどが世代を越えて地域文化になることがあるように、デジタル時代に生まれた文化資産も、何らかの形で将来の地域文化へ継承される可能性があります。その可能性を、小さな人物一人で表現しています。
未来を描くからといって、古いものをすべて消す必要はありません。保土ケ谷は東海道五十三次の宿場町として歴史を持つ地域です。そこで作品内には、未来型の駅設備やデジタルサイネージと並べて、「東海道五十三次・保土ケ谷宿」を示す地域案内も残しました。これは本作品における重要な考え方の一つです。2127年になれば、江戸時代は現在よりさらに遠い過去になります。しかし、だからこそ地域固有の歴史を保存し、デジタル技術を利用しながら次世代へ伝える価値は高まっているかもしれません。新しい技術と古い地域資源を対立させるのではなく、「江戸時代の保土ケ谷」「2020年代の保土ケ谷」「2127年の保土ケ谷」が同じ空間に積層しているという都市像を意識しています。
駅前の広告には「YOKOHAMA 2128」という表記も配置しています。2127年を描いた作品で、あえて2128年という「翌年」を登場させています。これは画像を「未来を外側から眺める絵」にしないための小さな仕掛けです。2127年を生きている人々にとって、2127年は未来ではありません。彼らにとっての「現在」です。そして彼らにも、来年の予定やイベントがあります。2026年の駅に2027年のイベント広告が掲出されていても不思議ではないのと同じように、2127年の駅には2128年を告知する広告がある。こうした時間感覚を与えることで、作品を単なる「101年後の未来予想図」ではなく、2127年の日常の一瞬を撮影したような世界へ近づけています。
駅前には、未来的な建築だけではなく、宿場町としての保土ケ谷を感じさせる意匠も残しています。その一つが「西口茶屋」です。100年以上先の社会で、現在と同じ形式の茶屋が営業していることを予測しているわけではありません。むしろ、都市が高度にデジタル化されたからこそ、人々が地域の歴史や木、紙、食、対面コミュニケーションといったアナログな文化を再評価している可能性もあります。未来だからすべてを金属やガラスにするのではなく、木質的な空間や宿場町の記憶を意図的に残しました。
本作品で最も重視したのは、実は建物でも鉄道でもドローンでもありません。人々の日常です。100年後には社会や技術が大きく変化しているとしても、「駅が人と人をつなぐ場所である」という役割は残っているのではないか。そんな仮説を置いています。そのため、この画像を「100年後のJR保土ケ谷駅の未来予想図」と呼ぶよりも、「2127年、区制200周年を迎えたJR保土ケ谷駅前の日常風景」と表現する方が、本作品の意図に近いと考えています。
本作品の制作には生成AIを活用しています。但し、生成AIに「100年後の保土ケ谷駅を描いて」と一度指示して生成したものではありません。地形、駅施設、鉄道、人物、人口構成、移動手段、物流、看板、地域文化、歴史資源などについて条件を細分化し、構図や要素を調整しながら反復的に生成・修正しました。生成AIは未来を予測する主体としてではなく、人間が設計した未来シナリオを視覚化するためのツールとして利用しています。特に細かな地域固有要素を維持しながら未来的要素を追加すると、生成AIは建築物を勝手に変更したり、必要な要素を削除したり、文字を変形させたりすることがあります。そのため、全体構成を維持しながら細部を調整する工程を重ねています。これは生成AIの性能を示すこと自体を目的としたものではなく、地域調査・未来シナリオ・デザイン・AIを組み合わせた実験でもあります。
本作品には、当然ながら大きな不確実性があります。2127年の横浜市の人口、JRの鉄道網、建築技術、エネルギー、交通制度、人工知能、物流、ファッション、国際情勢などを2026年時点から正確に予測することはできません。また、100年間の間には、現在想定できない技術革新や社会変化が発生する可能性があります。したがって、本作品に描かれた建築、鉄道車両、企業・団体、交通システム、イベント等は、将来計画や公式予測を示すものではありません。本研究が提示するのは、「こうなる未来」ではなく、「こういう未来も考えられる」という一つのシナリオです。むしろ重要なのは、この画像が正しいか間違っているかではなく、「100年後に何を残したいのか」「何を変えたいのか」「保土ケ谷らしさとは何なのか」「未来の駅は誰のためにあるのか」「技術が進歩したとき、人の暮らしはどう変わっているのか」という問いを生み出すことだと考えています。
保土ケ谷区は1927年に誕生しました。2027年に区制100周年を迎え、そして、その100年後の2127年には区制200周年を迎えます。
1927
区制施行
↓
2027
区制100周年
↓
2127
区制200周年
1927年の人々が2027年の保土ケ谷を正確に想像することが難しかったように、私たちも2127年を正確に知ることはできません。それでも、「次の100年」を考えることには意味があります。未来を考えることは、現在のまちの何に価値を感じているのかを改めて考えることでもあるからです。2027年の区制100周年は、これまでの100年を振り返る節目であると同時に、次の100年を考える出発点でもあります。保土ケ谷区も、100周年後について「次の100年に向けて、取り組みを継続させていく」としています。
Code for Hodogayaでは、ICT、オープンデータ、AI、3D、フィールドワークなどを活用しながら、地域の過去を記録し、現在を調査し、未来について考える活動を続けていきます。
2127年。駅舎は変わり、電車も変わり、移動手段も変わり、街の景色も大きく変わっているかもしれません。しかし、駅前には人がいて、誰かが学校へ向かい、誰かが働き、誰かが買い物をし、誰かが地域の歴史を知り、誰かが星川とばりの格好をして歩いている。その横を「SBC.logistics」の貨物車両が走り、物流ドローンが荷物を運び、遠くには未来の横須賀線が見える。そして駅前には、東海道五十三次・保土ケ谷宿の記憶も残っている。技術は大きく進歩している。でも、人間の暮らしまでSF映画になっているわけではない。そんな、少し未来で、少し懐かしい。便利だけれど、人の気配がある。そして、ちゃんと保土ケ谷である。区制200周年のJR保土ケ谷駅前を描きました。100年後も、ほどほどに、がやがや。それが、この作品に込めた未来の保土ケ谷の姿です。
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