カンボジア北東部のラオ村落における対人関係をめぐるやりすごし
山崎寿美子さん(愛国学園大学准教授)
□日時 2017年12月18日(月)18:15~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
本発表では、カンボジア北東部ストゥントラエン州のラオ村落における対人関係に着目し、日常的に起こるもめごとに、人びとがどのように対応するのかについて、事例をあげて検討する。東南アジアの社会論で従来から盛んに議論がなされてきたように、調査地においても、対人関係は基本的に、親密な二者関係の網目で成り立っている。そうした親密な間柄は、家を訪問しあったり食物や労働を交換するといった、直接的なやりとりによって築かれる。しかし、親密な間柄であっても、日常においては、些細なものも含めてしばしばもめごとが起こる。その際、人びとは暴力や口論など、相手と対面する方法を極力回避し、交換を停止して、問題の核心に触れないようにして過ごす。親密な間柄が直接的な行為によって築かれるのとは対照的に、もめごとにあたっては、人びとはひたすら間接的になる傾向がみられる。本発表では、こうした状況で人びとが言及する、「だんまり」で「ただただいるだけ」という、いわばやりすごしの姿勢に光をあて、それがラオの対人関係においてどのような意味をもっているのかについて考えたい。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。
モノと人の移動にみる帝国日本-記憶・近代・境域
□日時 2017年11月11日(土)13:00~18:10
□場所 東洋大学白山キャンパス 第3会議室(6号館1階)
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□趣旨
日本が「帝国」であった時代、日本と植民地となった地域の間で、また植民地と植民地の間で、帝国の支配がなされているがゆえの、それまでにないモノと人の移動がなされた。こうした移動に伴い、いかなる他者像が生み出され、それは現在の我々の他者へのイメージといかにつながっているか。この課題に対して、特に、記憶の構築、近代への評価、さらに境域における特性に注目して、論議を行う。
□プログラム
13:00~13:10 「趣旨説明」 植野弘子(東洋大学)
13:10~13:55 「近代建築物にみる沖縄の「近代化」認識に関する一試論」
報 告 者 :上水流久彦(県立広島大学)
コメンテーター:泉水英計(神奈川大学)
13:55~14:40 「交錯する記憶――朝鮮半島をめぐる植民という日常」
報 告 者 :鈴木文子(佛教大学)
コメンテーター:三尾裕子(慶應義塾大学)
14:50~15:35 「沖縄県の台湾系住民をめぐる記憶の連続・断裂・散在
――宮古地方と八重山地方を比較して」
報 告 者 :松田良孝(フリー・ジャーナリスト)
コメンテーター:笠原政治(横浜国立大学)
15:35~16:20 「国際交流事業における在日コリアンの参与
――対馬と下関の朝鮮通信使再現行列を中心に」
報 告 者 :中村八重(韓国外国語大学)
コメンテーター:井出弘毅(東洋大学)
16:30~17:15 「パイン産業にみる旧日本帝国圏を越える移動
――ハワイ・台湾・沖縄を中心に」
報 告 者 :八尾祥平(神奈川大学)
コメンテーター:箕曲在弘(東洋大学)
17:20~18:10 総合討論
生活の「延長線上にある」チーズ経営――ペルー、カハマルカ県の山村における経済活動を事例に
古川勇気さん(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)
□日時 2017年10月16日(月)18:15~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
従来の人類学的研究では、市場交換と「社会に埋め込まれた」経済は重なり合うものとされてきた。本発表はその指摘を援用するかたちで、互酬交換と市場での利益追求との相互関係を利益のゆくえの視点から明らかにする。利益のゆくえの視点とは、農村において利益追求をおこなう場合、既存の社会関係による互酬交換や再分配に阻まれることなく、利益が追求されるか、否かという分析視点である。 南米ペルー、カハマルカ県の山村においてチーズ生産者たちは周辺農民からの生乳回収を基盤として経営を維持している。彼らと農民との関係は日常の挨拶やモノの交換にはじまり、金銭の貸し借りに及ぶまでの様々な互酬交換によって成り立っている。彼らは、時には貸し越しになる互酬交換や惜しまなく労働力を提供することで山村の祭りを主催する。彼らは単純に損得だけを計算した経営をおこなっているのでなく、常に周辺農民に気を配りながら、時には気前の良さを示して経営をおこなっている。その寛大さが潤滑油となることで周辺の妬みに阻まれることなく、市場での利益追求が実現される。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。
フィリピン系ニューカマー第二世代のエスニックアイデンティティと学業達成
三浦綾希子さん(中京大学国際教養学部准教授)
□日時 2017年7月17日(月)18:15~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
ニューカマーと呼ばれる新来外国人が増加してから30年以上が経過した現在,ニューカマー第二世代は学校経験が注目される学齢期から青年期,壮年期へと移行しつつある。海外の移民研究では,親の人的資本や家族構造,ホスト社会の編入様式によって第二世代のエスニックアイデンティティや学業達成は分岐していくことが指摘されているが,日本のニューカマーの場合,同様の分岐は見られるのだろうか。また見られるのだとすれば,そこにはどのような要因が関わっているのだろうか。本報告では,ニューカマー第二世代の若者たちのエスニックアイデンティティと学業達成についてフィリピン系を事例に検討したい。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。
シンガポールのヘリテージ・ツーリズムとエスニック・アイデンティティ――プラナカン文化の表象と消費をめぐって
平島(奥村)みささん(東洋大学社会学部教授)
□日時 2017年6月19日(月)18:15~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
シンガポールでは近年、文化遺産政策と並行してヘリテージ・ツーリズムが発展している。本報告ではその中でもプラナカン文化について取り上げる。プラナカン文化は19世紀から20世紀初頭に頂点を極め、第二次大戦後急速に衰退したが、再び脚光を浴びている。プラナカン文化復興・継承活動が盛んになる一方、コマーシャリズムの波に消費され、文化的正統性を損なう懸念も出てきた。また、このような「第4の文化」が内外に認知されることで、シンガポール多民族社会の在り方にも変化が生じている。本報告を通して、ポスト・リー・クアンユー時代に入ったシンガポールの新しい文化状況についても分析を試みたい。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。
ボルネオ島焼畑民の生活世界から見たアブラヤシ農園開発
寺内大左さん(東洋大学社会学部助教)
□日時 2017年5月15日(月)18:15~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
カリマンタン(ボルネオ島インドネシア領)には豊かな熱帯林が現存し、そこでは焼畑先住民が熱帯林を利用しながら生活を営んできた。しかし、2000年以降、熱帯林を皆伐するアブラヤシ農園開発が、企業によって急速に進められている。これまでの研究はアブラヤシ農園開発の経済性や環境・社会へのインパクトを検討し、その是非を議論してきた。しかし、アブラヤシ農園開発に直面する焼畑先住民の開発に対する認識や対応、そのような認識と対応の背後にある生活基盤を明らかにする研究はあまり行われてこなかった。そこで本発表では以上の課題にこたえる形で、焼畑先住民の生活世界からアブラヤシ農園開発の意味を問い直すことを試みる。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。
オーラルからモーラルへ――ニジェール西部の人と土地をめぐる社会関係
佐久間寛さん(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教)
□日時 2017年4月17日(月)18:15~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
神話や民話、歌や呪文、あるいは儀礼の説明や出来事についての証言。主題や形式がなんであれ、フィールドの当事者から得られる語りとは、人類学者にとり、他の何物にも代えがたい価値をもつ。とはいえそうしたオーラルな次元に気をとられるあまり、見落とされる(聞き落とされる?)傾向にあった事柄はないだろうか。本発表ではニジェール西部農村地帯における人と土地の社会関係を主題に、明示的な語りに潜む暗黙の葛藤や、そうした葛藤を個の内にもたらす集合的な規範や倫理、つまりモーラルな次元へのアプローチを試みる。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。