2020年度、東京外国語大学の学生団体は、コロナ禍という未曾有の環境下で「社交の場」としての役割を大きく奪われた。数多くの規制の中で大学の団体がいかに奪われた「社交の場」としての役割を果たしたのか、そして筆者のように2020年度を大学1年生として過ごした学生が、当時どのようにして大学という新しい環境や大学以外の場所で交友関係を築いていったのかを明らかにすることを目的とする。春学期は主にオンライン形式で活動が行われ、団体は新入生を迎え入れつつ、交流機会を提供しようと試みた。一方、秋学期には対面活動が一部再開され、活動形式が大きく変化した。このような状況の違いが、団体の「社交の場」としての意義や学生間のつながり方にどのような差異をもたらしたのかが、本研究の主題である。調査方法としては、アンケート調査とインタビュー調査を用い、春学期と秋学期それぞれの活動形式における団体の役割と当時の1年生の大学生活について検討した。その結果、活動自粛を余儀なくされ、対面での活動が不可能であった2020年度春学期と、断続的ではあったが一部対面での活動が行われた2020年度秋学期とでは、団体が果たした「社交の場」としての役割に筆者が想定していた以上に大きな差があったことが明らかになった。特にオンライン上での活動の限界や、それに対して学生が抱いていた想い、不完全ながらも「思い描いていた大学生活」に近づいた秋学期が学生に与えた希望など、当時の団体や学生のリアルが結果として表れたのである。加えて、インタビュー調査で得られた当時の1年生の交友関係の築き方や、インタビュー中の雑談や脱線を通して得られた学生の恋愛への期待感など、筆者が期待していなかった話まで聞くことができた。こうして得られたデータをもとに考察や未来への提言をしたのが本稿である。