ルカ2;22~32
シメオンと幼児イエスとの出会いは、感動的である。シメオンがどのような人生をたどってきたのかルカは記してはいない。知ることができるのは、「この人は正しくまた神を敬い、イスラエルのふるい立たされる日が来ることを待望していた。また、神の生命の息が彼にありつづけた(25)」という事だけである。神殿に来る多くの人々の中に、特に貧しい人々の中に、救い主を見出す事は、聖霊の導きがなければ不可能であった。
シメオンは、幼児イエスとの出会いにおいて「わたしの目は、あなたの救いを見た」と語っている。ここには、幼児イエスがいるのみである。奇蹟も、力ある言葉も、十字架の死も、復活もない。しかし、シメオンは、確かに見たのである。ひたすらに耳を傾け続けた(シメオン)者への、時を越えた確かな神の恵みを、彼は見たのである。
(文・石田 龍三)