私は11月9日に滋賀県長浜市余呉町で行われたヤマカブラの収穫に参加してきました。焼畑には主に適地、伐採、火入れ、間引き、収穫の作業があるそうで、前回私が参加した火入れの後に間引きの作業があり、今回の収穫の作業になります。
私が現地に着いたのは10時頃で、まず始めにヤマカブラの収穫を行いました。ヤマカブラが植えられているところは右下、右上、左下、左上の4つの区画に分かれており、区画ごとに違う型のヤマカブラが植えられています。右下の区画から順に、丸型、台形、交雑種、扁平型となっていました。
右上から区画ごとに順にとっていき大体1区画10分前後で終わりました。今年は例年に比べて不作だそうで、本来は収穫作業にもっとかかるそうです(写真1 )。
写真1 収穫する前のヤマカブラ
採ったヤマカブラは斜面の下にまとめて、そこから大きさや形等をもとに選別していきます。まずはヤマカブラを型ごとに分けていきます。基本的には取った区画ごとに型が分かれているのですが、境界線近くにある個体は交雑してしまっているものもありました。型ごとに分けた後は種とり用のものと、参加者が持ち帰るもの、地元の方に送るものに分けていきますが今年度は不作だったため地元の方に送る分はありませんでした。
まず種とり用に良い個体を選んでいきます。良い個体とは葉が大きすぎず、根っこの毛が鋭くこわばっている個体のことだそうで、種とり用のヤマカブラは真ん中より下で半分に切って、上半分を植えなおします。この切る作業を下切りと呼ぶそうです。参加者が持ち帰るようのものを3つ程選んで残りの小さくて持ち帰れなそうなものは葉っぱを食べたいという方のものとに持っていくことになりました。
次に収穫したヤマカブラの総量を測る人と畑の周りを囲む電柵を外す人に分かれて作業しました。今年の総量はおよそ40キログラムで収穫量の良い年の7分の1程度だそうです(写真2)。
写真2 収穫したヤマカブラ
最後に焼き畑を囲む電柵を外しました。この電柵は獣害から作物を守るために設置されています。このおかげで畑全体が食い荒らされるということはありませんでしたが一部ウサギにかじられているヤマカブラもありました。また周囲には鹿のフンがあり野生の鹿やウサギがすぐ近くに生息しているということが実感できました。電柵を外した後はお昼を食べ、片付けをし、今回の収穫は終わりとなりました。
測量のところでも述べましたが今年は収穫量の良かった年に比べて7分の1程度の収穫量でここ数年1番の不作だったそうです。今回の収穫ではどうして今年が不作だったのかについて様々な意見が交わされていました。その中で大きな原因とされていたのは異常気象でした。特に残暑が長引くと作物に大きな影響を与えるそうです。
昨年もあまり収穫量が多くなかったそうなのですが、その際に日陰になっている部分のヤマカブラは問題なくとれたそうです。強い日差しによる水の蒸発や、雨の不足は水不足を起こし不作につながります。今回焼畑をした場所も中の土が乾いていました。近年の異常気象はここの焼き畑にも影響を与えていると考えられ、今後この問題にどのように対応していくかが来年度以降の課題となります。
また今年は黒斑病という植物の葉にみられる病気が発生していました(写真3)。基本的にこの病気は湿っぽいまたは葉が密な場所で起きやすいという特徴があるそうなのですが今年焼畑を行った場所はそのどちらの特徴にも当てはまらずどうして黒斑病が流行したのかが大きな疑問点として残りました。
写真3 黒斑病になったヤマカブラの葉
今回収穫作業に参加して改めて作物を育てることの難しさを感じました。今年の火入れは例年に比べてかなりうまくいったと聞いていたので沢山ヤマカブラができるのかなと考えていました。
しかし実際にはそんなことはなく気候等様々な条件に左右され、どうして不作だったのかもすぐに解明することが難しい現実を知りました。また「上手くいかないから面白い」とおっしゃっていた大石先生の言葉が印象的でした。
火入れと収穫を通し、実際にやってみないと分からない、実査に現地に訪れてみないと分からないという基本的なこの2つのことを実感しました。今後フィールドワークを行っていく身にとしてこの2つのことは忘れないでおきたいと思います。そして前回の火入れから含めてこのような機会を与えてくださった大石先生と、様々なことを教えてくださった焼畑プロジェクトに参加された方々に感謝したいです。
鈴木玲治・大石高典・増田和也・辻本侑生 (2022) 『焼畑が地域を豊かにする 火入れからはじまる地域づくり』実生社.
最終更新:2024年11月23日