本稿は、ケニア、ナイロビの若者たちが個人名をどのように用いているかを調査し、そこから彼らの考え方やアイデンティティを分析しようとするものである。多民族国家であるケニアにおいて、都市部に集まっている若者たちが、異なる民族の人物との関わりの中で、名前に関する実践をどのように行っているのかを考察していく。論文内で研究背景や先行研究についての検討を行ったのち、ケニアの歴史や民族的な背景を見ていくことで、彼らの使い分けに影響を与える要素について理解を深めようとしている。筆者はケニア・ナイロビにて英語を用いた半構造化インタビューを行い、彼らの名前の使用状況について調査を行った。調査からは、彼らが話す相手や状況によって名前を使い分けている様子が読み取れたが、その要因となっている要素は一様ではなく、使い分けを行う意図や理由にはバリエーションがあることがわかった。考察においては、社会的な要素と、使い分けを行う人物による個人的な要素という観点から、彼らのアイデンティティや実践について検討している。