いよいよ定年を迎える頃、誰もが一度は考えるように、これから何をしようかと、私もぼんやり考えていました。そんなとき、新聞のリハビリ体操士養成講座の記事が目にとまりました。出来ればヘルパー2級の資格が望ましいとの説明がついていました。 早速、ヘルパー2級取得を目指し、医師会が実施している講座を受け、認定を受けました。その後、健康プラザでの指導士養成講座を受けて平成18年9月に念願の認定書を取得しました。取得後、笠間市の体操士会が立ち上がるまでの間は地元の仲間5人で近隣の実践活動を見学したり、岩間町主催の高齢者向けの行事で実演指導をしていました。 地区立ち上げのメンバーは、和裁と詩吟をやる、ほのぼのタイプのSさん、ボランテアでヨーガを指導し理論派で穏やかタイプの元会社員のKさん、ヘルパーの夜勤もこなす頑張り屋のIさん、そして会の纏め役の元ケアマネ―ジャーのAさん。彼女はメタボで町の検診に引っ掛かり口の悪い人から体操士として説得力に欠けると揶揄されてもめげない力強い方です。このときのメンバーの年齢は全員60代でした。この時期、まだ、のどかなこの町では高齢社会への対策としての健康づくりへの動きが住民には伝わって来ませんでした。私たちは待ってばかりもいられないので自分たちで立ち上がり、会場探し、メンバー募集を始めました。 その甲斐あって、今では16か所の会場、メンバーも増えたり減ったりして17名で定着しています。
3月に大災害があった昨年は、年間総数214回、指導士稼働数571人,会場参加者総数2969人の実績をつくりました(岩間地区集計)。今年度は更に会場が増え、利用者も1会場で50人を超え、毎週木曜実施という所も出てきました。
平成の町村合併後、3町村を合わせた笠間市の利用者総数は年間平均13,000人に達しています。この数字には何の説明もいらないでしょう。先のWHOの宣言を待たなくとも、自身の健康は自分で守るという住民の意識の表れではないかと思います。
この体操の目的は地域の高齢者や低体力者に対して介護予防・リハビリ体操の知識の普及と実践指導を行い、生きがい活動と健康づくりについての自主的な取り組みを行う(茨城県立健康プラザ、大田仁史)としています。
体操会場ではまず、はじまる前に参加者の体調の確認をし、無理をせず自分の力の80パーセント程度で頑張りましょうと声を掛ける。高齢のため様々なトラブルを抱えている参加者もいることを考慮し、 体操は、腹式呼吸を基本に、肩、腰、膝の痛み予防の体操.下肢の筋力、足指、くるぶしのストレッチ、骨盤を持ち上げる筋肉の強化を通しての転倒予防の体操、体重の1割の重さの頭部を支える首の筋肉周辺、舌の筋肉のストレッチを通しての嚥下障害予防の体操等,計画的、継続的に実施しています。 又、参加者の興味を維持させていくのも課題です。レク体操やゲーム、そして、これまでの人生で嬉しかったこと、苦しかったこと等思い出を語るメニューも入れました。経験談はおおいに湧き立ちました。この体験で、自分の人生を肯定的に振り返り、生きてきた意味をつかみとれれば、高齢者の生きる力にもつながる様に思います。 1時間30分の体操の中間に10分ほどの水分補給の時間を入れています。高齢者は喉が渇いた時にはすでに脱水の状態になっているからです。この時間にはほとんど毎回、放送大学の河本さんから送って頂いている「みやざき中央新聞」を読ませていただいています。前回の「忘れない、愛のために飛び立ったことを」は8月21日のお盆の後に読ませていただきました。 その日は暑さのためか、私は集中力に欠け原稿を車に忘れてしまいました。次回まで待ってくださいとお詫びを言うと、待っているから取って来てくださいと催促されてしまいました。 私は感情移入の激しいほうなのか、読みながらつい言葉を詰まらせてしまうことが多いのですが、聞いているほうも固唾を呑んで耳を傾け、読み終わると大きな拍手で答えてくれます。宮崎県から心温まるお話が茨城の高齢者の心を豊かに膨らませてくれているのです。週に一度ですが温かいひと時を過ごさせていただいています。 これまで体操士として続けられた力のもとは何であったのだろうか?
それは会場参加者の嬉しそうな顔であったり、時折頂く感謝の言葉であったり、そして何より自分も元気になれることではないかと思う。先の見えない福祉行政を嘆くより、これらの活動が地域の高齢者の老後の楽しみ作りに少しでも役に立てられればと思い続けている。現在、県と筑波大学で実施している統計調査では、要介護支援者の数が横ばいであるという。今後続く調査の結果が気になるところです。
指導士仲間も最近では若い(50代)のメンバーが加わり賑やかになっている、色々な価値観を持った人の集まりですが目的はひとつ、それぞれの考え方に折り合いをつけて、これからも無理をしないでやっていきたいと思います。