液晶ディスプレイに無数の縦線

液晶ディスプレイに無数の縦線

Apple社のイメージは悪いと言う人は少ない.しかし,それは正解だろうか?

製品開発に関わってきた創業者達の伝説的人物像やiPod, iPad等の商品のイメージが重なっているためと考えられる.

ところが,ユーザーサポート,商法となると疑問に感じることが多い.

私立大学薬学部の新設に関わった際(2005),情報処理実習は当初は全学共用の計算機センターで実施することとなっていた.

熊本大学で同様の形態で情報教育を実施した経験から,それが良策ではないことを知っていたので,情報処理教育は薬学部で独自に実施することを主張しそれがが認められた.急遽全体設計を変更し,iMac G5の設置と集中管理システムが実現した.

注)分離キャンパスに居る学生を移動させるためには前後の時間帯を空けなければならないという問題が生じた. CBT共用試験の実施面では正解であった.

ところが,情報教育の準備段階からiMacの故障が続出,メーカーとのやりとりが始まった.最初は個々のPCの問題という話であったが,最終的にはリコール(リペアエクステンションプログラム)に発展した.2005年iMacリコールの話題は,現在でもウエブ上で見ることができる.電源系の不備だったようである.次年度に二年次の情報処理演習が控えていたため,少々あわてたが,その年の秋には一段落し,本社から幹部が挨拶に来た.当時,情報教育を担当する研究室に所属し,学科主任でもあったため,「言い訳」を一通り拝聴し,今後の対応の迅速化を依頼したことを覚えている.外資系の会社とは言え,そのあたりはきわめて日本的な対応であった.

注)当時,東大の教育用PC千数百台がiMacへ機種変更されたため,地方の小規模システムまで目が行き届かなったのだろう.

2006年5月には,分子計算用パソコンとは別にiMac G5 (シリアルナンバーW8605LJLU2N)を個人的にも利用し始めたが,数年後には液晶画面に縦線が入るようになった.

定年退職後はミラーリングによる外部出力によって32インチハイビジョン「AQUOS」に繋ぎ,老眼鏡なしでメールやウエブ情報を見るためのサブ機として使用していた.最近久しぶりにPC画面を見ると,縦線が全画面に増えていた(下図(左)および追加画像).

念のため,「iMac 縦線」でGoogleで検索すると25800件の情報が得られ,「iMac,縦線,W860(機番の最初の4文字)」で検索すると,95件で「欠陥品」のレッテルが貼られていた.その中のひとつに「iMac縦線問題」の情報を集めているサイトがあり,約500件の情報が入っていた.画面に縦線の入ったという障害情報は画像検索でもお目にかかれる.また,米国では訴訟が起こされているし,外国人のコメントも存在する.


ウエブに書かれている内容をまとめると以下の通りである.

・メーカーのサポートに電話すると,修理代5万円で有償修理と言われ,門前払いされた.

・有償修理と言われたので,外部モニターを購入した.

・「ウエブ情報では無償修理した人が居る」と言うと社内で相談後,無償修理になった.

・電話相談しても,マニュアル通りの決まり文句の対応で埒があかないので,「消費者センターに相談する」と言うと無償修理になった.

・無償修理で返却されてきたが,再び縦線が出現した.

電話連絡すると,マニュアル通りの対応が待っていて,それを突破すれば無償修理して貰えると書かれている.かなりの人が無償修理してもらったと報告している反面,諦めて廃棄した人もいるようだ.このような状況でもApple社はリコールの対象としなかった.液晶ディスプレイ搭載パソコンを購入する際,ドット抜けが存在するだけで返品する人もいる世の中,障害を起す確率が高い機番まで特定されている状況下対応の仕方に疑問が残る.リチウムバッテリーのように火災を引き起こすのとは異なり,申し出る人の数は販売数に比べて少ないという見解なのだろう.

縦線が全体に拡がった

ハイビジョン出力画面は正常

システム環境設定の「ディスプレイ」の「ディスプレイのミラーリング」を有効にする

ハイビジョンに繋げば縦線は出ないので,PC側の液晶パネルの問題,寝室でサブ機として老眼鏡なしでワイヤレスマウスで操作すると意外に快適である.なお,接続はノートパソコンに付属していたアダプタ(講義の時使用)を流用している.

問題を起こしたiMac G5は,2006年1月それまでのPower PC路線を捨てて,IntelのCPU (Core Duo) に変更された初代機種(カメラ内蔵)で,BootcampでWindowsを走らせることもできる一筐体マシンである. その年の9月には,CPUはCore 2 Duoへ, 2010年にはCore i3, i5, i7へと進化し,複数のCPUを搭載したPCが主流になったが, 単一CPUで同じクロック数なら最新CPUの半分の速度で動くので現在でも使用されている.

Appleの商法についても納得がいかない点がある.消費者にとって関心事である値引きが始まると販売店との取引を停止することである.2010年のはじめ頃,アップルPCが通販で購入できなくなった.マスコミでは「アップル製品のネット通販停止 大手家電量販店相次ぎ」,「締結した小売店以外、Apple製品を販売できない "Authorized Japan Apple Reseller契約" とは?」等の記事が掲載され話題になった.その後,通販で購入できるようになったが,10%程度の値引き価格に統一された.明らかに価格統制を実施しているし,米国が非難する系列化を行っている.「郷に入れば郷に従え」ということであろうか.

私大在職中に,学生に「PCは何を購入すべきか」訊かれたことがある.実習用PCと同じものを購入した学生もいたが,おそらく縦線出現で困っているはずである.リコールや家電品の不都合を公的に取り扱うサイトにもパソコンLCDの縦線問題は取り上げられていない.もし同様の問題が家庭用テレビジョンで起こったらもっと問題になるはずである.


参考資料

1千万回の平方根計算に要する時間は以下の通りである.

Pentium IV 3GHz (Windows XP) 12.3秒

Core Duo 1.83GHz (iMac, Windows XP ) 9.1秒

Core 2 Duo 2.0 GHz (Mac mini,Windows XP) 5.68秒

Core i7 2600K (Windows 7, 64bit) 3.6秒

Windows機の場合,特にノートタイプは部品が手に入りやすいので,液晶パネルは安価に交換できるとのことである.

(2013/4/28)

追加画像


バックグラウンドを黒にした画面