「バナナの足」研究会とは

🍌 研究会趣旨

「バナナの足」研究会は、世界中のバナナ栽培地域で、生態人類学、農業生態学、エスノサイエンス、地域研究、ゲノム研究などの分野で調査研究をおこなっている研究者の集まりです。バナナを通して、熱帯の農と食文化、人間と植物の関わりの歴史、現代社会の農について考えることを目的としています。

「バナナの足」というちょっと変わった名前は、農産物や海産物を通して日本とアジアの関係を考えた先人である鶴見良行の『バナナと日本人』と『ナマコの眼』をもじったのと、自分たちの「足」で世界のバナナを見て歩こう!という思いを込めてつけました。

「バナナの足」研究会が活動を始めたのは1998年で、アフリカのバナナを主食とする地域で人類学的・農学的なフィールドワークをしていた研究者が集まって、バナナを通しておもしろいことを考えよう、というのが目的でした。英語では、"Banana Researchers Network of Japan (BRNJ)"と表記しているように、メンバーシップも緩やかです。当初は4名で活動を始めましたが、世界各地でバナナを研究する仲間が加わったり、関わりを休止したりしながら、緩く続いています。2007年以降、ウェブサイトも休止状態だったのですが、今回、ウェブサイトの引っ越しを機に、心機一転情報を更新して、みなさんと共有したいと考え、新しいサイトを立ち上げました。2015年度から科学研究費の支援を受けて4年間続けた研究で、久々にメンバーが共同で研究をした成果もご報告したいと思います。

バナナは、研究者にとって、とてもおもしろい作物です。まず、世界一巨大な草本であること。葉を含めると、5メートル以上になることも多いのですが、バナナは、樹木ではなく、草です。その目立つ風貌から、さまざまな文化的な物語を生み出してきました。そして、作物としてのバナナの多くは種がないので、基本的にはクローンとして増えるにもかかわらず、その品種は世界中で数百とも数千とも数えられ、それぞれ、好みの生育環境や果実の形や食味が違うこと。それから、丁寧に手をかけて高収量で生産することも可能だし、手を抜いてそれなりに収穫することも可能で、管理の程度の幅が大きいこと。さらに、バナナを作っている多くの地域では、バナナは生で食べられるだけでなく、料理したりお酒にしたりするし、葉っぱや茎もさまざまに利用されること。最後に、そんな多様性をもったバナナが、商品作物として先進国に輸出されるときには、ほとんどが、生で食べられるためのたった一つの品種に限られること。

わたしたちは、バナナが、歴史的にどのように移動して今のように分布するようになったのか考えること、バナナを切り口としてそれぞれのバナナ栽培地域の文化の特性を理解すること、バナナを通してグローバリゼーションの中での農産物の生産地と消費地の関係を考えることを目標としています。


2019年12月 「バナナの足」研究会