研 究 内 容

学術雑誌/書籍で発表してきた論文・原稿の一覧はResearchMAPGoogle Scholar CitationsResearchGateで公開中。ResearchMAPでは著者最終稿がダウンロード可能論文の別刷り(PDF)もお渡し可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

私の研究スタンス

世界有数の豪雪地である白神山地を対象としたニホンザル越冬生態(本来は暖かい森にすんでいた霊長類がなぜ豪雪帯で生き抜けるのか)の解明が私の研究の原点です。学生時代からのテーマで、これからも続けていく予定です。

フィールドワーク主体の生態研究を続けるには、地域の皆さんとの協働は欠かせません。その中で、猿害問題(農業被害問題)を目の当たりにし、「人と野生動物との共存とは何か”   を探求し、現実社会に実装可能な方策を数多く提案したい」という研究動機も生まれてきました。そこで、野生動物と住民との軋轢に対して、様々な時間・空間スケールからどのような問題解決が可能かについて、「動物側」と「住民側」の双方の視点から実学を行っています(注1)。

さらに、「なぜ野生動物と共存すべきか?」という、市民の多くが抱く素朴な疑問にこたえるべく、中型・大型の哺乳類(最近では、サル・シカ・イノシシ・中型食肉目)が森林生態系にて果たす機能の解明に向けた基礎研究も進めています。ときに害獣と呼ばれ一方的に排除の対象となりやすい野生動物でも、森の多種共存に貢献する種固有の生態学的な役割はあるのではないか・・・という動機からです(2)。 


注1 このあたりのテーマ研究に関する私のスタンスを紹介する一般向けに記載した記事もあります(無料閲覧可能

        「国全体の人口が減少する時代の野生動物管理」環境保全 Vol20:53-61

 さらに、ニホンザルを対象にこの点の包括的なレビューを書きました(無料閲覧可能

  Human–macaque conflicts in shrinking communities: recent achievements and challenges in problem solving in modern Japan. Mammal Study, 46巻115-130  


2 もちろん 、「共存すべきか」は、科学ではなく、個々人の価値観にかかわる問題です。野生動物各種がもちうる生態学的機能やサービスがこれからの研究によって特定されたからと言って、「共存すべき」という価値観が社会共通の規範になるとは限りません。ただし、野生動物を害獣(すなわち一方的な排除対象)として、積極的に「かかわり」を断つことが選択されやすい今日の野生動物管理意思決定の現場に対して野生動物との多面的・重層的なかかわり(人、さらには他の生物との不可分な関係性)を見つめなおす科学的エビデンスを提供したいと考えています。共存とは、すなわちそうした「かかわりの再生」そのものだと私は考えています。この辺りの解説は、2022年に出版した「哺乳類学(東京大学出版会)」の書籍の第IV部の「保全」に詳述しています(「保全」にかかわる全4章は私が執筆しました)。


 人口減少に特徴づけられる現代日本における野生動物との共存に向けて、山形大学内で重点研究を立ち上げ(人口減少社会適合型野生動物管理システム創成拠点(2014~2017)」、さらには「人口減少時代に対応可能な野生動物管理とは何か」を考えるためのプラットフォーム(2014~)を産官学連携で構築しました。東北野生動物管理研究交流会というプラットフォームは現在も運営中で、毎年イベントも企画しています。各チラシをクリックすると交流会要旨がみられます。コロナの影響で一時中断していますが、落ち着いたら再開させます!

テーマ別研究概要 

詳細はそれぞれをクリックしてください

1) 野生動物管理を前進させる(生態学的アプローチ)

  鳴声を利用したシカ検知技術「ボイストラップ法」のすべてを公開!誰でもボイストラップ法(AAM法、PAM法)をはじめられる検知モデルや音源をすべて公開中!)

  ※技術的な側面の一部も活用して、以下のマニュアル本を編集・執筆しました。初版は完売(ありがとうございました)。ですが、ご要望にお応えして、丸々一冊を無料公開が実現しました。こちらからアクセスできます

2)野生動物管理を前進させる(政策的な議論)

「人口減少」をキーワードにいろいろと原稿を書いています。この下段にある書籍をぜひご一読下さい。

ワイルドライフ・フォーラム誌に「人口減少時代における農山村と野生生物保全(2010年)」という特集記事、「野生生物と社会」誌に「人口減少時代における野生生物問題(2017年)」という特集記事を角田裕志さんと企画しました。

京大(現在は石巻専修大)の辻さんと霊長類研究という雑誌に「特集:ニホンザルによる被害問題の現状と課題(2018年) 」という特集を組みました。特集の前書きも兼ねた「意見」原稿はこちらから無料で見れます。この特集で、これまで現場で蓄積されてきた保護管理の知見を、論文という形で公開しました。この続報となる特集も、辻さんと企画して、2021年4月に英文誌にて公開されました。私が執筆したニホンザル管理の現時点(2021年現在)における到達点と課題についてのレビューは、オープンアクセスですので誰でも読めます!

4) 豪雪地のニホンザルの生態・行動を理解する