ベトナム・チル集団の葬礼と交換
本多 守 さん(東洋大学社会学研究科博士後期課程)
□ 日時 2006年12月18日(月) 18:10~19:40
□ 場所 東洋大学白山校舎 5304教室
□ 要旨 発表者はベトナムに居住するモンクメール系のチルと呼ばれる、すでにキリスト教に改宗してから50余年経過した民族集団の葬礼を紹介し、その変容について報告する。まず変容とその要因を明らかにし、現在も変わらぬものを明示する。そして葬礼で行われる財の交換が、婚礼とは全くことなる性質のものであることを証し、さらに死亡から新たな婚姻『母方オジの足に従う』が生まれる可能性があることを示す。また、変わらないものと指摘した儀礼の機会が、同時に重要な財産分与の話し合いの機会であることを明らかにする。
Transnational family(跨境家族)小考
――海外韓人の事例などから
松本 誠一 さん(東洋大学社会学部)
□ 日時 2006年11月20日(月) 18:10~19:40
□ 場所 東洋大学白山校舎 5304教室
□ 要旨 韓国の李光奎博士は日本ではとくに家族・親族研究により知られているが、各国の韓人移民に関する調査報告書を多く持つ。ソウル大を定年退職された後は、海外同胞財団理事長などの要職に就かれ、一貫して韓人支援活動に励んでおられる。李博士によれば、海外韓人人口は中国人・ユダヤ人・インド人・イタリア人に次いで5番目に多いという。2000年の著書ではその総人口として550万人を数え、別の研究者は最近では700万人に及ぶと唱えている。韓国から出移民は衰えを見せない。発表者はカナダをはじめ、台湾・東南アジア5カ国・ドイツの韓人社会を見てきて、演題のような事例に目を惹かれるようになった。本発表では欧亜の先行研究にも触れつつ、Diasporaとは異なる移民のありようを考えたい。
文化は誰のものか
――中国湖南省における「女書」の伝承をめぐって
丁 育華 さん(徳島大学大学院 先端技術科学教育部博士課程)
□ 日時 2006年10月16日(月) 18:10~19:40
□ 場所 東洋大学白山校舎 5304教室
□ 要旨 中国湖南省の西南部、広西壮族自治区に近い江永県の一部に、女性だけが読み書きできる文字「女書」が伝承されてきた。この文字はこの地の女性たちが創り出し、女性同士のコミュニケーションの手段として使われてきたものである。現在、生活文化としての女書は廃絶したが、研究者の指摘によりその文化的価値が再認識されるようになり、地方政府の地域開発計画などともあいまって、地域における女書の新しい形での「伝承」が復活しようとしている。
本研究は、現代の「開発」という文脈の中、女書が開発に関わるさまざまな関与主体の相互作用の中で変容していく過程を解明しようとしている。さらに、伝承の主体である地域住民が開発計画の「かやの外」に置かれている文化開発現象を通し、「文化は誰のものか」について考察する。
マレーシアにおける海サマ人のイスラーム化
――東南アジア・イスラームの動態的理解の試みとして
長津 一史 さん(東洋大学社会学部)
□ 日時 2006年7月3日(月) 18:10~19:40
□ 場所 東洋大学白山校舎 5304教室
□ 要旨 東南アジアには、インドネシア、マレーシアを中心におよそ2億人のムスリム(イスラーム教徒)が住む。その数は世界のムスリム人口の2割弱に相当する。東南アジアのムスリム社会は、1970年代以降、世界的なイスラーム復興潮流の波及とそれにたいする国家の干渉が交錯する過程で著しい変容をとげた。これまで東南アジアのイスラームにかんする社会学的研究は、組織化されたイスラーム復興運動の活動内容や、運動を担うイスラーム知識人の政治的思想、イデオロギーなどを明らかにしてきた。しかしながら、イスラーム復興運動とは直接的なかかわりをもたない「ふつうのムスリム」の社会変容、特に1970年代以降のイスラームをめぐるマクロな歴史的潮流におけるその動態については、いまだ十分な研究蓄積があるとはいえない。
本報告ではこうした研究動向をふまえつつ、マレーシア・サバ州南東岸に居住する海サマ(バジャウ)人を事例として、マレーシアにおける「ふつうのムスリム」と国家とのイスラームをめぐる相互作用のダイナミズムについて考えてみたい。具体的には、1950年代半ばに始まる海サマ人のイスラーム化の歴史過程を跡づけ、その過程を国家、地域双方のレベルのイスラームをめぐる社会的文脈に定位して相関的に理解することを試みる。本報告でいうイスラーム化とは、かれらがイスラームを受容、実践するようになる過程にくわえ、かれらが地域社会でムスリムとしての認知を獲得していく過程を含む。
対象地域であるサバ州南東岸は、フィリピンのスルー諸島と国境を接している。海サマ人は国境の両側、つまりマレーシアとフィリピンの双方に居住している。海サマ人は、いずれの国家領域においてもイスラームを受容しているが、フィリピン側ではいまも他の多数派ムスリムから「正統ならざる」ムスリムとみなされ続けている。しかし、マレーシア側の海サマ人は、地域社会で広くムスリムと認知されている。なぜ、このような差異が生じたのか。マレーシアの海サマ人はいかにイスラーム化し、ムスリムとしての認知を獲得したのか。報告では、マレーシア国家によるイスラームの制度化――イスラームにかんする法制や教育システムの整備――と、それにともなって進行したイスラームをめぐるローカルな社会秩序の再編というマクロな文脈に着目して、これらの問いを明らかにしていく。
ミクロネシア(旧南洋群島)における「農場移民」の歴史人類学的研究
――八丈島の事例を中心として
對馬 秀子 さん(東洋大学 社会学研究科研究生)
□ 日時 2006年5月22日(月) 18:10~19:40
□ 場所 東洋大学白山校舎 5304教室
□ 要旨 日本は、1914年10月、それまでドイツ領であったミクロネシアを無血占領して以降、敗戦に至るまでの約30年間を植民地として支配下におき、多くの移民をこの地に送り出した。特に北マリアナ諸島は、南洋興発が製糖業に成功し、沖縄をはじめとして多くの農場移民を受け入れた。八丈島からは、1917年にサイパンに渡ったのが最初とされている。報告者は、これまでに八丈島から南洋への移民が、小笠原諸島や大東島の開拓との関係や、その移動が世代を経て行われてきたことを明らかにしてきた。
本報告は、移民当時子どもだった世代の聞き取りから、移民における親族ネットワークについて検討したい。
チンロン練習場にみられる暗黙の掟
――人間関係が作り上げている人々の配置図/FONT>
松尾 綾 さん(東洋大学社会学部卒業生)
□ 日時 2006年4月24日(月) 18:10~19:40
□ 場所 東洋大学白山校舎 5304教室
□ 要旨 チンロンとは,籐で作られたボールを用い円陣を組んで蹴り続ける,ミャンマーの伝統的なスポーツである。本報告では,発表者の卒業論文『ミャンマーにおける伝統スポーツの継承者たち――ヤンゴン・アシェジョーゴン地区におけるチンロン練習場を事例として』から得たデータと,論文内では触れなかった事例を基に,練習場内外にみられる人々の物理的位置関係を検討し。暗黙の掟とでも呼べるような人々の配置図を明らかにする。また,この配置図を提示するとともに,そうした配置図を生み出している背景についても考察する。