シンポジウム「地域をむすぶバナナ」
【プログラム】(敬称略、所属は開催当時のものです)
趣旨説明(「バナナの足」研究会)
1.生きるためのバナナ:村おこしを支える国際産直(堀田正彦(オルター・トレード・ジャパン))
2.バナナから紙:バナナ・グリーンゴールド・プロジェクト(森島紘史(名古屋市立大学))
3.沙漠とバナナが人類を救う!(西上泰子(立命館大学))
4.奄美のバナナ栽培(福島成尚(バナナ生産者))
5.総合ディスカッション(参加者)
【本シンポジウムの趣旨】
バナナは、数千年前から多くの人びとの手によって起源地の東南アジアからアフリカや太平洋島嶼部など各地に広められ、その生産と消費を通じて多様な在来の文化が形成されてきました。一方、19世紀末には、グローバルな貿易産品として扱われるようになり、現在にいたるまで世界中に行きわたる重要な商品作物となっています。バナナの特質とは、このようなローカルな要素とグローバルな要素を併せ持つところにあると考えられます。
私たち「バナナの足」研究会は、これまでアジアとアフリカのバナナ栽培文化を訪ねてきたなかで、品種の管理や利用にみられる個性的かつ創造的なバナナ栽培文化の存在と、品種の伝播やローカル・マーケットの発達にみられるバナナを通じた地域を越えた人々のつながりの強さを実感するに至りました。このような地域の生活文化や内発的な地域経済を、グローバル化する世界の中でどのように生かしていくかは、当該社会のみならず私たちにとっても重要なアイデアを提供してくれるものと思われます。
バナナは日本人にとって非常になじみのある果物ですが、その一方で、廃棄物も含めた果実以外の植物体の多様な利用法、芸術、神話や宗教などの地域における精神文化、人々をつなぐ交換財としての役割など、貨幣経済に限定されない様々なポテンシャルは十分に知られていないように感じます。
今回のシンポジウムでは、「地域をむすぶバナナ」というテーマのもとで、バナナを通じて新しい試みをされている発表者にご報告いただきます。消費と生産を取り込もうという私たちのコンセプトがあり、4名の方にご発表いただきました。
シンポジウムの様子
(司会を務める小松からの趣旨説明)
質問に答える4名の話題提供者
(左から、福島氏、西上氏、森島氏、堀田氏)
はじめにATJの堀田さんからフィリピンの民衆交易のお話を、続いて森島さんからハイチをはじめとした国々で自立経済や環境保護の試みとして活動されている「バナナ・ペーパー・プロジェクト」についてのご報告をしていただきました。その後に西上さんから石油枯渇以降の自然エネルギーを主軸とした新しい社会を考えるうえで構想されている「グローバル・バイオメタノール構想」についてお話いただきました。そして最後に、日本の奄美大島でバナナを生産されている福島さんから生産者からの声をお聞かせいただきました。
シンポジウムには、関西在住の市民や学生の方々が多く参加され、活発な議論をとおして、バナナという身近なモノを通じた幅広い人びとのつながりと生活実践の可能性について実感することができました。