川崎先生の著書(2006年刊行)。スロー地震研究の記念碑的論文であるShelly et al. 2006 nature 、Ide et al. 2007 nature 以前のスロー地震黎明期の様子が生き生きと描写されている。とくに三陸沖ウルトラスロー地震発見にいたる経緯とその後の論争は、発見者でないと語れない貴重なお話。馴染みの先生の名前もたくさん登場する。ところどころに研究上の教訓も書かれていて参考になった。
日本のスロー地震研究は三陸沖ウルトラスロー地震発見に始まり房総を経て南海、東海に至る。 三陸沖はスロー地震学始まりの地にもかかわらず未だに謎だらけというのも面白い。
2006年当時のスロー地震研究に関する未解決問題が列挙されている。解決した問題もいくつかある。しかし、最も重要なスロー地震発生メカニズムについては、13年たった2019年現在でもほとんど進歩がない。
スロー地震は成長しそこねた震源核なのか?そうでないとすればどんな摩擦則で発生するのか?
スロー地震と流体を結ぶ具体的な物理的・化学的メカニズムは何か?
2000年代、2010年代を通して解けなかったこの二つの難問。2020年代は是非とも解きたい。