8回 専門家インタビュー June. 2021

政策提言AIのビジネス化の課題と展望

竹内 須藤さんのお話の中に、政策提言AIを各自治体が利用する地域エコシステムの構想がありましたが、今後企業としてこれを推進する意義やビジネス化への展望があれば教えて頂きたいです。


須藤 地域エコシステムの構想については、まず一番の優先は自治体のほかにも地場の企業や地場の大学といった様々なステークホルダーを巻き込むことかなと思っています。今、政策提言AIの問い合わせは、自治体のお客様からが多いのでそう思っていますが、本来、自治体に閉じた話ではないと思っています。元々、福田さんがこのAIを開発した時の思いとしては、公共だけというつもりで作ったわけでもないですし、まずは分かりやすい自治体を巻き込んだ形にしてから民間企業のほうに展開できればなと思います。ビジネス的に見ても、自治体は1700しかないので、民間に広げていかないとビジネスとして成り立たないだろうなとも思っています。

   使われ方としては、色々な自治体が自分達のモデルを作りますので、そのモデルをデータバンクのほうに入れて行くことを想定しています。そこに参加すれば、他の自治体のどういったモデルを作ったのかを参照できるという形を想定しています。そうすると、自分に近しい自治体では、こういうのを作っていたのだから私たちはこうしよう、というある程度、既製の型みたいなものがあって、それを自分たちでカスタマイズしてモデルを作っていくという形になると、どんどん波及していくと思っています。自治体だけではなく、民間企業にも最終的には広げていきたいと考えており、例えば小さな企業の意思決定とかでも使われるようになるとよいと思います。直近でも、民間適用の話を進めてはいるのですけれど、やはり公共色の強い民間企業さん、水道関係とか後はやはり電力とかガスとかそういうインフラ系の企業のニーズが高いと想像しています。そういうところも活用して頂ければ、日立のビジネスとして、街づくり全体を上流から下流まで支援する包括的なサービスという形になっていければいいと考えています。まちづくりの主体であるディベロッパーとは違った方向から、つまりは、こういうITの知見からデジタルの形で、シミュレーションで「こういう町にしていったらどうか」「ああいう町にしていったらどうか」というのを臨機応変にシミュレーションできるようなサービスとして出来ればと思っています。


竹内 データ自体はフリーではなく、ユーザー登録して使用料を払うことを想定していますか。


須藤 まだそこは検討中ですけれども、今の案としては、何らか有料の会員のようなものになって頂いて、その会員の特典メニューとして使えるというものです。政策提言AIというメニューもあれば、他のGIS情報などのメニューもあったり、日立は沢山技術があるので、様々なオプションを追加することも考えています。その会員さん達は、自分達のニーズに合わせて「これのサービスとこのサービスを使いたいな、シミュレーションしてみよう」という風になっていければいいかなと思います。


福田 補足しますと、現状では自治体と作ったモデルは、基本的には自治体のものという扱いになっています。だから長野県のモデルをほかの自治体で参考にしたいということがあれば、長野県に許可を取ってくださいということをお願いしているのですけれど、それをデータベースにあるモデルを参考にする代わりに、自分で作ったモデルを提供してくださいといったシステムになれば、自動的に溜まっていくような仕組みになります。自治体のデータというか作ったモデルを貯めておける場所みたいなものを作りたいという思いもあります。


広井 2017年に公表した時は、これはパッケージソフト化して無償でどの自治体も使えるようにしようという話もしていたのですが、中々パッケージソフトだけ出してもすぐには使いこなせないというのがあります。色々な自治体と、当初は完全に無償でお金のやり取りなしでやっていたのですけれど、段々増えていくと日立にとっては全部無償でやっていくわけにはいかないということもあり、今は料金を取ってやっています。しかし、それに偏りすぎてもいけないので、先ほどから出ている地域データベースのような半分公共的なところを作ってサスティナブルな事業モデルにするようなことも今考えています。