タイの民間医療をめぐる法的状況と治療師の実践
古谷伸子さん(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所フェロー)
□日時 2017年1月16日(月)18:15~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
1980年代以降、タイでは知識人やNGOを中心にマッサージやその他の伝統医療が再評価されるようになり、1990年代に入ると保健省内に設置されたタイ医療研究所(後にタイ医療代替医療開発局)によって、伝統医療の制度化や普及活動が進められるようになった。そうした中央での動きと並行して、地方の民間治療師たちもまた、その実践を大きく変化させてきた。限定的ではあるが彼らの一部は公的保健医療の一端に組み込まれ、また各地で形成された治療師グループでの活動をとおして新たな知識と経験、クライアントを得ることとなり、活躍の場を拡大してきた。本報告では、そうした過程において、医療行為や薬の売買をめぐる法的制約も多いなか、治療師たちがそれらといかに折り合いをつけ、自らの正当性を確保しつつクライアントのニーズに応えてきたのかを明らかにする。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。
「あるくみるきく」―宮本常一の観察と思考―
須藤 護さん(龍谷大学名誉教授)
□日時 2016年12月19日(月)18時15分~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
旅を続ける中で、車窓から観察した山や海、田んぼや畑、集落や民家などの景観、また地域の人びとから聞き書きしたおびただしい量の資料を土台にして一つの論を組み立てていく。この宮本常一の観察と思考の過程を検証していくことで、日本人のものの考え方や暮らし方がいかにして形成されてきたか、たどってみたいと思う。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。
インドネシアにおける消費様式の変化と地方中間層の動態
□日時 2016年11月19日(土)13:00~17:30
□場所 東洋大学白山キャンパス 8502教室(8号館5階)
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□趣旨
本フォーラムは、インドネシアの中間層というテーマを、ジャカルタを筆頭とした大都市ではなく、地方都市や農村から検討する試みである。中間層をめぐる社会経済的な背景がつねに変化しているようすを描写し、従来おもにジャカルタ首都圏の事例をもって生活様式として観察されてきた中間層の像や概念がインドネシアの他地域にも当てはまるのかどうかを検証する。その際、(1) 消費様式が変化する様相や速度(中央 / 都市が経験中の急速な変化のほか、地方 / 農村での経済成長の遅れ、中央 / 都市とのギャップ、旧来型の消費様式や生活様式への拘泥など)と (2) 地方(⇔中央 / 首都ジャカルタ)、ジャワ島外(⇔ジャワ島)、村落部(⇔都市部)における消費様式と中間層という2点に留意して、現代インドネシアの社会経済の動態に迫る。
□プログラム
13:00-13:10 趣旨説明(間瀬朋子)
13:10-13:50 発表 (1) 間瀬朋子(東洋大学)
「消費現場の変容: ジョグジャカルタ特別州スレマン県の学生街における大学生の消費 様式と“インフォーマル・セクター”の商売様式から」
13:50-14:30 発表 (2) 合地幸子(東京外国語大学博士後期課程)
「ジョグジャカルタ特別州の中間層にみる健康と消費: 保健医療サービスの外側で」
14:30-14:45 休憩
14:45-15:25 発表 (3) 森田良成(大阪大学大学院人間科学研究科・特任研究員)
「携帯電話の普及と利用状況にみるインドネシアの地方農村部の現在: 東ヌサ・トゥンガラ州西ティモールを事例に」
15:25-16:05 発表 (4) 金子正徳(東洋大学アジア文化研究所客員研究員)
「インドネシア共和国ランプン州の生活用品調査に基づくライフス タイルの変化」
16:05-16:15 休憩
16:15-16:45 コメント 新井健一郎(亜細亜大学)
16:45-17:30 ディスカッション
ベトナム―カンボジア国境をめぐるローカルな政治
―冷戦終結後メコンデルタの人々の越境移動―
下條 尚志さん(京都大学東南アジア研究所 機関研究員)
□日時 2016年10月24日(月)18時15分~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
1970年代後半にベトナムがカンボジアに侵攻してからの10年間、この2つの国家が国際社会からの孤立と戦争、社会主義政策に起因する混乱を経験し、数多くの国外脱出者を生み出したことは周知のとおりである。一方で、この侵攻を機に、多数の人々がベトナム南部メコンデルタからカンボジアへ非合法的な手段で越境し始めたことはあまり知られていない。非合法越境者の数は、とりわけ冷戦終結後の1990年代前半、メコンデルタ農村の貧困とUNTAC下プノンペンの活況を背景に急増した。これら越境者のなかには、1990年代後半以降にベトナムが国際社会への復帰と経済成長を着実に進めてゆくなかで、度々ベトナム側に帰郷する者が現れ始めている。この傾向を受け、ベトナム政府は近年ようやく越境者の移動 制限や国籍特定など、国境統治に本腰を入れつつある。しかしながら、越境者の管理強化によって、これまで政治経済的混乱のなかで棚上げにされてきたメコンデルタの民族や宗教に関する諸問題が、再び顕在化している。本発表では、人々の越境移動という観点から、冷戦終結以降のメコンデルタにおける地域社会と国家の関係が、いかに変遷してきたのかについて考察する。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。
「国境を跨ぐ生活スタイル」とは――国際人口移動統計からのアプローチ:東洋大学井上円了記念研究助成大型研究調査対象国を中心に
Ling Sze Nancy Leungさん(東洋大学アジア文化研究所大型研究・研究支援員)
□日時 2016年7月11日(月)18時15分~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
井上記念研究助成大型研究は日本、韓国、中国、タイ、ラオス、インドネシア、ネパール、インド、シンガポール9ヵ国を中心に「国境を跨ぐ家族生活」について研究している。東アジア、東南アジア及び南アジアにおける国際人口移動は、1980年代以降、活発化している。国際人口移動は労働力移動のみならず、家族再会、結婚、教育、定住あるいは永住型の移動もある。移動の形態によって、国境を跨ぐ多様な家族形態を形成すると考えられる。国境を跨ぐ家族の実態を分析する以前に、調査対象となる9ヵ国における国際人口移動の状況を明らかにする必要がある。したがって、本報告では統計データを通じてこの9ヵ国における国際人口移動の現状を把握することを目的とする。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。
林産物交易が編み上げたボルネオの後背地社会:形成過程からの考察
佐久間 香子さん(京都大学東南アジア研究所)
□日時 2016年6月20日(月)18時15分~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
ボルネオ島は東南アジア島嶼域の中でもマレーシア、インドネシア、ブルネイの3か国が領有する唯一の島であり、地理的・文化的に東南アジア島嶼地域の中心に位置している。歴史的観点からみれば、海洋交易における一大資源産出地であると同時に航路上の重要な中継地点として、近隣の島々、中国などのユーラシア大陸、そして西欧列強から多様な人びとが往来してきた重要地点でもあった。海を行き交った海洋貿易に連動して栄枯盛衰を経験したのは港市だけではない。ボルネオ島の一次産品を産出してきた後背地において、交易はいかなる影響をもたらしてきたのかについては、人類学からも歴史学からもあまり関心が払われてこなかった。そこで本報告では、ボルネオの林産物の河川交易が後背地社会に及ぼした影響に着目する。林産物の中でも、本報告ではツバメの巣を取り上げ、その採集と交易の拠点村落が流域レベルでの政治的経済的リーダーとなっていく過程を明らかにする。加えて、近年のツバメの巣の流通・消費について若干の考察を紹介する。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。
バリ島の火葬儀礼の変容――新たな選択肢としての火葬場を事例として
小池 まり子さん(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所ジュニアフェロー、東京外国語大学非常勤講師、オープンアカデミー講師)
□日時 2016年5月16日(月)18時15分~
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室
(地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html
□要旨
本報告で取り上げるインドネシア・バリのヒンドゥー教徒の火葬儀礼は、先行研究において、ヒンドゥー教徒が属する慣習村の火葬/埋葬のための共有地で実施され、またその実施には膨大な経済的負担と労力が必要とされると言われてきた。 しかし、ヒンドゥー教徒のパセッという親族集団の組織が、経済的負担が少ない費用で利用できる火葬場を2008年末から運営し始めたことにより、従来の火葬儀礼のあり方に新たな変化が見られる。 本報告では、ヒンドゥー教徒の親族組織が運営する火葬場における調査結果から、ヒンドゥー教徒が慣習村と火葬場のそれぞれの場における火葬儀礼のあり方についてどのように考えているかを明らかにし、この火葬場が火葬儀礼を行う場として新たな選択肢の一つと なりつつあることを示す。
※終了後、白山近隣で懇親会を予定しております。