labina文法解説
ここでは labina の文法を解説しています。このページの内容は2023年10月18日時点のものであり、今後予告なく変更される場合があります。
labina とは?
labina は、ふぃるきしゃが2017~2018年頃から制作を続けている個人言語です。制作の過程で何度も大きな変更が行われており、現在はもはや当初の言語の原型を留めていません。しかし、作者の日常生活での使用を想定としており、架空の文化設定を持っていないという点は一貫しています。現在の labina には「規則性」「簡潔性」「論理性」を向上させるという方針があります。できるだけ少ない規則であらゆる表現を行い、なおかつ語彙や文の意味の曖昧性を排除することが目標です。もちろん、類似したコンセプトを持つ人工言語は他にも存在すると思われますが、labina はそのようなコンセプトを突き詰めていった際の、作者なりの最適解と言うことができます。
音素と表記
labina は5つの母音と18の子音、合計で23の音素を持ちます。表記には基本的にラテンアルファベットを使用し、一文字に対し一つの音素が対応します。
a /a/ i /i/ o /o/ e /e/ u /u/
p /p/ b /b/ t /t/ d /d/ k /k/ g /g/
f /f/ v /v/ s /s/ z /z/ c /ʃ/ j /ʒ/ h /h/
m /m/ n /n/ l /l/ r /r/ q /w~j/
q は、直後の母音が非円唇母音(a, i, e)である場合は [w]、円唇母音(o, u)である場合は [j] として読まれます。[w] と [j] は相補分布の関係にあるため、同一の音素と見なされます。
qava [wava]
qova [jova]
品詞
ニョンペルミュの単語は以下の品詞に分類されます。
述詞:語彙的な意味を表します
一般述詞:一般的なものの名前や状態、動作を表します
数述詞:基数や序数を表します
固有述詞:人名や地名、言語名、社名などを表します
代述詞:話し手や聞き手、他の述詞や文を指示します
人称代述詞:話し手や聞き手などを指示します
文代述詞:前後の文を指示します
補文代述詞:2つの代述詞で節を挟むことで補文を作ります
関係代述詞:2つの代述詞で節を挟み、節内の単語を代述詞に置きかえることで関係節を作ります
前置詞:述詞の項や付加語を表します
コピュラ:2つの述詞句を繋ぎ、文を作ります
接続詞:句を並列します
述詞と前置詞
述詞は「猫」「白い」「歩く」といった語彙的な意味を表します。labina には名詞・動詞・形容詞・副詞といった内容語の形態的な区別がなく、全て述詞に集約されています。述詞は子音で終わる述詞語幹と、母音または半母音から成る語尾で構成されています。
述詞の項と焦点化
述詞語幹はその意味を充足させるために1~5個の項をとります。例えば以下の通りです。訳文中の x1 や x2 は、その項に割り振られた番号を表します。
fum-「x1 は猫」
nel-「x1 は白い」
gar-「x1 は x2 を食べる」
mad-「x1 は x2 を x3 に与える」
sel-「x1 は x2 から x3 を経て x4 に行く」
述詞語幹に語尾が付加されて実際に文中に現れるとき、その述詞はいずれかの項が「焦点化」された状態になります。焦点化とは、述詞語幹の意味を「特定の項に相当するもの」という意味に変えることです。
無標では第1項(x1)が焦点化され、「x1 に相当するもの」という意味になります。例えば、fum- にそのまま語尾がついて fuma になると、「『x1 は猫』の x1 に相当するもの」、すなわち「猫」という意味になります。また、gar- に語尾がついて gara になると、「『x1 は x2 を食べる』の x1 に相当するもの」、すなわち「x2 を食べる人」という意味になります。
このように、述詞は文中では必ず「~であるもの・人」または「~するもの・人」という意味で用いられます。「もの」と「人」のどちらで訳すかは、述詞の意味に合わせて決定します。
第1項以外の項を焦点化する場合は、対応する接尾辞を述詞語幹に付加します。
-in-:第2項(x2)焦点化
gar- → garina「『x1 は x2 を食べる』の x2 に相当するもの」すなわち「x1 が食べるもの・x1 の食べ物」
-on-:第3項(x3)焦点化
mad- → madona「『x1 は x2 を x3 に与える』の x3 に相当するもの」すなわち「x1 が x2 を与える相手」
-en-:第4項(x4)焦点化
sel- → selena「『x1 は x2 から x3 を経て x4 に行く』の x4 に相当するもの」すなわち「x1 が x2 から x3 を経て 行く行き先」
-un-:第5項(x5)焦点化
状態・行為の焦点化
接尾辞 -ag- を述詞語幹に付加すると、その状態・行為自体が焦点化され、「~であること」「~すること」という意味になります。このとき、全ての項が出現できるようになります。
fum- → fimaga「x1 が猫であること」
gar- → garaga「x1 が x2 を食べること」
sel- → selaga「x1 が x2 から x3 を経て x4 に行くこと」
述詞の項と前置詞
前置詞は述詞句を目的語にとって前置詞句を形成します。述詞に後置されてその述詞の項を表したり、付加詞として意味を付け加えたりします。前置詞句は、文脈から明らかである場合や明示したくない場合などは、省略しても構いません。また、同じ述詞を修飾する前置詞句を並べる順番は自由です。
sa:述詞の第1項(x1)
garina sa fumi「猫の食べ物」
si:述詞の第2項(x2)
gara si puri「魚を食べる人」
so:述詞の第3項(x3)
mada si dicini so leni「本を彼に与える人」
se:述詞の第4項(x4)
sela se kanozi「駅に行く人」
su:述詞の第5項(x5)
fa:述詞の所有者や所属先といった何らかの関係
madina fa sani「私の本(私が所有している本)」
sidoza fa leni「彼の学校(彼が所属している学校、または彼が運営している学校)」
fi:時間
fo:場所
gara fo mabi「家で食べる人」
fe:状態
fu:道具
前置詞の省略
述詞の第1項が焦点化されていて、その直後に si による前置詞句が置かれる場合、その si は省略できます。
gara si puri → gara puri「魚を食べる人」
述詞の第1項以外が焦点化されていて、その直後に sa による前置詞句が置かれる場合、その sa は省略できます。
garina sa fumi → garina fumi「猫の食べ物」
madina sa sani so leni → madina sani so leni「私が彼に与えるもの」
このページでは分かりやすさを優先し、前置詞の省略は原則として行わないこととします。
階層語尾
述詞の語尾は階層語尾といい、述詞と前置詞句の修飾関係を明示する働きを持ちます。前置詞の目的語となっている述詞は、その前置詞の被修飾語の述詞よりも「階層が1つ下がっている」と見なされます。このとき、階層語尾の母音が1つ交替します。母音は -a から始まり、-i、-o、-e、-u の順に交替します。-u 以降は半母音の q を挟み、-aqa、-aqi、-aqo、-aqe、-aqu、-iqa、-iqi... のように語尾を伸ばしながら交替していきます。
gara si puri「魚を食べる人」
mada si dicini so kalo so sani「私に生物についての本を与える人」
階層語尾の利点は、語順を変えずに修飾関係を明確にできることにあります。例えば日本語で「私は家で彼がくれた本を読む」と言う場合、「家で」が「くれた」と「読む」のどちらを修飾するのかが曖昧になります。この場合に修飾関係を明確化するには、「私は彼が家でくれた本を読む」や「私は彼がくれた本を家で読む」のように語順を入れ替えるしかありません。しかし階層語尾を使えば、語順を変えずに語尾の交替だけで修飾関係を示すことができるのです。
下の例文1と2では語順が変わっていません。しかし、例文1では fo mabo「家で」が第3階層の語尾である -o をとっているため、1つ上の第2階層の madini「与えられるもの」を修飾していると分かります。一方例文2では、fo mabo が第2階層の -i をとっているため、第1階層の cefa 「読む人」を修飾していると分かります。このように、labina の文は階層語尾によって修飾関係が一意に定まることが特徴です。
cefa si dicini madini si leno fo mabo「彼が家でくれた本を読む人」
cefa si dicini madini si leno fo mabi「彼がくれた本を家で読む人」
述詞句の並列
述詞句は並列することで論理積を表せます。並べる述詞句の数や語順は自由です。並列される述詞句は同じ階層と見なされます。
fima nela fuma 「眠るもの、かつ白いもの、かつ猫(=眠る白い猫)」
dicina so kali madina sa keni so sani hidina「生物についての本、かつ彼が私に与えるもの、かつ面白いもの(彼が私にくれる面白い生物についての本)」
コピュラ
コピュラは「S(主部)はP(述部)である」のように、2つの述詞句を繋いで文を作る働きをします。labina の文には原則としてコピュラが必須です。コピュラは法と極性によって6種類を使い分けます。
直説法肯定コピュラ li
li は「S は P である」という肯定文を作ります。
sana li qava.「私は人間だ」
lena nesa li veka.「その花は赤いものである(=その花は赤い)」
fuma li gara si puri.「猫は魚を食べるものである(猫は魚を食べる)」
dicina madina sa keni so sani li hidina.「彼が私にくれた本は面白いものである(=彼が私にくれた本は面白い)」
直説法否定コピュラ mo
mo は「S は P でない」という否定文を作ります。
sana mo qava「私は人間でない」
lena nesa mo veka.「その花は赤いものでない(=その花は赤くない)」
fuma mo gara si puri.「猫は魚を食べるものでない(=猫が魚を食べない)」
dicina madina sa keni so sani mo hidina.「彼が私にくれた本は面白いものでない(=彼が私にくれた本は面白くない)」
直説法真偽不明コピュラ ne
ne は「S は P かどうか」という文を作ります。補文の内部で用いられ、諾否疑問文の間接疑問文を作ります。補文の作り方については、補文代述詞の項目をご覧ください。
sana mo vita cemi fina ne qava cumi.「あなたが人間かどうか私は知らない」
疑問法コピュラ ku
ku は「S は P か?」という諾否疑問文を作ります。
fina ku qava?「あなたは人間か?」
lena nesa ku veka?「その花は赤いものか?(=その花は赤いか?)」
fuma ku gara si puri.「猫は魚を食べるものか?(=猫は魚を食べるか?)」
dicina madina sa keni so sani ku hidina.「彼が私にくれた本は面白いものか?(=彼が私にくれた本は面白いか?)」
命令法肯定コピュラ do
do は「S は P であれ」という命令文を作ります。主部の述詞句が二人称の fina や fija の場合は省略されることがあります。
(fina / fija ) do qava lida!「(あなた/あなたたちは)良い人間であれ!」
(fina / fija) do gara si puri!「(あなた/あなたたちは)魚を食べる人であれ!(=魚を食べろ!)」
命令法否定コピュラ ge
ge は「S は P であるな」という禁止の命令文を作ります。主部の述詞句が二人称の fina や fija である場合は省略されることがあります。
(fina / fija ) ge qava dola!「(あなた/あなたたちは)悪い人間であるな!」
(fina / fija) ge gara si puri!「(あなた/あなたたちは)魚を食べる人であるな!(=魚を食べるな!)」
人称代述詞・文代述詞
人称代述詞
人称代述詞は、話し手や聞き手などを指示します。以下のような種類があります。
sana:一人称単数「私、僕、俺」
fina:二人称単数「あなた、君、お前」
lena:三人称単数「それ、その人、彼、彼女」
saja:一人称複数「私たち、僕たち、俺たち」
fija:二人称複数「あなたたち、君たち、お前たち」
leja:三人称複数「それら、その人たち、彼ら、彼女ら」
nona:不定人称「何か、どれか、誰か」
kuna:疑問人称「何、どれ、誰」
人称代述詞の派生語
人称代述詞は派生語によって有生性や性別を区別することができます。
sanata「それ」sanala「その生き物(人間含む)」sanava「その人」sanova「彼」saneva「彼女」
lejata「それら」lejala「その生き物たち(人間含む)」lejava「その人たち」lejova「彼ら」lejeva「彼女ら」
nonata「何か、どれか」nonala「いずれかの生き物(人間含む)」nonava「誰か」nonova「いずれかの男性」noneva「いずれかの女性」
kunata「何、どれ」kunala「どの生き物(人間含む)」kunava「どの人」kunova「どの男性」kuneva「どの女性」
人称代述詞の並列
人称代述詞は、一般述詞と並列させることができます。
sana fuma「私、かつ猫(=猫である私)」
fija luma si nesi「あなたたち、かつ花を見る人(=花を見るあなたたち)」
dicina lena hidina「本、かつそれ、かつ面白いもの(=その面白い本)」
nona ravina「何か、かつ考え(=何らかの考え)」
kuna maba「どれ、かつ家(=どの家)」
文代述詞
文代述詞は kama と kima です。kama は自身が含まれる文よりも前の文の内容を、kima は後の文の内容を指示します。
sana li gara si puri. kama li lega si cemi pura mo tola si keni qozi.
「私は魚を食べた。そのことがここに魚がないことを引き起こした(=だからここに魚はない)」
cama sana li cata si bibi si cimi coma li kima. sana li geka si leni.
「私が言いたいのはこれだ。私は彼が嫌いだ」
補文代述詞
補文代述詞は2つで一組として用いられます。組になっている代述詞で節を挟むことで、全体を1つの述詞として扱うことができます。
補文代述詞には2つの種類があります。
cema / cuma
cema と cuma は、節を挟むことで全体で「~ということ、出来事」という意味の述詞に変わります。cema は節の始めに、cuma は節の終わりに置かれます。このように、節の始めに置かれる代述詞を始端代述詞、終わりに置かれる代述詞を終端代述詞といいます。
fina li gara si puri fo mabi.「あなたは家で魚を食べる」
→ cema fina li gara si puri fo mabi cuma「あなたが家で魚を食べること」
階層が下がる場合、始端代述詞と終端代述詞の両方の階層語尾が交替します。ただし、代述詞に挟まれた節は階層がリセットされ、主節の階層に影響されません。これは他の補文代述詞や、後に解説する関係代述詞でも同様です。
sana li vita si cemi fina li gara si puri fo mabi cumi.「あなたが家で魚を食べることを私は知っている」
nema / numa
cema と cuma は、節を挟むことで全体で「~という言葉、発言、文字列」という意味の述詞に変わります。直接引用を表すときに用いられます。
sana li gara si puri fo mabi.「私は家で魚を食べる」
→ nema sana li gara si puri fo mabi numa「『私は家で魚を食べる』という発言」
fina li vita si nemi sana li gara si puri fo mabi numi.「『私は家で魚を食べる』とあなたは言う」
終端代述詞の省略
終端代述詞は、文末に来る場合は省略することができます。これは、後に解説する関係代述詞でも同様です。
sana li vita si cemi fina li gara si puri fo mabi cumi.
→ sana li vita si cemi fina li gara si puri fo mabi.「あなたが家で魚を食べることを私は知っている」
fina li vita si nemi sana li gara si puri fo mabi numi.
→ fina li vita si nemi sana li gara si puri fo mabi.「『私は家で魚を食べる』とあなたは言う」
このページでは分かりやすさを優先し、終端代述詞の省略は原則として行わないこととします。
関係代述詞
関係代述詞は3つで一組として用いられます。補文代述詞と同様の始端代述詞・終端代述詞に加え、節内における被関係詞の位置に置かれる再述代述詞があります。被関係詞とは、関係節によって修飾を受ける述詞のことであり、英文法における先行詞に相当します。labina では関係節に修飾される述詞が関係節に先行しない場合があるので、そのように呼ばれます。
関係代述詞には2つの種類があります。
cama / cima / coma
cama と coma で節を挟み、節内における被関係詞の位置に再述代述詞の cima を置くことで非限定関係節を作ります。再述代述詞は、関係節内の階層に合わせて階層語尾を交替させます。関係節は、被関係詞の前後どちらに置いても構いません。
sana li cata si cefi si dicino「私は本を読みたい」
→ dicina cama sana li cata si cefi si cimo coma「私が読みたい本」
→ cama sana li cata si cefi si cimo coma dicina「私が読みたい本」
sana li keda si dicini cami sana li cata si cefi si cimo coma.「私は私が読みたい本を手に入れた」
nama / nima / noma
nama と noma で節を挟み、節内における被関係詞の位置に再述代述詞の nima を置くことで限定関係節を作ります。
関係節の単独用法
関係節は被関係詞を伴わずに単独で「関係節内の再述代述詞に相当するもの・人」という意味で用いることもできます。
cama sana li cata si cefi si cimo coma「私が読みたいもの」
cama sana li cata si cefi si cimo coma li lena dicina.「私が読みたいのはその本だ」
数述詞
接続詞
接続詞は3つで1組として用いられ、句を並列する働きをします。並列部分の始端を示すものを始端接続詞、並列部分の終端を表すものを終端接続詞、並列される句同士の間に置かれるものを語間接続詞といいます。