ニホンザルの資源利用を理解し、生息地管理に生かす

Enari & Sakamaki-Enari (2013). Resource use of Japanese macaques in heavy snowfall areas: implications for habitat management.

Primates, 54, 259-269.

北東北に生息するニホンザル個体群は過去の乱獲の影響により孤立分断されています。その一方で、農作物被害を発生させる害獣として捕獲圧が近年高まっているのも事実です。そこで、ニホンザル生息地の保護や管理を実施すべき優先地域を特定するために、奥山群と里山群の生息地利用についての類似性・相違性を評価しました。

本研究における生息地利用の評価は、ラジオ発信器を用いたホーミング法(直接追跡)により明らかにした各群れの位置情報を用い、①固定カーネル密度法による季節利用域の推定、②生態ニッチモデル(ENFA)による資源選択性評価、の2つから行いました。

その結果、奥山群の生息地利用に及ぼす因子は季節的に大きく変動するものの、里山群は偏った生息地利用でニッチ幅も狭いことが明らかになりました。一連の結果から、低標高域の集落に近い高齢針葉樹人工林の除去は、奥山群のハビタットユニット(HU = 生息地の質×量)の向上に貢献する一方、里山群のHUの低下に繋がる効果的な生息地管理手段であることが示唆されました。

この研究のために捕獲した白神のサル

研究成果はハワイで開催されたThe wildlife societyで発表しました。

サルなのになぜハワイ。ま、いろいろ理由がありまして・・・。

後記

これは京大霊長研でPDをしていた際の成果。

当時は年の半分以上を白神で過ごし、相当な数の罠を自作し、ひたすらサルを捕獲していました。たぶん、当時の学術捕獲(生体捕獲)の数は国内トップレベルかと。