日本周辺の地震活動を毎日解析して結果を公開します。
一年前から本日までの地震活動の中から、異常な活発化を検出します。本解析の大きな目標は、マグニチュード7以上の大地震が発生する前に、その前震活動を活発化として検出することです。数時間おきに解析結果を自動で更新します。
お知らせ
2022/03/11 奥能登 領域を追加しました。
2020/06/11 新型コロナ流行の影響で更新頻度が下がっております。ご了承ください。
2020/06/11 長野・岐阜県境の群発地震活動を解析しました。
2019/11/24 解析結果の更新を再開しました。
2019/11/06 11月中旬は観測航海中のため解析結果の更新ができません。
2019/10/16 京都領域を追加しました。
2019/10/03 10月末から12月上旬は海外出張と研究所の停電のため解析結果の更新が不定期になります。
2019/09/30 アスペリティ分布と微動分布を各領域の解析結果に追加しました。
2019/09/30 月末に画像が乱れるバグを修正しました。
2019/08/28 日本海溝、千島海溝の微動分布を各領域の解析結果に追加しました。
2019/07/08 熊本領域を期間限定で追加しました。
2019/06/19 日本海山形沖領域を期間限定で追加しました。
2019/04/30 月末はプログラムのバグで画像が乱れますが、翌日には元に戻ります。
2019/04/26 前震に関するFAQというページを追加しました。
2019/04/17 過去の前震活動への適用例というページを追加しました。
2019/04/09 小笠原諸島をのぞき日本周辺の海溝を全て網羅しました。
特筆事項
2020/12/18 伊豆大島近海でM5.1の地震がありました。
図の見方
左図の丸が震央分布です。赤丸が活発化と判定された地震です。黒丸はそれ以外の地震です。赤紫の丸は直近三日の地震です。直近一ヶ月に活発化が発生していた場合、赤い小さな星で表示されます。白い四角は過去に検出された微動です。オレンジの線はアスペリティです。黒い実線は解析領域です。
右上図はそれぞれの地震をETASモデルで再現できる確率を示しています(手法参照)。ETASモデルで再現できる確率が極端に低い地震は地震活動の異常な活発化と言えます。右上図ではその確率の-log10をとっています。つまり図中の上にある地震ほど確率が低くく、異常です。右下図はマグニチュード-時間プロットです。
日本海溝
千島海溝
南海トラフ
琉球海溝
伊豆海溝
日本海
九州
近畿
中部
コメント
2020/06/11 4月下旬から長野・岐阜県境で群発地震が発生していることを受け、解析領域を追加しました。05/19の地震活動が最も異常性が高いという結果でした。
2020/04/24 茨城沖領域で活発化が発生しました。メカニズム解からフィリピン海プレート上の地震と考えられます。
2020/03/31 十勝沖領域で群発地震が発生しました。プレート境界地震の可能性があります。
2020/01/04 東南海領域で2019年10月末から2020年1月現在まで顕著に静穏化しています。原因は不明です。
2019/10/30 京都領域の京都大阪県境付近でM3以上の地震が4日間に3連発するのが観測されました。ETASで実現できる確率は2%以下(活発化の検出基準は0.1%以下)です。
2019/10/24 伊豆諸島領域で活発化が検出されました。原因は不明です。
2019/09/27 種子島南東沖で群発地震が発生しました。原因は不明です。このあたりは過去にスロースリップやM6クラスの地震が発生した場所です。
2019/09/11 宮城沖で活発化を検出しました。原因は不明です。
2019/08/28 青森県沖でM6.1のプレート境界地震が発生しました。この地震は、微動多発域の深い側(西側)、1968年十勝沖地震アスペリティの浅い側(東側)で発生しました。このアスペリティは1968年以降すべっていません。
2019/08/27 能登半島でM3.8の地震が発生しました。この地震はM2.7とM2.9の前震を伴いました。また、この地域は2019年から地震活動が活発化していることを確認しました。今後の地震活動の推移をみて、新しく能登半島に対応する解析領域を追加するか検討します。
2019/08/04 福島県沖M6.3の地震が発生しました。顕著な前震活動は見られませんでした。
2019/06/18 山形沖でM6.8の逆断層地震が発生しました。顕著な前震活動は見られませんでした。参考のため期間限定で日本海山形沖領域を追加しました。
2019/06/17 宮城沖で活発化が検出されました。原因は不明です。
2019年5月10日に日向灘でM6.3の地震が発生しました。この地震の前震(M5.7)を活発化として検出はできなかったものの、3月には活発化、4月には静穏化を確認しており、地震発生直前にTwitterで報告しました。
2019年5月10日に三陸沖で活発化が検出されました。原因は不明です。
2019年4月29日十勝沖で活発化が検出されました。原因は不明です。
2019年4月11日三陸沖でMw6.0のプレート境界地震が発生しました。直前に顕著な前震活動は見られませんでした。
2019年3月南海トラフ西端に活発化が検出されました。これは2019年3月27日マグニチュード5.4の地震とその前震です。周辺では2018年9月ごろから豊後水道スロースリップが発生していました。
2018年11月十勝沖領域で活発化が検出されました。これは11月28日に発生したマグニチュード5.7プレート内地震の活発な余震活動です。
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成績
2019年4月~9月期
異常(ETASモデルで実現できる可能性が0.1%以下)が出た回数:6回
全6回中、空間的なクラスタリングしていたもの(典型的群発地震):2回
全6回中、M7以上の大地震の前震であったもの:0回
この期間中に発生したM7以上の大地震の個数:0個
補足:熊本県芦北町と種子島東方沖で群発地震を検出した。この期間にM7以上の大地震は発生しておらず、当然、前震は0回である。
データ
本解析には気象庁一元化震源と最近の地震活動(速報値)を使用しています。地形データにはSmith & Sandwell (1997)を使用しています。作図にはThe Generic Mapping Toolsを使用しています。アスペリティの分布はYamanaka & Kikuchi (2004)、Yagi et al. (1998)、Yagi et al. (1999)、Wald and Somerville (1995)、Iinuma et al. (2012)の結果を使用しています。微動分布はIdehara et al. (2014)、Yamashita et al. (2015)、Nishikawa et al. (2019)の結果を使用しています。アスペリティ分布はFinite-Fault Earthquake Source Model Databaseや山中佳子先生のホームページからダウンロードしました。微動分布はSlow Earthquake Databaseからダウンロードしました。
手法
各領域内で過去数年間(日本海溝では過去1年間、日本海溝以外では過去3年間)に発生したマグニチュード3以上の地震を抽出し、Epidemic-Type Aftershock-Sequence (ETAS)モデル (Ogata, 1988; Okutani & Ide, 2011など)の5つのパラメータを推定します。 次に各領域内で ETASモデルから予測される地震数 (変換時間)を計算します。最後に実際に観測された地震数と予測された地震数を比較し、ETASモデルに従わない地震活動を検出します。具体的な手順は以下の通りです。
活発化か否かの判定の対象となる地震(判定対象地震)を1つ決める。
判定対象地震から20個前までの地震に対して、その地震から判定対象地震発生時刻までの期間内にETASモデルによって実現される地震発生数の確率分布を計算する。
その期間内に 実際に観測された地震数以上の地震数がETASモデルによって実現される確率を2の確率分布から計算する。
2と3の計算を判定対象地震から20個前までの地震全てに繰り返す。計算された20個の確率のうち最も小さいものを判定対象地震に割りあてる(解析結果の右上図)。
この確率が0.1%未満であったとき対象地震は活発化であると判定する(解析結果の図中の赤丸)。
1-5の手順を領域内の全ての地震に繰り返す(解析結果の右上図)。
手法の長所
1個の地震に対して、その地震が活発化か否か判定することができます。つまり、活発化を判定するために必要な最小の地震数は設定していません。これにより速報を出すことが可能になりました。
時空間ETASモデル (Zhuang et al., 2002)ではなく、時間ETASモデル(Ogata, 1988)を使用することで、ETASパラメータを安定に比較的素早く推定することができます。
手法の短所
時間ETASモデル(Ogata, 1988)を用いたことにより、震源の空間分布の情報が無視されています。つまり、領域内の震央が遠く離れた地震が時間的に近接して発生した際にも活発化と判定します。
ダブレットやトリプレット(2個あるいは3個の地震が時間的に非常に近接して発生する現象)など一般的には活発化とはみなされない地震活動も、本手法では活発化であると判定します。
謝辞
地震カタログデータを提供してくださった気象庁をはじめ、各大学、防災科学技術研究所、京都大学防災研究所地震予知研究センターSATARNシステムに感謝申し上げます。
解析結果の引用について
本ページの解析結果を引用する際は以下の学会発表予稿を引用してください。
西川友章・西村卓也, ETASモデルを用いた日本列島周辺の地震活動異常性モニタリング (Realtime monitoring of seismicity anomaly around Japan using the ETAS model), 日本地震学会2019年度秋季大会予稿集, S09P-10 (2019年9月16日京都市).
連絡先
本解析に関して、ご意見・ご要望がございましたらメールまたはTwitterでご連絡ください。
地震・スロー地震活動モニタリングおすすめリンク
南海トラフにおける深部微動活動のモニタリングシステム。広大の須田研が運用している。結果は毎日更新される。南海トラフ深部のスロー地震活動を把握するのに便利。
震源分布、マグニチュード-時間ダイアグラム、累積頻度分布などをインタラクティブに描画できるシステム。東大地震研の鶴岡研が運用している。気象庁一元化震源は毎日更新されるので、気になる地震活動のチェックなどに便利。