調査研究
私たちは、横浜国立大学に遊びに来る子どもに関して調査しました!
FLD Research No.1 横浜国立大学内で遊ぶ子どもたちの調査
調査活動の経緯と目的
本調査は、2014年に当時の横浜国立大学(以下、横国)の学生から依頼を受け実施したものです。この度、調査内容が公開可能になったと判断し、当WEBサイトに内容を一部修正を加えて記載しました。
リサーチ・ルート
横国と和田町駅周辺を「線」として考え、線状のスポットを考察。
順路については以下の通り
相鉄和田町駅
和田町商店街
国道16号
和田愛児園
保土ケ谷中学校
横浜家庭学園
デイサービス
顕彰碑
常盤台小学校
常盤公園
横浜国立大学
ローソン
国道16号
寺子屋
写真1 和田町駅前
国道16号
所感:沿線に遊ぶ様な場所はなく、点在するロードサイドショップはファミリー向けのチェーン店があるが、通常時に子どもが行く様な場所ではないと思われる。
子ども視点:高架下には簡易公園が設置されているものの、狭小空間の為に利用しにくい。ボール遊びは、フェンス越えの可能性があり危険である。
和田愛児園
所感:遊には最適な遊具が多数あり、休日の遊休地有効活用として検討してみてはどうか。園児向けの施設であるため、企画が小さい可能性はあるが、安全性は高いといえる。
子ども視点:洗練された遊具が備わり地域の公園よりグレードが高く楽しい空間であると思われる。フェンスに囲まれており一定の安心感もある。
保土ケ谷中学校
所感:郊外活動の一環として子ども向けの「学童サービス」を、部活として児童教育クラブを設置する事を検討しても良いと思われる。
子ども視点:広いグランドがあり、ボール遊びに最適にも最適な空間である。成人より中学生の方が親近感も高く非常に接しやすいと思う。
横浜家庭学園
所感:特殊な施設であり、オープン性は無いと思われる。但し、社会的レベルにおける民間交流として地域に一部を解放することは重要である。
子ども視点:林に囲まれた特異な空間は冒険心をくすぐられ、遊び場として考えた場合、非常に面白いと思われる。
デイサービス(ボンジュール)
所感:利用者(提供者)との地域交流として子どもとの関わり合いを持たせる。お互いにメリットを補完できたり、治療目的を含め複合的効果を期待できそうである。
子ども視点:ハコモノは入りづらいが、アテンドしてくれる人がいれば問題ない。人生の先輩との関わりは、学校では教えてもらえない範囲を超えた限りにおいて重要である。
常盤台小学校
所感:平日は使用可能だが、休日は地元のクラブ活動(少年野球など)に使用されており、遊び場としての機能は限定的。しかし、コミュニティスペースとして考えた場合、ハマっこ及び学童保育などの利害関係を考慮範囲としなければ、学校内部に当該スペースを設置する事は望ましいと思われる。
子ども視点:学校は集まりやすく様々な活動ができる。休日は、母校の児童に限定されず、他学区或いは私立の仲間との交流ができたら良いと思う。
写真2 和田二丁目公園
和田二丁目公園
所感:常盤台(丘陵地)にある公園。近隣の公園(常盤公園を除く)と比べ新設及び一定面積を有している様に思える。砂場と複合遊具がある簡易な設備がある程度。
子ども視点:民家と護岸に挟まれており、思い切りボール遊びはできない。犬の散歩や幼児の遊び場としての機能しかなくコミュニティスペースとしては少々利用しにくい。
写真3 常磐公園
常盤公園
所感:サッカー場や弓道場がありとスポーツ施設としては良いが、横国キャンパスの延長線上にある様な公園で、子ども向けとして考えた場合、良きスペースとは言えない。
子ども視点:小規模な公園があるものの、思い切った活動をするには使いづらく高低差もその一要因である。
横浜国立大学
所感:広大な敷地と無数の建造物があり、コミュニティスペースを設置するには最適な場所であると思える。他方、子ども達が立ち入った場合に監督不十分に陥る可能があり、オープンレベルは低いのではないだろうか。
子ども視点:遊び場としては最適な空間である。休日は部活ないしサークルの学生が小規模グループで活動しているので、建物内部を除くキャンパス内は利用し易い。
写真4 ローソン(横浜国立大学)
ローソン(横浜国立大学)
所感:横国専用の店舗でありキャンパス外からは一線を敷いている様に思える。店舗内の分離されたイートインスペースは、買物客とスペース利用者とを分離している。子どもによる利用の現状については「トレース・リサーチ」で後述する。
子ども視点:インドアの遊び場、溜まり場として利用できる上、大人数でも集まりやすい。但し、郊外活動できる様なスペースではなく店舗の方針により利用できなくなる可能性もある。
写真5 寺子屋(ワダヨコ)
寺子屋(ワダヨコ)
所感:毎週月曜日の 16時〜18時に「Wit Wada」レンタルスペースを寺子屋としている。コンセプトは、横国生が主体運営者として、地域交流を子どもを対象に図っている。鎌倉にある寺子屋の和田町版といえるのではないだろうか。
子どもを視点:室内型のコミュニティスペースないし子ども向けコワーキングスペースとして利用できる。その上、横国生或いは地域の大人がキャストとしてサービス提供をしてくれる。利用時間的に中学年以上が集まりやすいと思われる。但し、自宅後改めて外出する様にはならず、塾前などに利用している可能性がある。
トレース・リサーチ
将来的に利用者となる様な「潜在的顧客」の行動を追跡調査・分析した。
横国キャンパス内のローソンにて、子ども達(以後、対象者)を発見し、行動を追跡調査した。ローソンからキャンパス外の近所(常盤台)に移動し、民家の前に到着するまでの数時間に及ぶ。
店内に設置されたイートイン・スペースに対象者の男子小学生10人程度が集まる。中学年から高学年のグループが自転車来ていた。テーブルを2つ占有した上でトレーディングカードゲーム、ポータブルゲーム或いはスマホを使うなどして遊んでいた。100円〜130円で販売されている紙パックの飲み物を購入した上で、長時間イートインスペースを利用していると思われる。
対象者は通常4人1グループの集まりの様だが、スマホないしLINEによる容易な連絡手段によって簡単に10人規模のグループを形成すると思われる。一方でこの人数に達すると行動に遊びに制限が生じるのだが、大人数になるために個人宅でに集まることを困難としている。
以上の状況考え、対象者の遊びの中心がインドアとした場合、気軽に利用できる点、集まりやすい点からローソンが拠点となったのか、或いは「リサーチ・ルート」で述べた様に、丘陵地に宅地造成され住宅化された常盤台というロケーションからしてオープンなコミュニティスペース無く結果的に当該ローソンが拠点となったのではないだろうか。
再検討すべき点は、対象者が高学年以降だった場合、学童保育の様なサービスを提供したとしても需要家となる可能性が低いという点である。「行動特性の把握」で述べるが、当該地域における対象者は、我々大人の考える「学童」とは言い難くもはや大人の一員として考えることが妥当である。
従って、既存の寺子屋「ワダヨコ」以外に放課後サービスを創設するとなれば、「学童とは言えない対象者」向けのコミュニティ形成を考える必要があると思われる。
ヒヤリング
3名の協力者に対してヒヤリングを実施した。
協力者1:20代男性(羽沢町出身)
協力者は常盤台とロケーションの近接した羽沢地区出身であるため、ヒヤリングさせて頂くこととした。当時(小学校中高学年・中学生時代)の行動について、4から5人程度のメンバーによる集団行動が原則で自転車を使用していたとのこと。当時はスマホないしLINEといったガジェット&ツールは存在しないため、対象者とは状況が異なるが、やはり公園は利用しにくい状況だった様だ。そして自転車を使うことから行動範囲は広域で、特に片倉町・新横浜に行くことが多かったとのこと。片倉町は買い物、新横浜はゲームセンターという目的がある。和田町方面ないし国道16号線にはあまり行かなかったとのことから、対象者にとってロードサイドは機能していないと思われる。
協力者2:20代女性(緑区出身)
協力者は緑区の出身であり、育った環境が常盤台に近い状態であるため、ヒヤリングさせて頂くこととした。小学生時代、学童に所属はしていなかったものの当該施設に遊びに行くことがあったという。高学年以降は地元から抜け出して電車に乗って遠出する機会が多かったとのこと。また、女子の場合に放課後の過ごし方が家庭環境によって異なることが分かった。
協力者3:10代男性(都筑区在住:学童にてバイト中)
協力者は都筑区在住であり、さらに学童でバイトをしている立場であるため、ヒヤリングさせて頂くこととした。高学年以降は、放課後はクラブ活動や習い事で忙しいが、平日は基本的に帰宅後に学校を利用していたとのこと。また、休日は公園に集まり8人以下の人数で遊ぶことが多い様である。他方の独自調査によると、当該地区の対象者は、クラブ活動、習い事(塾を含める)、地域のスポーツチームなど複数掛け持ちする傾向にあることが分かっている。
以上、3名へのヒヤリングから判明したことは、対象者を需要家とする場合は、ライフスタイルを考慮した上で新しいコミュニティを形成する必要があり、また「保土ホーム」ではどの様なスタイル構築するのかを検討する必要がある。
事例研究
2つの事例を紹介したい。
「荏田東こどもクラブ」
荏田東こどもクラブ(以後、荏田東)は横浜市都筑区の港北ニュータウン内にある学童保育である。現在2人の正指導員とパート、アルバイトの指導員のもと、荏田東第一小、つづきの丘小、荏田南小から、全学年50人の子どもたちが在籍している。荏田東の存在する地域は共働きの多く対象者も多いが、一番の特徴は高学年の在籍率が高いという点である。また、OBOG会や父母会を定期的に実施し、対象者に限定されない幅広いコミュニティを形成している。
学童の運営・父母会(公式サイトより抜粋)
◎学童の実際の運営は基本的に在籍中の父母が行います。父母の中から毎年役員を募り、運営にあたります。
◎地域の自治会やPTAの関係者からなる、運営委員会が年に1度、運営の監査を行っています。
◎運営費は保育料と、横浜市から支給される補助金のみで成り立っています。子供の在籍数によって、補助金の額が変わります。
◎隔月で父母会会議を行い、運営や実際の保育に関すること、イベントの詳細など、報告や話し合いを行います。
「おもしろ科学たんけん工房」
横浜及び藤沢を中心に子ども達(小4から中2)向けに科学の楽しさを体験させるという「おもしろ科学体験塾」である。体験塾回数は750回以上、述べ17,000名以上の参加者実績を持つ。地域協力との協力を行いながら、学校支援及び地域出前塾など複合的な活動も実施している。
参考データ(2014年当時のデータ)
常盤台小学校
700人以上いる児童のうち両親が共働きの世帯、学童保育利用者数、 ハマっこ(市の学童制度)利用者数を横浜市統計データ及び総務省の統計データを用いて、それぞれ算出。
共働き世帯数について
総務省統計データより
全国 1059万世帯
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/Xlsdl.do?sinfid=000018854326
横浜(試算)415,992世帯
横浜市民意識調査より試算
http://www.city.yokohama.lg.jp/seisaku/seisaku/chousa/ishiki/24/25ishik-gaiyo.pdf
学童保育利用者数
全国学童保育連絡協議会 「学童保育の実施状況調査結果がまとまる」より
http://m-jidouclub.com/20120803zenkokujishikekka.pdf
全国 846,919人 全世帯の8%
神奈川 30,340人
横浜 8,652人(試算 206施設×神奈川の一施設当たり入所数42人) 全世帯の2%
「横浜市子ども・子育て支援事業計画の策定に向けた利用ニーズ把握のための調査」より
http://www.city.yokohama.lg.jp/kodomo/shien-new/data/needs/needs-all.pdf
放課後の過ごし方
放課後キッズクラブ 14.5%
はまっ子ふれあいスクール 34.9%
放課後児童クラブ 6.4%
企業等が運営する学童保育利用者1.9%
全国学童保育連絡協議会発資料からの試算2%が「横浜市子ども・子育て〜」の資料のうち、企業等が運営する学童保育利用者1.9%に相当すると考えれば、ここまでの試算が妥当な値と言える。
(放課後児童クラブを含めたパーセンテージになると大幅にずれる。どこかで試算のロジックが間違っている可能性あり)
常盤台小学校 学童保育利用者数試算
小学校在籍人数を700人として試算
放課後キッズクラブ 101人
はまっ子ふれあいスクール 244人
放課後児童クラブ 45人
企業等が運営する学童保育利用者 14人