「マングローブ紀行」

by 山田憲藏

(オセアニア地域専攻、2016年度入学)

2018年9月から、台湾・桃園市の開南大学に交換留学で滞在している。台湾での留学では、普段は英語で行われる会話などの授業や中国語を学ぶことのできる授業を取りながら、大学の寮で生活している。とは言っても、寮のキッチンには炊飯器と電子レンジしかないので、食事は外で食べてくることがほとんどである。日本で台湾に住んだことのある人に外食文化であることは聞いていたとはいえ、徹底していて少し驚いた。

台湾での留学が始まり、2か月ほどたった11月のある日、授業が休講になったので、ジオパークとマングローブ林の観光をしようと思い、ひとりで部屋を出発した。ジオパークとは、日本ジオパークネットワークによると、『「地球・大地(ジオ:Geo)」と「公園(パーク:Park)」とを組み合わせた言葉で、「大地の公園」を意味し、地球(ジオ)を学び、丸ごと楽しむことができる場所』とされている(注1)。

来てからずっと思っていたのだが、バイクもバスも車はもちろん運転が荒い。それに加えて、道路が日本に比べると、ガタガタしているような気がする。乗り物酔いしやすい体質なので、ジオパークに着く頃にはへとへとである。ジオパークに着く前に、漁港のような場所に着いたので、日本ではあまり見ることのない海産物を見ることができた。カニの保管方法がかなり雑だった。狭い容器の中に数十匹のカニが、何重にも重なって入っている様子は、かわいそうなような気もした。野柳地質公園というジオパークに今回は行ったのだが、かなり広く、回るのに時間がかかってしまった(写真1)。このジオパークでは、化石があちこちにあったり(写真2)、風や水の影響で奇妙な形の岩を見ることができたりした。

写真1: 野柳地質公園の看板。

写真2: このような化石が多く見られた。

ジオパークは、日本にもあって、この野柳地質公園もいくつかの日本のジオパークと提携を結んでいるようだった。料金は80元(2019年3月3日のレートで約290円)でかなり安価な入場料である。写真のように海のすぐそばであることに加えて、奇妙な形の岩は壊れやすい、いくつかはあと数年で壊れてしまうとされているため、警備員が多数いて、海の近くに行ったり、岩に登ったりすると、笛を鳴らされて注意される。実際に、何度も笛の音が聞こえていた。下の写真のように入ってはいけない場所も赤い線で決まっている(写真3)。面白い風景なのだがその赤い線自体が、景色を乱しているのは残念だった。

写真3: 赤い線より先は立ち入り禁止になっている。

長年の風や水による浸食は岩だけではなく地形そのものにもみられた。水による浸食がみられたり(写真4)、水たまりに入った土砂などが、奇妙な形の穴のようなものを作ることもあるらしい(写真5)。ここのジオパークでは、このような奇妙な地形を多く見ることができた(写真6)。

写真4: 水食。

写真5: 世にも奇妙な穴。

写真6: ジオパークの見晴らし。

その後に、紅樹林駅(紅樹林がマングローブを意味する)へ向かい、日本の本州ではめったに見ることのできないマングローブ林を見に行った(地図)。

地図: 紅樹林駅の地図。下の方の赤と青の交わっている場所が台北駅で、紅樹林駅までは17駅あり、所要時間50分でたどり着く。

そのマングローブ林に入る場所はとても見つけにくく、入ってみたが観光客の姿もほとんど見当たらなかったので、やはりそれほど有名な場所ではないようであった。右下の写真のようにマングローブ林のキャラクター(写真7)もいたのだが・・・。林の中は遊歩道のようになっており、マングローブ林の中を歩くことができた(写真8)。歩道の方まで突き出している枝もあり、近くでマングローブの木を見ることができた。マングローブの花の跡のようなものや、実のようなものが見られた(写真9)。場所によっては、地面から生えているマングローブを見ることができることもあり、地面の様子も見ることができたが、生き物の姿をこの日は見ることができなかった。環境コンサルタントの報告記事によると、いる事は確認されているようであった(注2)。

写真7: マングローブ林のキャラクター。

写真8: マングローブ林内の様子。

写真9: まだ未発達なマングローブの果実。

干潟のような場所(写真10)もあり、そこでは、おそらくまだ成長途中であろうマングローブ林が見られた。そこで遠くに水鳥の姿を見ることができた(写真11)。今回は暗くなってしまったので、ここまでで探索は終わりにした。

写真10: 干潟のような場所。

写真11: 水鳥。画像をかなり拡大したため、画質が粗くなってしまった。

今回の旅で、初めて実際にマングローブを見ることができ、日本ではなかなか見ることのできないものを見ることができてよかった。マングローブは常に摂氏20度以上の気温があるような場所にしかないイメージだったので、台北にあることは意外に思った。マングローブ林独特の生態系などは今回に関しては見ることができなかったが、水鳥がいる事だけはわかった。後で調べたところ、博物館のようなものがあるらしいので、そちらも次回は行ってみようと思う。

(注)

  1. NPO法人日本ジオパークネットワークホームページ記事「ジオパークとは」による定義。URL: http://www.geopark.jp/about/ (2019年3月25日閲覧)
  2. 本堀雷太「淡水河マングローブ林(紅樹林自然保護区)観察レポート」 URL: http://kankyo-kurouto.main.jp/doc/1407/report_taiwan.pdf (2019年3月25日閲覧)

最終更新: 2019年3月25日