外国人技能実習制度は、1993年に日本の「人づくり」国際援助活動の一環として設立され、国内の技能実習生の数は、令和4年時点で、およそ32万人にも上っている。国際協力の推進という当初からの方針がある一方で、技能実習生が日本国内で深刻化する人手不足の補填に利用されているという指摘は多く、先行研究やメディアにおいて、労働、地域社会との共生、人権侵害、失踪といった数多くの問題が取り上げられている。
技能実習生の実態と彼らが抱える問題をよりミクロな視点から明らかにするべく、筆者は、技能実習生を対象として、暮らし、仕事、宗教・文化に関する聞き取り調査を行った。さらに、技能実習生が実習を行っている介護施設においてフィールドワークを行い、実際の彼らの仕事や生活の様子、周囲の人々との関わり合いなどを観察した。これらの聞き取り調査とフィールドワークを通して、技能実習生の実態に関する重要なポイントを五つ抽出することができた。一つ目が、宗教面における技能実習生の柔軟性。二つ目が、技能実習生が仕事以外で日本人と関わる機会が少ないということ。三つ目が、監理団体や受け入れ企業の日本人と技能実習生が信頼関係を築くことの重要性。四つ目が、監理団体や実習実施者の質にばらつきがあり、また、技能実習生の出国前に、受け入れ企業についての情報へのアクセスが少ないということ。そして五つ目が、外国人技能実習制度の方針と技能実習生のキャリアプランとの矛盾である。またさらに、最終章では、これらの実態と技能実習生が抱える問題を踏まえた上で、外国人技能実習制度をどのように改善してゆけるか、筆者なりの提言を行った。