本論⽂では“本物の”イタリア料理とはなんなのか、という問題意識を元に考察を⾏う。ここでイタリア料理とはイタリア国内発祥の料理全般のことを指し、イタリア⼈とは現在の居住地にかかわらず、イタリア国内にルーツを持つ⼈々のことを指す。そしてイタリア⼈によって認識されている姿のそれを“本物の”イタリア料理とする。 また、⾷⾏動とは⾷を取り巻くあらゆる⾏動全てを指す。 先⾏研究では⼀般論としてもイタリアという国においても⾷⾏動とアイデンティティーとの繋がり、⾷⾏動の地域性の強さ、またイタリア⼈の愛郷⼼の強さは明らかにされている。 従って、イタリア料理の要素の提案までされてはいるが、イタリア料理の多様性や本物のイタリア料理であるための条件を明らかにした研究はない。
そこで本論⽂では、本物のイタリア料理を明らかにするために、イタリア料理の多様性を明らかにする事、イタリア料理であるための条件を明らかにする事を試みた。 イタリアの多様性についての調査やイタリア料理と外国との関わりを背景に、著者がミラノに滞在していた2019年1⽉から10カ⽉間のうちのイタリア⼈の⾷⾏動についての調査内容や⾷事ダイアリーのフィールドワークを分析した。分析より、 イタリア⼈がイタリア料理と関わる際には 1)イタリア料理には様々な種類がある事 2)ある特定の地域と結びついており、愛郷⼼を注ぐ対象である事 3)⼟地や時代を超えて⼈とのつながりを作る事以上の3 つに関して、強い関⼼を抱く傾向があり、それぞれの要素が複雑に絡み合っている事がわかった。
以上の結果から、イタリア料理の持つ 多様性、地域性、⼈との繋がり 以上3つの要素を本物のイタリア料理の条件として⽰す。 本論⽂は史実など、イタリア全⼟を対象にしているものの、北イタリア、ミラノを拠点とした研究であるため、他の地域を拠点とした研究についての研究など、今後の研究が期待される。
キーワード:イタリア料理、カンパニリズモ、⾷⾏動、多様性