都市農業とは、市街地及びその周辺の地域において行われる農業である。世界的に都市農業は「都市住民がより豊かな生活を目指して長期的に取り組まれる農業であり、都市にとっても望ましい」という認識がここ30年で高まっている。イギリスやドイツなどで都市農業が、社会問題の解決の一助となっている事例も見て取れる。
日本でも都市農業にまつわる制度改正が行われ、高度経済成長期の「都市に農地は不要である」という認識は、「都市農地は保全・振興すべきものである」という認識に変化している。また企業やNPOなど多様な都市農業の担い手を積極的に認めようとしている。一方で、行政が実施してきた都市住民の農地に対する意識調査や、都市住民に開かれた農地のあり方を論じる研究には、若年層の農地に対する意識を理解しようという視点が不足している。
本研究は、多世代・多様な都市農業の担い手を認めていこうとする潮流の中で、今後都市農業の担い手ともなりうる若年層の視点を踏まえて都市農地のあり方を考えることが目的である。東京の若年層が農地に何を求めているかを調査し、東京都内の農地のあり方を考察する。調査の方法として、都内在住の農業に関心のある大学生を中心にインタビューとアンケートを行った。インタビューでは都市農地での活動経験のある学生とない学生2人を対象とし、比較分析した。アンケートでは、農業体験を都外で行う「都市農業参画予備軍」の学生28人を対象にし、彼らの身近な農地へのニーズを調査した。
得られた結論としては、農業経験のある学生は身近な農地に関わりたい学生が約65%を占めるが、彼らは身近に農地があることを認識していないことが分かった。一方、身近な農地で本格的に農作業したい学生も多く、農家の人の農地利用の目的と重なる部分があった。さらに彼らは農地でコミュニティを築き、様々な人と関わることにも積極的であった。またインタビューでは都内農地で活動をしている事例が、まさに様々な人が関わる場となっていることもわかった。つまり学生が身近な農地に求めるのは、生産機能とサードプレイス的場であると言える。(サードプレイスとは、「社会的な、コミュニティの基盤を提供すると共にコミュニティを謳歌する場」である。)
また学生の求める身近なサードプレイス的農地は、多世代・多様な担い手が都市農地に参与するために重要な農地のあり方の一つであると考える。本論文の全体考察ではいかにサードプレイス的農地を作り出していくかを考察した。
キーワード:都市農業、サードプレイス的農地、宅地と農地の混在