過去の前震活動への適用例を紹介します。前震に関するFAQもご参照ください。
うまくいった例
解説: 5月3日から7日の前震活動を活発化として検出しました。この前震活動は、ETASモデルで再現できる確率が0.01%以下であり、極めて顕著な異常を示しました。ETASモデルは地震間の誘発現象をモデル化したものです。よって、この顕著な異常は、茨城県沖地震の前震活動が非地震性現象によって誘発されていることを示唆します。非地震性現象の候補としてはプレスリップ(震源核形成)やスロースリップが考えられます (Nishikawa & Ide, 2018)。
解説: 3月8日までの東北沖地震前震活動を解析対象としました。Kato et al. (2011)とIto et al. (2013)は、スロースリップがこの前震活動を誘発したと指摘しています。この前震活動は、2月半ばごろから異常性が上昇し、3月にはETASモデルで再現できる確率が0.15%という異常性を示します。活発化の検出基準は0.1%以下ですので、活発化とは判定されませんでした。この検出基準は私が任意に設定したものであり、物理的根拠はありません。スロースリップに誘発された前震活動を見つけるには任意に設定された検出基準に固執することなく、異常性の推移を監視することが重要であることを、この解析結果は示しています。3月9日のM7.3前震以降の地震活動は解析対象にしていません。理由は、本解析の目標はM7級の大地震が発生する前にその前震活動を活発化として検出することであり、M7.3前震発生以降の地震活動は本解析の興味の範囲外であるからです。
解説:10月19日23時01分までの前震活動を活発化として検出しました。19日から前震活動が開始し、その日の17時31分に活発化を検出し、23時44分に本震が発生しました。この活発化がETASモデルで再現できる確率は0.06%です。活発化と判定された前震から本震発生まで6時間しか猶予がありませんでした。
解説:7月23日23時03分までの前震活動を活発化として検出しました。前震活動自体は7月22日から開始していました。この前震活動は、ETASモデルで再現できる確率が0.01%以下であり、極めて顕著な異常を示しました。この地震と2008年茨城県沖地震は同じ固着域を破壊したと考えられています。活発な前震活動を伴ったというのがこの二つの地震の共通点です。
解説:この地震の前震(M5.7)を活発化として検出はできませんでしたが、3月には活発化、4月には静穏化を確認しており、地震発生直前にTwitterで報告しました。この前震の位置が、1996年Mw6.7日向灘地震前震活動と近接していたことも報告の決め手になりました。
不意打ちされた例
前震に関するFAQで説明したとおり、大地震の前に必ずしも活発な前震が発生するわけではありません。以下は、活発な前震を伴わず不意打ちされた例です。
解説:この地震の震源域は東経143度、北緯40度から41度です。この地震は活発な前震を伴わず、比較的静穏な時期に発生しました。4月にはこの地震の浅い側で、9月、10月には深い側と浅い側で活発化が発生していました。
解説:10月19日のM6.9日向灘地震の一ヶ月半後にM6.7のプレート境界地震が深い側で発生しました。10月の地震とは異なり、活発な前震活動は確認されず、直前に異常はありませんでした。
解説:この地震には目立った前震活動はありませんでした。興味深い点は、この地震の破壊開始点が微動多発地域と非常に近い点です。
解説:この地震には目立った前震活動はありませんでした。興味深い点は、この地震の破壊開始点が微動多発地域と非常に近い点です。
解説:この地震には目立った前震活動はありませんでした。