コミュニケーション調査法
コミュニケーション調査法
コミュニケーション調査法
2003年度 コミュニケーション調査法・授業目的と内容
今日、様々な情報技術が発展し、大量の情報が瞬時に世界を駆けめぐる現代社会において、コミュニケーション現象はますます多様化している。コミュニケーション調査が注目されたのは、20世紀に入ってからであり、巨大なマス・メディアの出現によって、これらのマス・メディアが人々に何(what)をもたらそうとしているか、また人々はなぜ(why)、マス・メディアを利用するのかという学術的な産業社会的な問いからコミュニケーション調査が始まった。
その後、テレビ、新聞、出版の発達とともに、マス・メディアは情報に対する主要な位置を確立した。コンピュータ技術を基にするインターネット、モバイル・メディアの拡大により、コミュニケーション情報は政治、経済、社会、文化など現代の中心に存在している。テレビ、新聞などのさまざまな調査データ、情報技術が発達し、インターネットの接触率、意識、動機を調べることが定着し、また世界各国の大学では各種の調査研究が絶え間なく行われている。
調査によって、我々は、“現実の世界”と“データの世界”との対比が可能となり、新たな効果・事実を実証的に発見し、メディアの効果、影響を、調査によって科学的に支持し、あるいは否定し、現実の世界への政策・対応とさまざまなメディア利用を提出することができる。
コミュニケーションの実証的研究方法は、1940年代のラザースフェルドらの『ピープルズ・チョイス』の研究以来、コミュニケーション現象の中に実在する情報を科学的にとらえ、分析・説明するため、これまで多くの調査研究が実施され、様々な調査手法や理論仮説が提示されてきた。
本講義では、コミュニケーションの分野を対象にして、以下の調査の企画と基本的理論と技法とプロセスを、講義から学び、さらに各自が自己の調査を実際に行うことにより、具体的に理解する。
これらを通じて情報社会に必要なコミュニケーションをマネージメントする調査能力と調査技術の向上とコンピュータ・リテラシーの修得を目的としている。
・[授業内容]
1 コミュニケーション調査の意義と範囲
2 メディアに対する接触調査 (1)映画・アニメ・出版、インターネットなどの接触順位調査
3 (2)テレビの視聴率調査――ビデオ・リサーチに見る――
4 メディア接触の動機調査 受け手はメディア接触(利用)によってメディアに対する要求を充足する――「メディアの利用と満足」理論による――
5 メディア効果調査と世論調査、行政調査、教育調査、国際比較調査
6 コミュニケーション調査の基本プロセス
7 コミュニケーション調査の実証的手法の種類
8 調査企画書・報告書の基本様式
9 コミュニケーション調査企画の設計:調査課題の発想と設定、図式モデル
10 コミュニケーション調査企画の設計:仮説の作成
11 調査指導1 各自のテーマの設定、テーマは、各自の関心で選択できる
12 先行研究・調査関連資料の収集
13 実証的調査と調査票の構成
14 コミュニケーション調査における受け手の意識調査の基軸
15 調査指導2 各自の調査票原案作成の指導
16 調査手法の特徴
17 調査指導3 各自の調査票完成の指導により調査の実施に入る
18 非体系調査手法
19 調査データの集計と分析
20 調査結果の統計分析……EXCEL
21 データ集計結果の分析(データの背景からの知見の読み取り)
22 調査指導5 各自の調査表作成の指導
23 調査論文・報告書のまとめ方
・[参考書]
D・マクウェール 時野谷浩(訳) 『マス・メディアの受け手分析』 誠信書房
P・F・ラザースフェルド(他) 有吉広介(監訳) 時野谷浩(他訳) 『ピープルズ・チョイス』 芦書房
鈴木裕久 『マス・コミュニケーションの調査研究』 創風社
図式モデル
時野谷の研究で用いた理論的枠組み
文献資料
時野谷浩、田中伯知 (1990) 「児童・生徒のマス・メディアの利用と満足に関する国際比較研究」 日本新聞学会配布資料
時野谷浩、田中洋 (1989) 「児童・生徒の広告への態度・評価・行動に関する日米比較研究」 『広告科学』 No.20.
時野谷浩 (1986) 「老人視聴者の動機・充足に関する研究――利用満足理論による検討――」 『社会老年学』 No.23, pp. 52-64. 参照
講義関連URL
時野谷浩研究室(HP)時野谷ギャラリーの中の
時野谷浩 Tokinoya Hiroshi Home Page日本と世界のURLブック
【日本】 TV局 ラジオ局 新聞社 出版社 雑誌社 映画 通信社 広告代理店 世論・市場・メディア調査社
【世界】 TV局 ラジオ局 新聞社 出版社 雑誌社 映画 通信社 広告代理店 世論・市場・メディア調査社
調査表見本
エリア 調査日200X年 月 日 調査員
コミュニケーション行動についての調査
ただいま日本人のコミュニケ―ション意識を探るために、この調査を行わせていただいております。頂いた貴重なご意見は、コミュニケーション行動についての研究を進めるための基礎資料にしたいと存じます。ご多忙の中、恐縮でございますが、なにとぞよろしくご協力のほどをお願い申しあげます。
東海大学 文学部 広報メディア学科研究室
教授 時野谷 浩
TEL XX-XXX-XXXX
Email tokinoya@vc.kcom.ne.jp
200X年X月
Q1.次に、日常時々起るような事柄があります。あなたは、どのようなときに困惑されますか。
次にある1から30の項目それぞれについて、「4.非常に困惑する」から「1.全く困惑しない」までの4段階で、あてはまるものをお答えください。 (1~30の項目について、それぞれ一つずつ○ )
4.
非
常
に
困
惑
す
る
3.
ど
ち
ら
か
と
い
え
ば
困
惑
す
る
2.
ど
ち
ら
か
と
い
え
ば
困
惑
し
な
い
1.
全
く
困
惑
し
な
い
1、大勢のいる中で携帯電話で大事な話をしなければなりません。あなたの周りにはあなたの声が聞こえる人が数人立っています。
4
3
2
1
2、たまたまあなたは、おぼれかかった子供を助けることになりました。その結果、記者があなたの写真を地方新聞に載せたいと言い張っています。
4
3
2
1
3、あなたは昔の友人に会いましたが、名前を思い出せません。
4
3
2
1
4、友人の家にいて、たまたまある部屋に入り、服を脱いでいる人に会ってしまう。
4
3
2
1
5、列車の半分が空いています。他の乗客の一人が突然独り言を言い始めました。
4
3
2
1
6、仕事をしていて汗をかきましたが、汗を流す前に買い物に行かねばなりません。
4
3
2
1
7、レストランでスープをズボ(スラックス)にかけてしまう。
4
3
2
1
8、洗濯をするのが遅くなって、夕方なのに洗濯物がまだ乾かずに、物干しざおにぶらさがっています。
4
3
2
1
9、テレビの記者がテレビカメラをかついで、あなたのほうに近づいています。
4
3
2
1
10、数人で立ち話をしていると、噂にのぼった人が実はずっと聞いていて、話に入ってきます。
4
3
2
1
11、誰かに他の人の面前でからかわれる。
4
3
2
1
12、アパートで、隣の騒音が聞えます。
4
3
2
1
13、誰かと偶然に通りで出会いましたが、あいさつすべきかどうか解かりません。
4
3
2
1
14、友人たちに冗談を言いましたが誰も笑ってくれません。
4
3
2
1
15、お昼ごろになって靴を磨いていないのに気付く。
4
3
2
1
16、誰かを間違った名前で呼んでしまう。
4
3
2
1
17、誰かに間違った名前で呼ばれる。
4
3
2
1
18、週末にパソコンがこわれてしまって、どうしても友人に借りに行かねばなりません。
4
3
2
1
19、お店の人からまちがって万引きとされてしまう。
4
3
2
1
20、電話をかけようとしてまちがった番号にかけてしまう。
4
3
2
1
21、列車で車掌が切符の点検に来ましたが、自分の切符が見つかりません。
4
3
2
1
22、劇場にいて風邪をひいているのですが、ハンカチがありません。
4
3
2
1
23、デパートでたまたま高価なクリスタル製品にぶつかって落として割ってしまう。
4
3
2
1
24、突然客がきたのですが、あなたのアパートの部屋がちらかっています。
4
3
2
1
25、あなたはコンサートに友人ときています。友人は眠っていびきをかき始める。
4
3
2
1
26、誰かに他人のいるところで平手打ちをされる。
4
3
2
1
27、スーパーでいっぱい買い物をしてレジスターにいます。そのときお金がないのに気づく。
4
3
2
1
28、昔の友達と同じ部屋にいるのに気づいたので、うれしくなって声をかけようとしたら、こちらにあまり眼もくれず行ってしまう。
4
3
2
1
29、列車でトイレの扉を開けたら、誰かが扉の鍵を忘れて中に入っています。
4
3
2
1
30、人通りの多い通りの真中で、突然すべって、うつぶせにばったり倒れてしまう。
4
3
2
1
Q2.あなたは、次の意見についてどう思われますか。1~7のそれぞれの項目について、
「4.非常にそう思う」から「1.全くそう思わない」までの4段階で、あてはまるものをお答えください。
(1~7の項目について、それぞれ一つずつ○ )
4.
非
常
に
そ
う
思
う
3.
ど
ち
ら
か
と
い
え
ば そ
う
思
う
2.
ど
ち
ら
か
と
い
え
ば そ
う
思
わ
な
い
1.
全
く
そ
う
思
わ
な
い
1、人間関係では察しが大切である
4
3
2
1
2、人間関係では遠慮が大切である
4
3
2
1
3、恥かしいときには沈黙する
4
3
2
1
4、街頭でテレビ局のレポーターにインタビューを受けたとき沈黙する
4
3
2
1
5、沈黙は真実を表している
4
3
2
1
6、社会的に周りの人から受け入れられるためには沈黙していた方がよい
4
3
2
1
7、反発したときに沈黙する
4
3
2
1
Q3. あなたは、小泉首相の国会での答弁を支持しますか。
(ひとつだけ○ )
4非常に支持する 3どちらかといえば支持する
2どちらかといえば支持しない 1全く支持しない
Q4.世間の大多数の人は、小泉首相の国会での答弁を支持していると思いますか、思いませんか。
(ひとつだけ○ )
4非常に支持している 3どちらかといえば支持している
2どちらかといえば支持していない 1全く支持していない
Q5.テレビ局のレポーターが小泉首相の国会での答弁について街でインタビューしていたとします。あなたは、このことについて話したいと思いますか、思いませんか。
(ひとつだけ○ )
4非常に話したい 3どちらかといえば話したい
2どちらかといえば話したくない 1全く話したくない
F.最後に、あなたのプロフィールをお教え下さい。(それぞれひとつだけ○)
F1.性別
1男性 2女性
F2.年代
1. 20歳代 2. 30歳代 3. 40歳代 4. 50歳代 5. 60歳代
F3.最終学歴※「在学中」は卒業扱いとして、該当するものに○
1.中学卒 2.高校卒 3.短大卒 4.大学卒
5.専門学校卒
=ありがとうございました。=
マス・コミュニケーション論
授業目標
21世紀を迎え、現在の情報環境は従来のマス・メディアに加え、コンピュータを中心とする電子メディアが急激に浸透し、細分化し、高度化している。マス・コミュニケーションが、送り手、メディア、受け手、情報、効果を基本的要素とし、技術をもちいて多くの受け手に情報を伝達するプロセスであるとするならば、それは絶えず技術革新の影響を受けている。技術とは運用のプロセスである。すなわち技術の中にはプロセスとしてのコミュニケーションの要素を含んでいる。
本講義では社会的コミュニケーションを、従来のパーソナル・コミュニケーション、マス・コミュニケーションに加え、多くの技術と研究が重ねられているコンピュータを用いたデジタル(ネットワーク)コミュニケーション( CMC )の形式として三つに分け、それぞれの機能と関連性を見てゆくことにする。
さらにメディア技術がコミュニケーション形態を変え、人々や社会に及ぼす変化の歴史を学んでゆく。人間の意志決定、感情の交流に対面的なパーソナル・コミュニケーションに勝るものはない。しかしマス・コミュニケーションは一方向性、一(メディア)から多数(受け手)への情報の同時的な流れに特徴がある。現在、マス・コミュニケーションの機能は重複しまたは独自性を発揮しながら、マス・メディア時代を確立している。
現状進行しているコンピュータによるコミュニケーション (CMC) 革命は、その最大の本質を双方向性におく。マス・メディアは情報としての従来の機能を維持しながら電子的な双方向的コミュニケーション化の機能を取り込み、 CMC の分野では情報のマス・コミュニケーション化が進んでいる。またCMCはメディア・リテラシーの重要性を増加させた。本講義を通じて現代情報社会の中のコミュニケーションを理解し、社会の中枢にメディア・コミュニケーションが存在するという眼を養うことにある。
優秀答案見本
日本の情報格差