高橋進(インドネシア研究)
笹岡さんからインドネシアへ赴任することになったと声をかけられたのは、確か広島大学で開催された日本熱帯生態学会大会だったと記憶しています。当時ちょうど、推進費や科研費の研究で足繫くインドネシアに通っていた私は、ボゴールに立ち寄るたびにCIFORに赴任した笹岡さんとお会いしていました。ご紹介いただいた関連分野の研究者と一緒に、CIFORのキャンティーンでディスカッションもしました。さらに夜には、私がJICA生物多様性プロジェクトリーダーとして在住していた頃とすっかり様変わりしたボゴールのレストランで、互いの研究話や情報交換、そして家族の話題などで、楽しく有意義な時間を過ごしました。
そんな中で笹岡さんから、超自然的強制に基づく資源管理をめぐる4象限のタイプを考えているが、そのうちの一象限のイメージや例示が湧かず悩んでいると相談がありました。そこで、この象限にかかる日本を含めた世界の事例や参考文献を紹介しました。保護地域ガバナンスと地域社会、自然の聖地(Sacred sites)や巨樹信仰などを調べていた私にとっては造作のないことでしたが、笹岡さんはたいそう喜んでくれました。この想い出追悼文を書くに当たり、笹岡さんとのメールのやり取りを見返してみると、私からの指摘や資料を参考にし、在地の資源管理制度に関して4象限図を含んだ英語論文を執筆する予定ともありました。その後上梓された『資源保全の環境人類学』(コモンズ)のあとがきには、多くの先生方への謝辞とともに私の名前も載っていて、かえって恐縮した次第です。
その後、北大に移られてからも、私からは第1回アジア国立公園会議(仙台)の開催・エントリー案内、笹岡さんからは第14回国際民族生物学会(ブータン)の開催情報など、メールでの情報交換も続きました。ブータンを含めて各地の学会などでお会いしたりと交流も続きました。笹岡さんからの情報のおかげで参加したブータンでの学会発表合間の寺院周遊などは、私にとって終生忘れ難いものとなっています。
私が訪札した際には、札幌の街でおいしい北海道料理とお酒を共にしたのは言うまでもありません。しかし、今や再び楽しいお話とおいしい料理を共にすることはできなくなってしまいました。笹岡さん、研究への示唆とたくさんの想い出をありがとうございます。心よりご冥福をお祈りいたします。