北大初代院生として、感謝を込めて
張強(北海道大学に着任されてから初めてご指導いただいた大学院生(留学生))
笹岡先生の突然の訃報に接し、ただただ驚き、深い悲しみに包まれております。心よりお悔やみ申し上げます。
私は先生が北海道大学に着任されてから、初めてご指導いただいた大学院生でした。先生はいつも温かく、そして大変丁寧に導いてくださいました。先生のご専門であるインドネシアではなく、私の関心のある中国雲南省でのフィールドワークを快く応援してくださり、出発前には聞き取り方法や研究の視点について一対一でご指導いただいたこと、今でも胸が熱くなります。
特に忘れられないのは、中国雲南省でのフィールドワークに向かう際のことです。目的地である昆明駅で無差別殺傷事件が発生し、先生は私の安否を第一に考えてくださいました。事件のニュースが出た時、私と直接連絡が取れなかったため、周りの中国人留学生、さらには私の中国にいる家族にまでコンタクトを取り、安全を確認しようと尽力してくださったのです。その熱心なご対応に、私は心から感動しました。
修論執筆の期間中、行き詰まるたびに、先生は何度でも私の話に耳を傾け、夜遅くまで一緒に議論を重ねてくださいました。私なりの論点や考えを引き出してくださったおかげで、大変助けられました。先生の真摯な研究姿勢と、学生の可能性を信じ、粘り強く向き合ってくださるそのお姿は、私の社会人としての基盤を築いてくださったと確信しております。
先生との思い出は、研究室の中だけにとどまりません。合宿や飲み会などを通してプライベートな交流もありました。卒業を前に、送別会を兼ねてご自宅に招いていただき、ご家族の皆様とともに温かい食卓を囲んだことは、最後の会となり、私にとってかけがえのない思い出です。研究者としてだけでなく、優しい夫、温かいお父さんとしての先生のお姿に触れ、そのお人柄の素晴らしさを改めて感じました。
先生から受けた、消費者が生産地の環境や社会に与える影響についての授業も、深く心に残っています。私は今、香料会社で責任ある調達に携わっており、原料の生産現場で何が起きているかを調査しながら、持続可能性の観点から原料やサプライヤーを選定しています。パーム油のRSPO認証品の購入にも関わっており、先生が最後に書かれた共編著『誰のための熱帯林保全か』を参考に、先生に思いを馳せながら日々の仕事に生かしております。
先生の誠実な人柄、学問に向き合うぶれない姿勢、そしていただいたたくさんの温かい教えを胸に、先生の北大初代院生として誇りを持って人生に真摯に向き合っていきたいと思います。
笹岡先生、本当にありがとうございました。
どうか安らかにおやすみください。