【2022年度卒業論文】
日本でゲイはどう見られてきたか
~ 表象と恋愛、ゲイ男性のライフヒストリー ~
How the gay have been regarded in Japan:
The perspective of representation, love, their life histories
How the gay have been regarded in Japan:
The perspective of representation, love, their life histories
世界各国で同性婚の合法化が進む中、現在でも日本では合法化されておらず、レズビアンやゲイと言った同性愛者が異性愛者と同じ権利を享受できているとは甚だ言い難い。しかし一方で近年ではゲイやレズビアンであることを公表して活動する Youtuber がいたり、ゲイ男性以外も入ることのできるゲイバーが増えてきていたりと、市民がゲイを目にする機会は確実に増えている。ゲイ男性がマイノリティの「可哀そうな存在」として語られる以上のことが、ゲイ男性自身によって起こされている。また同時に、そうした表舞台で彼らが自らの恋愛について語るようにもなってきている。こうした時代の変化は重要なトピックとして取り上げる意味があるのではないかというのが、本研究の動機である。ゲイ男性がどのような表象の歴史をたどり、彼らがどのような恋愛をしているのかを明らかにしていきたい。その際マイノリティというカテゴライズを通して特別視して検証するのではなく、あくまで様々ある恋愛形態の一つとして捉えて検討していくことに注意を払い、検討を進めていく。
第一章では、森山至貴著『LGBT を読みとく——クィア・スタディーズ入門』(2017、ちくま新書)や風間孝・河口和也共著『同性愛と異性愛』(2010、岩波新書)を中心にゲイのカテゴリーを探るとともに本研究全体の基本となるゲイの定義を図る。第2章ではゲイの表象、すなわちゲイが周囲にどのように語られてきたかの歴史を探っている。続いて第3章では先行研究をもとにゲイ男性の恋愛がどのように語られてきているのかを検討し、続いて新宿のゲイバーでの調査において得たゲイ男性の、実際の恋愛の実態を述べることで第 4 章へとつなげている。そして終章としての考察を、第5章で行っている。
第2章以降では、ゲイ男性が時代の経過とともに昨今は社会の中で目に見える存在になってきているのではないかという仮説のもとで検証を行っている。しかし、テレビや YouTube をはじめとしたメディアや Twitter などの SNS を通してゲイの存在が世間に見えやすくなってきている反面、そうしたメディアによってゲイに対するイメージが、例えばゲイは全員オネエであるといったように、固定化される危険性もはらんでいる。ゲイが世間にその存在を見せるようになったということが必ずしもポジティブな面ばかりではないことも事実だ。また、ゲイ男性に焦点を当てた文献はその大半が当事者であるゲイ男性によって書かれており、ゲイかどうかが定かでなくとも男性によって書かれていることがほとんどであるのが現状だ。
ここで異性愛者の女性である私がゲイ男性に関する検証を行うことで新たな視点をもたらせる可能性がある。というのも、ゲイ男性がゲイのことを述べるというのはすなわち、ゲイのコミュニティ内のみで行われたアクションに過ぎないともいえるからだ。異性愛者が大半を占める世の中だが、いざ自分のまわりにゲイ男性が現れたとき彼らに対する正しい知識と理解があることは重要だ。ゲイコミュニティの外からの視点が未だに稀有である今、この論文が当事者以外の新しい視点、“異性愛者女性”の視点の下でゲイ男性を分析することで、セクシャリティを超えたゲイ男性の理解へつながる一助となれば幸いである。