本研究は、日本のアニメ・漫画の二次創作における「絵師」の絵柄の特徴と相互影響を、文化系統学を用いて分析することを目的とする。ドラゴンボールの二次創作を行う絵師32名を対象に、彼らのイラストを形質ごとに分類し、系統樹を作成して絵柄の系譜を明示した。また、そこにいくつかのアンケート結果を反映させることで、これまでの考古学的な利用がされていた文化系統学に生者の声を適用させるという試みも行った。結果として、アンケートにて「原作」や「アニメ」に影響を受けたと答えた絵師らは系統樹上でもそれぞれ密集しており、データ化したイラストの形質と絵柄の関連性に一定の妥当性があることがわかった。 SNSやインターネットを介した相互影響も系統樹上に現れ、絵師間での技術的・解釈的差異が枝分かれとして表れた。本研究では、イラストから得られたデータと絵師の声を組み合わせることで、そのデータから作られる系統樹の有用性を示すことができた。また、これまでの文学史・美術史等で得られてきた「推論」からより実情に沿う妥当性を持った結果となり、新たな文化系統学的な方法論の端緒となったのではないであろうか。