サカナはがっかりするのか。
100円→500円→100円とお手伝いの駄賃が変動すればどうでしょうか。
100円から500円になればもっとはりきって手伝うでしょう。
ところが500円だったものが100円に下がると、がっかりして手を抜いてしまうかも知れません。それも当初以上に。
このような報酬の量や質が低下した時にみられる行動の悪化を「負の継時的対比効果(ガッカリ効果)」といいます。
哺乳類ではよくみられるガッカリ効果ですが、哺乳類以外では報告されていません。
異なる側面?
これまでの研究では、報酬を得るまでの時間を指標にガッカリ効果をみていました。
これに加えて、生理学的な観点から探ることでサカナのガッカリについてより詳しく示すことが出来るかもしれません。
計測しやすい生理反応の指標として呼吸、心拍、体色があります。呼吸や心拍については計測機器を用いて測定できる可能性が高いですが、体色についてはその変化が激しい魚種を選ぶ必要があります。体色変化が激しく、これまで研究された魚種(キンギョやティラピア)と生態的に異なる魚種を検討した結果、アカオビシマハゼに至りました。
魚類のガッカリ効果に関する研究はあまり見当たりませんが、キンギョにおいてはガッカリ効果が検出されませんでした(Lowes & Bitterman,1967)。
しかし、魚類は低温の海から熱帯の海、浅海から深海、淡水から海水まで様々な環境で生息しています。
数例だけの研究で「サカナにガッカリはない」と結論付けるのは早急ではないでしょうか。
これまでの研究とは異なる側面から見れば「ガッカリ」を検出できるかもしれません。
ガッカリ効果、その前に。
ガッカリ効果を検討する前提として、学習行動が重要となってきます。ある好ましい状況(上記の例では手伝い→駄賃)が起こることを予期しなければそもそもガッカリできません。
つまり報酬を予期できるか、その学習を明らかにする必要があります。そこで本研究では、将来的な展開を念頭にアカオビシマハゼの学習がどのように進むのかを検討しています。
この研究成果の一部「アカオビシマハゼの学習行動」についての論文が公表されました。
Yoshida, M., Kanto, Y., Tsuboi, M., Sakai, Y. (2013) Rapid acquisition of an appetitive conditioned response in an intertidal fish, Tridentiger trigonocephalus (Gobiidae), using an ethologically relevant conditioning paradigm. Behaviour, 150 (6), 585-598.