従来、観光は移動を前提に議論されてきており、日常や労働と切り離されたものとして説明されることが多かった。特に途上国における観光には、不均衡な関係性などを理由に批判がなされてきた。昨今のコロナ禍において様々な面でのオンライン化が進んでおり、オンライン化やデジタル化には賛否両論がある。オンライン化の一つとして旅行業界ではオンラインツアーという新たな取り組みを行う動きが活発になっている。オンラインツアーはまだ広く普及しているとは言えず、収益を上げることも難しいと指摘されており、付加価値をつけ他者と差別化することが必要であると言われる。
本論文では「大学の世界展開力強化事業(アフリカ)」によって2021年8月から9月にかけて行われた「ルワンダ・オンライン・スタディツアー」とスピンオフ企画である「おまけ企画」、筆者がルワンダの大学と繋いで独自に2021年12月に開催した「東京オンラインツアー」という三つのオンラインツアーに焦点を当てる。これらのオンラインツアーへの参与観察と、参加者や関係者へのインタビュー調査やアンケート調査を通して、これら一連のツアーの果たす役割と可能性を明らかにする。
調査からは、これらのツアーの特徴として、双方向性があること、即時性があること、リアリティがあること、手軽なこと、手頃なこと、安全であること、交流が出来ることが挙げられ、それらが参加者の満足に繋がったということが明らかになった。特徴と関連し、ルワンダスタディツアーの持つ機能-交流の契機になること、交流によって参加者のまなざしが変容し得ること、ガイドもエンパワーされ得ることが明らかになった。一方で、途上国における観光に対して不均衡な関係性があるという批判がなされてきたが、オンラインツアーにおいても様々なアクター間で不均衡な関係性が見られた。オンラインツアーは記憶に残りにくく非物理的であるというような、デメリットと受け取れる特徴もあることがわかった。
調査対象としたオンラインツアーは、従来の観光と全く同じものでもなければ、全く異なるものでもない。参加者の満たされていなかった需要を満たすことが出来たという面では、渡航を伴うプログラムの単なる代替策であったわけではない。今後の交流の発展に繋がるような多様な可能性に開かれたツアーであり、経年的な観察・研究が求められている。