インド南部ケララ州における

バナナ栽培文化

【1】はじめに

 インドの南部や北部には、野生バナナ(Musa balbisiana BB)が自生しています。マレー半島から伝播したMusa acuminata系統の栽培種は、この地域の野生種と交雑することで、多様な品種群を生みだしたのでしょうか。

 ケララ州には、マラヤーラム語を話す人々が居住しています。マラヤーラムとは、山と海という意味で、その名の通り、山から海へ流れ込む渓流沿いに集落と水田が開かれ、集落はココヤシとバナナで囲まれています。彼らにとってバナナはとても身近で大切な作物で、ローカル・マーケットも良く発達しています。


【2】ケララにおけるバナナ栽培

 この地域を特徴づけるバナナの栽培様式は、ココヤシ、ビンロウなどの作物との混作畑です。1984-85年の時点で、ケララ州はインドで最大のバナナ作付け面積を有していますが、小農による在来品種の生産のため、ヘクタールあたりの収量は、6.5トンと極めて少なくなっています。


【3】ケララにおけるバナナの種類

 現地で確認したバナナの品種は19種類です。遺伝子型に関しては、AABの数が多く、代表的な品種は、AABのpoovan、AAのkadali、AABのnendrakaです。


【4】ケララにおけるバナナの利用

 利用法は、生食をのぞくと19種類を観察することができました。このうちpoovankadaliは儀礼に用いられ、nendrakaは多様に調理されます。このほか、近年のバナナの生産者組合や女性の自立援助団体などの動きが注目されます。