中国民主化のために立ち上がった学生たちの苦闘と挫折を描く。学生たちの思いが読者をも熱くさせる。小説中で散りばめられたテレサテンの《月亮代表我的心》と尾崎豊の《I love you》が学生たちの初恋、孤独、挫折とリンクして印象的。中華圏にとってテレサテンは英雄的歌手であったこと、今なお中国民主化への苦闘は続いていることを念頭において読むとさらに感慨深い。
天安門に斃れた学生たちを悼む。
余談だが、テレサテンの《時の流れに身をまかせ(我只在乎你)》は—日本人はあまり意識してないかもしれないが—東アジアを代表する名曲だ。日本人が作り台湾人が歌い中国、香港をはじめ東アジアで広く愛された歌は他にない。北京語、台湾語、広東語、日本語を使いこなすテレサテンの語学力にも驚く。彼女が歌わなければ東アジアの名曲にはなりえなかった。