子どもが本音を話せる親子関係
~話せる関係は、聞いてもらえる安心感から~
~話せる関係は、聞いてもらえる安心感から~
今回は、「子どもの話を聞く」ということについて一緒に考えてみたいと思います。
突然ですが、皆さんは最近、誰かに「話を聞いてもらってスッキリした」と感じたことはありますか? 心のもやもやが整理されたり、安心したり、涙が出たりした経験がある方も多いのではないでしょうか。
実は、子どももまったく同じです。大人が悩んだ時に誰かに話を聞いてもらいたいように、子どもも自分の話をあれこれ言わず、じっと聞いてもらいたいのです。子どもが「聞いてもらえた」と感じる経験を積むことは、脳の発達だけでなく、自尊感情や自己効力感にも大きな良い影響を与えます。では、「話を聞く」とはどういうことでしょうか?「そうなんだね」とただ相槌をうつこと?「それはこうしなさい」とアドバイスすること?
答えは、もっとシンプルで、もっと深いところにあります。子どもにとっての“本当に聞いてもらえた”という感覚は、「自分の気持ちを否定されなかった」「途中でさえぎられなかった」「ちゃんと最後まで耳を傾けてもらえた」という体験の中にあります。たとえ子どもの話が支離滅裂でも、オチがなくても、真剣に聞いてもらえたという体験が、「自分の存在は価値があるんだ」という深い自己肯定感につながっていきます。
私たちはつい、「ちゃんと話してくれたら助けてあげられるのに」「どうして言ってくれないの」と思ってしまいがちです。でも、子どもたちの心の中には、「うまく話せないかも」「話したら怒られるかも」「心配かけたくない」「悲しませたくない」「話したら、言ってほしくないのに勝手に先生に言われそう」といった気持ちがあるかもしれません。
たとえば、子どもが「○○ちゃんに無視された」と話してきたとき、大人がすぐに「そんな子とは遊ばなきゃいい」「放っておきなさい」「あなたにも悪いところがあったんじゃない?」と言ってしまうと、子どもは「わかってもらえなかった」と感じるかもしれません。
もちろん大人は励ますつもりで言っているのですが、子どもの気持ちをしっかり受けとめる前にアドバイスをしたり、誘導したり、勝手に決めつけたりしてしまうと、「もう話したくない」「親に話すと面倒なことになる」と感じるようになってしまいます。
ではどうすればよいか――。
「○○ちゃんに無視されたんだね、それはつらかったね」「悲しかったんだね」と、そのままの気持ちを言葉にして返してあげるだけで、子どもは「わかってくれた」と感じます。 問題を解決するのはその後で大丈夫。大人は解決を急いでしまいがちですが、子どもは正解がほしいのではありません。「自分の話を聞いてもらえた」「気持ちを分かってもらえた」と感じることが大切なのです。
いつ、どこで、どんなことがあって、その時にどんな気持ちになったのか。低学年であればあるほど、いつ、どこで起きたことなのか、事実関係が明らかにならないこともあります。逆に高学年であれば、ずっと言えなかっただいぶ前の出来事を話し出すこともあります。親としては事実関係が気になるところではありますが、無理に全てを知ろうと聞き出す必要はありません。事実関係を明らかにしようと思えば思うほどに、子どもを問い詰めてしまったり、子どもが責められていると感じてしまうことがあります。次に困ったことが起きた時も、子どもが親に話したいと思えるような関係を保つ必要があります。
解決に向けて心がけたいことは、子どもが「どうしたいか」という気持ちを優先し尊重することです。親としては、きちんと解決しておきたい、次同じことが起きないようにあれこれ手を回したくなると思いますが、困った時は子どもが成長する時でもあります。子どもが『自分で決める』ことができるよう、いくつか選択肢を提示したり、親ができるサポートについても提示してあげると子どもも考えやすくなります。最終的には、親にとっての『スッキリ解決』ではないかもしれませんが、子どもが『話を聞いてもらえてスッキリした!』と感じ、自分なりの選択ができるような関わりが大切です。
もちろん、大人も毎日余裕があるわけではありませんし、忙しい時やイライラしている時に冷静に対応するのは難しいものです。親も完璧でなくて大丈夫です。「気持ちを受けとめることが大事だったな」と思い出した時に、それを取り戻すチャンスがうまれます。「さっきはちゃんと聞いてあげられなかった、ごめんね」と一言伝えるだけでも、子どもとの信頼関係は修復されます。
大切なのは、「ちゃんと聞かなきゃ」と身構えることではなく、「わが子の味方でいたい」という思いを持ち続けること。うまくいかない日もあります。でも、子どもはきっと分かっています。親が自分を想ってくれていること、いつでも味方でいてくれること。だから、焦らず、怒らず、日々の中で「聞いてもらえる安心感」を少しずつ育てていきましょう。
子育ての正解はひとつではありませが、「聞いてもらえた」と感じた子どもは、心が安定し、自分を大切にできる人に育っていくというのは確かなことです。そして、それはきっと、親である私たちの心も同じだと思います。誰かにちょっと聞いてもらいたいなと思ったときには、ぜひご相談ください。