投影詞・述辞
# 投影詞
投影詞は、内容語の一種である多色語のうしろにつけることで有意味な機能語である。
## 多色語
多色語は多義語とほぼ同義な言葉であるが、投影詞によってそのうちの1つを引き出せる点で単なる多義語とは異なる。
多色語は普通、それぞれの投影詞における意味の論理和や論理積をとった意味をもつ。ほとんどの多色語が論理和的である。
すなわち、投影詞有りの場合が成り立つならば、投影詞無しの場合も成り立つ。換言すれば、ほとんどの多色語は多義語と遜色ない。
論理和的多色語において、投影詞は意味を抽出するニュアンスがある。
一方で、少なからず論理積的な多色語もある。この場合、投影詞有りの場合が成り立っても、投影詞無しの場合が成り立つとは限らない。
論理積的な多色語はほとんどの場合、投影詞が無いと有意味ではない。論理積的多色語において、投影詞は他の意味を除去するニュアンスがある。
このことから、論理積的な多色語のことを強多色語と呼ぶことがある。
投影詞は6つあり、色名を付けて区別されている。これは ogatue 「有色だ」 という多色語へのそれぞれの投影詞の適用により得られる色に由来する。
ogatue : 有色だ
ogatue fa : 黒色だ
ogatue si : 黄色だ
do hugatue cu ja : これは緑色だ。
onher : 結婚している; fa/to : 妻/夫
ni Katoz hinher fa ja. : 私はカトの妻だ。
cinher to hulju ja. : 夫は生きている。
投影詞付きの多色語を項として使う場合、格辞は投影詞につける。
投影詞の研究結果の中で広く受け入れられている事実は、投影が有意味になる投影詞には順序があるということである。
例えば、黒/白投影詞の投影が無意味であり、黄投影子の投影に意味があるということはほとんど見られない。
このことをまとめると、次のようになる(これを「投影の含意規則」と呼ぶ):
白・黒 → 赤 → 緑 → 黄 → 青
しかしながら、ほぼ厳密にこれに従うのは赤までというのが現在の見解であり、緑、黄、青については、これに従わないケースもある。
もう少し詳しくいうと、まず、緑と黄は、多くの多色語においてほぼ同程度に生起しうるため、緑・黄ではないかとする意見もある。
また、青 と 緑・黄の生起順が逆というケースもしばしば見られる。
そこで、メルラ・カオ(Merla Kao) は、新しい投影則を提唱した(これは「Merlaの投影含意則」、もしくは単に「Merla則」と呼ばれる):
白・黒 → 赤 → (緑・黄 / 青)
メルラ則では、有意味な投影詞が4つのときは青が、5つのときは緑・黄が優先されるとしている。
この投影則は従来の規則よりも現象に忠実であるとされているが、完全に厳密な法則ではないことには注意すべきである。
# 述辞
述辞は、述語を構成する句の最初の語の頭につき、肯定/否定を表す。文否定は述辞が担っている:
sn-
h-, y-, w-
否定辞
肯定辞
肯定辞はその意味を付加するために使われるというよりは、もっぱら述語開始マーカーとして使われる。
y/w- は相の関連で生じてくる。基本的にはh-がくる。
owojak : 歩く
olenju : 少女
milenju hawojak ja: 少女が歩いている。
述語の直前の項が格辞付きの項であったり、代名詞、数詞であるときはしばしば述辞は省略される。
しかしながら、『標準的な』エニシキでは述辞は原則つけるという傾向になっている。
milenju snawojak ja. : 少女は歩いていない。
pi snulju ja. : あれは生きていない。