豪雪地にすむニホンザルが利用する森の特徴を評価する

Sakamaki & Enari (2012). Activity-specific evaluation of winter habitat use by Japanese macaques in snow areas, northern Japan: implications for conifer plantation management. Forest Ecology and Management, 270, 19-24

これまで、ニホンザルは人工林を雨風をしのぐ程度にしか利用しないと言われてきました。そこでこの研究では、サルの森林利用を、サルの行動別(採食、休息、移動)に評価しました。しかし、ただそれぞれの行動において人工林を利用する/しないだけでは、面白くないですよね。そこで、どのような立地条件(ex.高標高/低標高、南斜面/北斜面など)や属性(若齢林/高齢林など)の人工林を利用するのか、空間的に評価しました。

対象としたサルの群れは、農作物等に依存しない野生群を対象とし、ひたすらサルの群れを直接観察し、2年間で約100時間のデータを収集しました。たった100時間と思われるかもしれませんが、「もうこのような冬期の直接観察は、やりたくない!!」と思うくらいしんどい作業です・・・。なにせ、積雪2mほどの山をサルと同じスピードで歩くのですから。

その結果、サルの採食適地は、低標高の南斜面、林道近くに立地する、若齢の針葉樹人工林に偏っていることが明らかとなりました。これは、植栽木に雪害が発生すること、そして人工林の植栽木が西日本の暖帯林とは異なり成長が遅いこと、この二点が、人工林の林冠閉鎖を遅らせ、サルの餌資源を含む下層植生が繁茂し、人工林でもサルの採食地として機能したと考えられます。また休息適地も、低標高の南斜面の林道脇の若齢の人工林、広葉樹林に偏っていました。

サルは気温の低いときは日光浴をして、体温を上昇させるといわれていることから、白神山地のような豪雪地帯では、餌資源以外に日当たりの良し悪しもサルの森林利用に影響を及ぼすのではないかと考えられます。

思った以上に多雪地に生息するサルは、人工林をうまく利用しているようすを本研究が初めて明らかにしました。

文責 江成(さかまき)はるか