【掲載雑誌】
Nishikawa Tomoaki and Satoshi Ide, “Earthquake size distribution in subduction zones linked to slab buoyancy”, Nature Geoscience, 2014 (PDF )
【報道発表】
【研究の要点】
全世界の沈み込み帯における地震サイズ分布(地震の大きさ・頻度の分布)の違いを調査し、沈み込むプレートの年代が新しい地域(チリ海溝など)ほど大地震が発生しやすいことを示した。
沈み込むプレートの重さの違いに起因する、プレート境界にかかる圧縮の力の大きさの違いが、その原因であることが強く示唆された。
地震サイズ分布を決定する物理メカニズムの解明は、全世界の地震リスクの評価に役立つかもしれない。
【研究の詳細】
世界の地震活動は地域ごとに大きく異なる特徴をもっています。例えば、チリ海溝では観測史上最大のM9.5の超巨大地震をはじめ、M7を超える大地震が数多く発生しています。一方、伊豆海溝では巨大地震が観測されたことはありません。
地震活動の重要な指標の一つに地震サイズ分布(地震の大きさ・頻度の分布)の傾き「グーテンベルグ・リヒター則のb値」があります。b値は、大きな地震と小さな地震の発生数の比を表しており、b値が小さいことは相対的に大地震が多いことを意味します。世界には大地震が多い(b値が小さい)沈み込み帯と大地震が少ない(b値が大きい)沈み込み帯があることは知られていましたが、そのようなb値の違いを生む原因は明らかではありませんでした。
そこで、私たちは全世界の沈み込み帯145領域においてb値の計算を行いました。その結果、新しいプレートが沈み込む地域ではb値が小さく(大地震が多い)、古いプレートが沈み込む地域ではb値が大きい(大地震が少ない)ことを示しました(上図)。さらに私たちは、沈み込み帯の力学モデルに基づき、沈み込み帯ごとのb値の違いを、沈み込むプレートの重さの違いに起因する、プレート境界にかかる圧縮の力の大きさの違いによって説明できることを示しました(下図)。プレートが古いほどプレートは重くなるため、プレート境界にかかる圧縮の力は小さくなります。
【結論・展望】
本研究によって、世界の沈み込み帯における地震サイズ分布を決定する基本的な物理メカニズムが初めて明らかになりました。この物理メカニズムに基づいて、全世界の地震リスクをより定量的に評価することが可能となるかもしれません。