「放送大学と私」 : 堂本一成
定年後、これからの生き方を考えていたところ偶然テレビで放送大学を知り平成10年10月に入学した。38年間勤めた会社では、理工科系の仕事をしていたので、大学では変化を求めて文化系のコースを選んだ。もともと歴史と文学が好きだったので人間の探求を専攻した。授業科目は日本と外国の古代から現代にいたるまでの歴史と文学を中心とし、それに関連する科目を選択した。平成13年度に教養学部を卒業したが、その中で選んだ文化人類学で、移動民の都市人類学的研究とくに先住民の都市移動の問題に関心を抱いた。この問題をさらに詳細に研究してみたくなり、丁度平成14年4月に開設された大学院総合文化プログラム修士課程に入学した。大学院での研究テーマは、「都市における先住民とその社会」で、都市生活者となっているオーストラリアの先住民アボリジニに焦点を当て、彼らの都市生活の現状を土産品/絵画を通して考察することにした。
今日のアボリジニは、昔ながらの狩猟採集の生活を基盤としている人々と、ヨーロッパ系オーストラリア人との接触によって生活が大きく変わってしまった人々に大別できる。前者は人口が少ない辺境と呼ばれるオーストラリア大陸の北部海岸や中央砂漠地帯で生活しており、後者は主要都市が集中している大陸の南東部や南西部で暮らしている。このような生活環境の違いが多彩なアボリジニ・デザインを創りだしている。
指導教授の勧めもあり、入学したその年の8月に2週間にわたって、オーストラリアのシドニー市内で、土産品を売っている店を訪ねてアボリジニ土産品にどのようなデザインンが施されているか調査を行った。またこの調査と並行して、シドニー市内及び周辺のアボリジニ集住地を訪ねてアボリジニ絵画について面接取材を行った。これらの調査で明らかになったことは、アボアボリジニの伝統的な文化要素に都市的要素を融合させた新しいアボリジニ・デザインが見られたこと、そしてアボリジニであることのこだわりを強く表象していることだった。この研究の概要については、昨年6月茨城同窓会主催の「修士・学士論文発表会」で発表した。
この調査を行ってから8年以上経過した今日、またシドニーを訪れて、アボリジニのデザインなどにおいて、どのようなモチーフや意匠が施され、それが都市のアボリジニの特徴になっているか調べてみたいと思っている。