魚には、群れという社会の中で生活している種が多くいます。例えば水族館でよく見かけるイワシの魚群や、公園の池などで集団になり泳いでいるコイなどが身近な例です。
私が実験に使っているゼブラフィッシュ(写真1)という魚も、群れを作り生活している東インドに分布する小型の淡水魚です。(原色魚類大図鑑より)
私はゼブラフィッシュを用いて、観察することのみでこの社会性学習が可能かどうかを、下図のような実験セットを用いて実験しています。
写真1:樹脂包埋されたゼブラフィッシュ
私たち人間は、周りの人の行動や振る舞いを見て、そこから何かを学び、自らの行動に反映させます。そしてそれは、魚類における群れという社会の中でも見られることが知られています。(Leadbeater とChittka 2007)
キンギョなど複数の魚種で、群れの中の他個体の動きから、捕食者からの回避行動や、餌の獲得方法などを学ぶことができるとされています。こうした学習は一般にsocial learning:社会性学習と呼ばれています。
奥水槽:デモンストレーター群
あらかじめ特定の行動を学習させておき、この行動をオブザーバーに呈示する先生役を果たします。
手前水槽:オブザーバー群
奥水槽のデモンストレーター群の動きを観察します。
写真2:実験室の飼育システム。群れで管理しています。
写真3:実際の実験セット
○将来的には・・・
観察学習のメカニズムを解明し方法を確立することで、1 度に多くの個体に対してまとめて学習させることが可能になります。それにより、捕食者回避行動を放流魚に学習させて放流後の生残率を上げたり、自然環境放流後の資源管理(海洋牧場)などの実現に向けた足がかりになると考えています。