33年ネット諸兄姉(2025.10.24)
「日本国憲法の逆襲」その一
先に、ジョン・ダワー著「敗北を抱きしめて」に基づき、まだ明治憲法下なのに、昭和天皇の奮闘による「象徴天皇制民主主義の成立」について書いた。そのあと昭和二十一(1946)年十一月三日に、日本国憲法が成立し「天皇の地位と主権在民」が定められた。「第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」である。
1989年1月7日に崩御した裕仁天皇から明仁天皇へと代替わりして、平成時代にはいり、在位10年の記念式典が行われた。(崩御のNEWSは、ゴルフ場に行く車の中できいた。ゴルフ場につくと、有名会社の車の呼び出しアナウンスがかかり、みなどんどん引き上げていった。しかしゴルフ場は半旗も掲げず通常通りの営業だった。
昔だったら、すぐに警察に営業停止させられただろう、いや、不敬罪で引っ張られたかもしれない。)
以下は、25年前に出版された「世界」特集「2000年の象徴天皇制」(岩波、2000年1月号)から、いま、9.21のフジtv、17:25のcrossoverで物議をかもしている田原総一郎が語る「日本国憲法の逆襲」である。田原総一郎は云うまでもなく昭和9年(1934年)生まれ、わたしと同世代である。
★「日本国憲法の逆襲」司会佐高信(さたか まこと、1945年〈昭和20年〉1月19日、評論家)
第一回田原総一郎
●引き回された世代
佐高;田原さんの人生は 裏切られた人生ですね 。
田原;僕が 国民学校へ入ったのがー九四一 (昭和十六年)です。その12月に太平洋戦争が始 まる。校長をはじめ先生たちに、「君ら 大東亜戦争の捨石になれ、それで天皇陛下のために死ね、 君らの 寿命ははたち。はたちより先を生きようと思うな 」と 教えられました。小学生ですから、そうなのかですからそうなのかと思った。
国民学校五年のときに 敗戦になるわけです。教科書に墨を塗ったりした世代です。それから天皇の御真影を焼いたんです。教師の指導で。
それで新制中学に入りますと、今度は教師たちがみんな、戦争は悪だ、とくに日本の 戦争は侵略戦争で、犯罪的戦争である。戦争なんかやるのは人間じゃない、 君らはもし戦争が起きるような状態が 起きたら体を張って闘え、と反戦てすね。それで東條以下の A級戦犯は国を売ったひどいやつらだと教えられて、僕はまたそうかな、と。
ところが、高校へ入ったら、ー九五〇年に朝鮮戦争が始まった。すると今度は戰争にもいい 戦争と悪い戦争があるとか ,いろいろ言われて、なんでもかんでも反戦というのは共産主義だといわれました。
つまり小学校、中学、高校と上がるごとに、みんなの 言うことが正反対になるわけです。だから、僕とー九三四年 (昭和九年 ) 生まれは大きい声でもの言う人があまりいないと思うんですよ。そのちよつと上の世代は小田実にしても、石原慎太郎とか、江藤淳とか、右も左もひつくるめて大きい声の人が多い。僕より下になるとまた大きい声でものを言う人がいるんですが、僕の世代はそういう意味では谷間みたいな世代です。とにかく大きい声に対して生理的な反発をおぼえる。偉そうに言うのはどうもうさんくさいなという感じがあるわけです。
僕はだいたい組織がきらいです。 官僚組織も、共産党も、創価学会もきらいですね。
佐高;ぐじやぐじゃに引き回された世代という感じですね。
田原;そうです。だから、このあいだも西部邁さんと大げんかした。
「国家のために死ねるか」というから、冗談じゃない、国家なんてどうせバ ―チャルな存在であって、個人のほうがはるかに重大だ、と。組織や、大上段の議論に対して、基本的に疑いがあるんですね。テレビの 「サンデー・プロジェクト』でも、僕は基本的に疑う。だれの言うことでも「すつきりしょう」はしない
●「すっきりしようは危ない」
田原;僕ははっきり 言って、いまの憲法はすでに破られていると思います。いままでは破られなかった。つまり 僕は自衛隊は違憲ではないと思っています。自衛権というのはあると思っている。しかし、今度のガイドラインの見直しは憲法違反です。
ついに憲法も破られた。ボロボロになった憲法は改定した方がいいのではないかという意見と、ボロボロでもいいからいまの憲法を守るという意見に分かれると思いますが、僕はボロボロでもいいから守るべきだという意見です。
それはなぜかというと、一つは憲法改正しようとなると、いまの 風潮ではやつぱり九条を変えてしまおうという空気がきわめて強くなる。もう一つは、もし憲法改正しようと云ったら、アメリカも中国も韓国も、全部反対です。アジアの国はいま何を警戒しているかというと、日本が再び軍事大国になることです。改正といったら、そのイメ—ジがあって、憲法改正しない、いまの憲法を守る日本をアジアも中国も韓国も信頼しているのです。
だから、純理的にいうといろいろ問題があるかもしれませんが、現実的にはやつばり変えるべきではないと思います。
佐高;田原さんの、 いいかげんというのは大事なんだ」という意見に、私もずっと同調してきたのですが、「すっきりしょう」という意見があるでしょう。
田原;それはよくないんです。
佐高;いまの憲法改正の流れは、現実に合わないからすっきりしょうというものですね。でも、すっきりするものなんて実はそんなにないと思うんです。
田原;すっきりするのは危険なんですよ。社会とか国はぐじゃぐじゃしているほうがいいと思う。憲法賛成というのも反対というのもいて、ぐじゃぐじゃしているほうがいいと思う。ついでに言うと、僕はリーダーなんていない方うかいいと思う。リーダ—が出ないときはとてもいい時代です。強いリーダ—が出るときはとても危険な時代だと思う。
佐高;小林よしのりとの対談 (戦争論争)で田原さんは奮闘していますが、小林はなんであそこまで国に思いを、ないものねだりにかけるのかなと思いますね。
田原;それは戦争を知っている世代と知らない世代の違いだと思います。小林にも聞いたんですが、彼にとっては 第二次大戦と 関が原の戦いとが、あまり違わないのです。僕などはあの戦争を体験して、ああいう状況に日本をしてはいけないということ言わなければいけない と思っている。それが全くないのです。
★以下は、田原は、はっきり言っていないが、象徴天皇制の保守派への反撃と読んでいいだろう。
田原;僕は個人的にいうと、いまの天皇、皇后は好きなんです。なぜ好きかというと、まるで民主主義を食って成長したみたいな二人です。僕はいまの天皇(現在の上皇)の皇太子時代に取材したことがあるんです。そうすると、皇太子はものすごく評判が悪い。とくに宮内庁関係とか、自民党をはじめ昭和天皇を支持する人びと、みんなに評判が悪い。なぜかというと、一つはキリスト教徒と結婚した。それから恋愛結婚した。三つ目は自分の子どもを自分で育てていること。いままでの天皇は自分で育てないんですよね。それから 新婚旅行に行って皇太子は奥さんの写真ばかり撮っていたらしい。みっともない、まるで庶民だ、天皇らしくないとかね。 僕はその評判を聞いて、これはいいぞと。
おそらく日の丸・君が代の法制化、国旗・国歌、今の天皇(現在の上皇)は反対だと思う。
しかしというかだからというか、いまの天皇(現在の上皇)は財界とか政界で非常に評判悪いですよ。
佐高 ; 民主的すぎる、と。別に「在位十年」なんてやってもらいたくはなかったでしょうね。
田原;それはあるでしょうね。財界人や政治家にきらわれている天皇はいい線いくのではないか。
市畑;同感するところが多い。同じ世代だな。
イチハタ