三島由紀夫というとどんなイメージを思い浮かべるだろう?極右思想家?それとも、彼の美しい日本語だろうか?
意外なことにそのような彼の厳粛なイメージはこの本にはない。この本で語る彼は、少し意地悪で冗談をよく言う、おもしろいおじさんである。
しかし、もちろん、単なるおもしろいおじさんではすまない。彼の軽妙な語り口と思考の閃きに読者の道徳観はあっという間にひっくり返るだろう。厳粛な三島に惹かれて読み始めた人々や、上品に生きてきた人々は開いた口がふさがらないかもしれない。
世の中の大抵は厳粛でもないし上品でもない。道徳は単なる習慣か権力者が大衆を管理するための道具みたいなものである。そんなもの笑い飛ばしておいたほうがよいのかもしれない。道徳と正反対に位置する乱れた酒場のほうが人生の多くを僕らに教えてくれると僕は経験上思う。
僕は三島の右翼思想に全く興味はないが、彼のコラムや砕けた小説はいつも楽しく読ませてもらっている。