【日時】2016年5月14日(土)15:00~17:30
【発表者】雨宮有里(神奈川大学)
【タイトル】抑うつが意図的・無意図的想起に与える影響―経験サンプリング法を 用いて―
【要旨】
近年うつ病や抑うつは増加傾向であり、心理学が取り組むべき重要な課題
である。この抑うつは概括化(意図的想起の障害であり、思い出そうとしても過
去の具体的な記憶を想起できないこと)を通じ、様々な問題を生じさせることが
実験で示されている。しかしながら、日常生活でもこの概括化が生じているかは
明らかになっていない。また、日常生活で抑うつが無意図的想起に与える影響に
ついても十分な検討が行われていない。そこで本研究では経験サンプリング法を
用い、日常生活で抑うつが意図的・無意図的想起に与える影響を検討する。
【発表者】齋藤梓(目白大学)
【タイトル】性被害者の被害後の治療選択と精神的回復、および被害時の心理
【要旨】
米国の大規模疫学調査の結果、深刻な性暴力・性犯罪被害(以下、性被害
とする)は、災害や事故に比べて心的外傷後ストレス障害の発症率が高いことが
明らかになった(Kessler et al., 1995)。深刻な性被害を原因とする精神的ダ
メージはきわめて大きく長期にわたることもまれではない。従って、性被害者に
適切な精神的ケアが提供されることは重要である。しかしながら、適切なケアを
提供するためには検討すべきいくつかの点がある。それは例えば、性被害者の援
助要請行動、適切な治療選択行動、性被害後に生じる非機能的認知とその回復等
である。本発表では、発表者がこれまで臨床心理領域で実施してきた研究結果か
ら、主に治療選択と性被害後の非機能的認知についてまとめ、適切な精神的ケア
について検討を行う。
また、性被害者の非機能的認知においては、被害時の心理状態と行動とを周囲
が理解していることが重要である。本発表では、上記研究内容の発表に加え、被
害者が回復過程で語った被害時の心理を守秘義務に配慮した上で紹介し、心理臨
床で得られた知見をどのように研究で明らかにしていくことができるか、議論を
行いたい。