日本で暮らし、日本を生きる中国朝鮮族―移動を繋ぐエスニック・コミュニティの諸相―
権香淑さん(恵泉女学園大学非常勤講師)
□日時 12月16日(月)18時10分~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
中国朝鮮族(以下、朝鮮族)は、中華人民共和国が認定している55のうちの一少数民族である。朝鮮半島からの移住民であ り、国境の外に同じ民族が居住する跨境民族でもある朝鮮族は、改革開放以降、とりわけ1990年代以降、かつての居住地域であった中国東北部を離れ中国内 の沿海都市をはじめ、ロシア、韓国、日本、アメリカなどへと移動し続けている。この朝鮮族の移動性は、少数民族のなかでも際立った特徴と して位置づけられている。本報告では、このような再移動 (twice migration)を経験する朝鮮族の日本への移動を取り上げ、その実態を把握するとともに、エスニック・コミュニティの活動事例について紹介する。併 せて、それらの諸相に含意される今日的意義についても言及する。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。
使い捨て文化を考える
―中古品と非正規品の流通を事例に
小川さやかさん(立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授)
□日時 11月18日(月)18時10分~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
アフリカ諸国へ輸出される。古着は現地の衣類産業に壊滅的な打撃を与えながら、人びとの衣料品消費を満たすうえで不可欠な商品として浸透した。今日では、中国や東南アジアからの廉価でおしゃれな非正規品(コピー商品)が大量に輸入されるようになり、アフリカ諸国の衣料品市場を席捲しつつある。こうした古着や非正規品の世界は、私たちの消費文化と密接に関わりながら生み出され、それを維持・変容させてきた。本発表では、タンザニアにおいて古着と非正規品が生み出している「もうひとつの使い捨て文化」を題材に、私たちの消費文化について考えてみたい。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。
現代のバリ島観光における「環境」と「文化」の接続
―ウィスヌ財団の村落エコ・ツーリズム・プロジェクトを手がかりに
岩原紘伊さん(東京大学大学院博士課程)
□日時 10月21日(月)18時10分~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
1998年にスハルト体制が崩壊して以来、バリ島観光を取り巻く状況は政策的にも社会的にも変化しつつあり、持続可能な観光の実現が頻繁に議論の俎上にあがるようになっている。とりわけ2002年と2005年の爆破テロ事件後の観光産業の落ち込みは、バリの人びとに観光産業の脆弱性を強く印象付けることとなり、観光とバリ社会の関係性の再考を促すこととなった。今日、特に観光に関心を寄せる知識人やNGOは、グローバルなレベルで推進が目指されている「持続可能な観光(sustainable tourism)」、「責任ある観光(responsible tourism)」といった概念を積極的に取り入れ、新しい観光概念を提起することを目指して活動している。そこで、本発表では、ウィスヌ財団の村落エコ・ツーリズム・プロジェクトを手がかりに、現代バリ観光をめぐる動向の中で、「環境」と「文化」がどのように結びついているのかを明らかにする。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。
ラオスの歌掛け「カップ・サムヌア」の今
梶丸岳さん(日本学術振興会特別研究員)
□日時 7月22日(月)18時10分~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
ラオスでは主要民族であるラオ族によってカップラムと総称される掛け合いによる民謡が盛んに行われてきた。だがこれまでラオス南部や東北タイのイサーン地方におけるカップラムのモノグラフが数本あるのみで、ラオス北部の歌掛けについてはほぼまったく報告がなかった。本発表は昨年度から行っている調査の中間報告として、ラオス北部ホアパン県で歌われる歌掛け「カップ・サムヌア」が歌われる社会的環境について、特に歌掛けの場と歌い手間のネットワークに注目しながら提示する。また掛け合いの内容についても現地で撮影した映像を紹介しながら概略的に示す。この作業を通じてラオスにおける歌掛けがどういうものなのか、その歴史的変遷を含めて現在分かっている範囲で明らかにしていきたい。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。
南部アフリカ農民の生計変化――紛争国周辺農村を生きるアンゴラ移住民の60年から
村尾るみこさん(東京外国語大学研究員)
□日時 6月24日(月)18時10分~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
アンゴラ移住民は、南部アフリカの紛争国アンゴラから隣国ザンビアの農村へ紛争を理由に移住した人びとである。彼らは、ザンビアへ移住した後、今日に至るまで、ナショナル・グローバルレベルでの政治経済変化のなかで土地利用などに関する制約を受けている。本発表は、アンゴラ移住民の生計戦略にみられる創造性に注目し、政治経済変動下のアフリカ農民にみられる諸特徴を検討するものである。特に、1)農耕技術の改変、2)現金稼得活動の創出に注目し、移住先社会の厳しい環境で「粗放的」な農耕を基盤としながらニッチに入り込む戦略について総合的に考察する。
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中間集団としての生産者協同組合の社会的布置 ――ラオスにおけるコーヒー仲買人と農民との関係を事例に
箕曲在弘さん(東洋大学社会学部)
□日時 5月27日(月)18時10分~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
□要旨
一般に協同組合とは、参加による自己統治を通じて、住民を市場経済に適応させて貧困を解消し、民主主義を実現する市民社会組織の一つだといわれている。一方で、この協同組合は、人びとの自発的な行動を促す場となるだけでなく、統治の場ともなりうる。古くはエミール・デュルケームが、社会形成における道徳や社会規範、善や義務の観念を涵養する場として生産協同組合を含む職業集団をみなしていた。したがって、協同組合は、私的領域である市場や公的領域である国家の力を抑止する自立した領域である一方、それらのモラルを涵養する機能をも果たす、そのような領域を指す。
とはいえ、このような協同組合の社会的な布置は、理念的なものであり、社会環境が異なれば、さまざまな形態の協同組合が存立することになる。そこで本報告では、ラオス人民民主共和国南部のボラベン高原における、コーヒー栽培に従事する農民を対象としたフェアトレード生産者協同組合を事例に、協同組合と村落社会との関係性について考察する。とくに、村落社会において力をもつコーヒーの仲買人と協同組合の運営メンバーとのやりとりに注目し、協同組合設立から、今日に至るまでの組合メンバーと仲買人との結びつきを明らかにする。この事例から村落社会におけるコーヒーの交易のあり方と、協同組合が目指す交易のあり方が相互に浸透しあうことによって、協同組合の社会的な布置が国家や市場との関係においていかにして形成されているのかを考察する。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。