タングラムに代表される裁ち合わせパズルとは、「切って・並べ替えて・別の形を作る」図形パズルを指します。単純な図形を並び替えるだけですが、様々なものに模した図形を作ることができるため、奥が深く長年楽しまれたきました。120年未解決となった問題も、そんな”遊び”の中から生まれてきたそうです。
約120年前の1902年4月にヘンリー・デュードニーが雑誌に投稿した「正三角形をなるべく少ない個数のピースに分割し、組み替えることで正方形を作れ。」という懸賞金付きの問題。デュードニーが用意した解答は4ピース。しかし、長らくの間、本当に4ピースが最小なのかという問題が残ったままでした。
元仁愛大学の伊禮三之先生をお招きして、「裁ち合わせパズル」とそれに関わるボヤイ–ゲルヴィンの定理について勉強会を行いました! タングラムなどで知られる裁ち合わせパズルは、数学的には「合同」の考え方を広げた分解合同という操作で説明できます。一般的には ” 合同 → 等積(面積が同じ) ” ですが、等積だから合同とは限りません。しかし、図形を切って形を作り直せる分解合同では、 ” 等積 → 分解合同 ” が成り立つというのが、ボヤイ–ゲルヴィンの定理の主張です。じつは、この証明、「三平方の定理の裁ち合わせパズル」が重要な役割を果たします。それに気づいた生徒からは驚きの声が上がりました。
高校数学教育を楽しく考えよう!の会主催の北陸先端科学技術大学院大学助教・鎌田斗南先生の講演会に参加しました。鎌田先生の専門である計算幾何学は、“カタチ”を計算する学問と言われており、身近な例では展開図などを計算によって求めて作成する計算折り紙などがあります。この講演では、実際に未解決問題がどのように解かれていったのか、解決過程のアウトラインや着想など、研究のプロセスをリアルに聞くことができました。
中高生時代にいろいろと夢中になった鎌田先生ですが、まだまだやりたい・やりきっていないと思ったのが数学だった。だから数学を学び、研究者となったと語られていました。また、「研究ってなんですか」という質問に「研究とは未知を既知に変える営みで、研究者は人類の“分かっている”領域を増やすことが仕事なのかな」と答えており、この言葉は生徒たちにも深く残る言葉だったようです。学びが深く、熱い気持ちになれる講演会となりました。