肥後藩参百石 米良家

(書籍)

肥後藩参百石 米良家(書籍)

明治7年の有禄士族基本帳を手掛かりに,曽祖父の西南戦争参加の経緯を調べていく過程で.近所(白川縣第四大区四小区島崎村に米良佐七郎氏が住んでいたことが分かった.米良家ニ代目の米良市右衛門(1662~1735)は,元禄16年(1703)2月4日,細川邸で切腹した堀部弥兵衛の介錯人を務めた.米良佐七郎氏は西南の役で戦死し,家督を継いでいた長男は前年神風連の乱で自刀し,次いで家督を継いだ四郎次氏は屯田兵として北海道に渡った.その後も第二次世界大戦ではシベリア抑留,レイテ沖海戦などを経験しながら血脈を受け継いできた家系である.

最近,その子孫である近藤 健氏(札幌在住)が,下図の表紙デザインの書籍(346頁)を出版された.本書は,義士研究家で近世史に詳しい佐藤誠氏との共著となっているが,本文はエッセイストでもある近藤氏によるものである.

【目次より】

序 文[現当主・米良周策]

●歴史編[近藤 健]

はじめに 米良家の発見

第1章 米良家の源流を求めて

第2章 肥後熊本藩士米良家

第3章 堀部弥兵衛の介錯人米良市右衛門

第4章 その後の米良家

第5章 幕末維新

第6章 神風連の乱と米良亀雄

第7章 北海道移住

第8章 太平洋戦争から現在へ

第9章 米良家の墓と菩提寺

●史料編[佐藤 誠]

熊本藩の侍帳にみる米良家/二代勘助,堀部弥兵衛を介錯す/米良亀雄の自刃/米良左七郎,西南戦争に従軍す/

熊本県からの屯田兵入植者一覧/ソ連邦抑留中死亡者名簿 ほか

米良家年譜/系譜

米良家歴代当主概略/米良家歴代事跡

[付録]エッセイ「介錯人の末裔」[近藤 健]

400年間にわたる一族の足跡が,8年間に及ぶ丹念な史料調査に基づいて紹介されており,その内容は「一家譜を超えた歴史書」となっている.

手がかりになった書類が神棚に残されていたのは奇跡に近い.明治維新直後の廃仏毀釈,西南戦争による市街地焼失,明治熊本大震災,米軍大空襲などで多くの資料が焼失した.明治22年(1889年)7月14日,屯田兵として北海道へ旅立たれた二週間後の7 月28日には熊本西部は大地震にみまわれた.この地震ではあちこちの墓石なども倒壊した.著者は「ご先祖様からのご指名を受け書いた」と述べているが,神棚を担いで移住された十一代米良四郎次氏も先祖に導かれての選択だったに違いない.

5月25日の赤穂民報に,内容が紹介されているので.以下に引用させてもらった.

義士介錯の末孫が一族譜刊行(赤穂民報)

赤穂義士の一人を介錯した武士の末孫にあたる男性が400年間にわたる一族の足跡を詳細にまとめた書籍『肥後藩参百石 米良家-堀部弥兵衛の介錯人 米良市右衛門とその族譜』を上梓した。丹念な史料調査に基づく内容は一家譜を超え、読みごたえのある歴史書となっている。

熊本藩士、米良市右衛門(めら・いちえもん、1662~1735)は元禄16年(1703)2月4日、細川邸で切腹した堀部弥兵衛の介錯人を務めた。著 者の近藤健(けん)さん(53)=札幌市白石区=は、市右衛門から数えて12代目の同家当主、米良周策さん(89)=同市南区=を大叔父にもつ。

近藤さんは8年前、同家に伝わる古文書を手がかりに初祖以降の系譜を調べる作業に取りかかった。義士研究家で近世史に詳しい佐藤誠さん(40)=東京都 西多摩郡=が史料の翻刻に協力。さらに、知人などの協力で「有禄士族基本帳」(熊本県立図書館蔵)など貴重な史料がもたらされ、市右衛門をはじめ、日本史 上のさまざまな戦乱や事件に巻き込まれながら血脈を繋いできた一族の歴史が次々と明らかになった。

本書では、2代市右衛門をはじめ、西南戦争で西郷軍に合流して戦死した9代左七郎、明治新政府に反旗を翻した「神風連の乱」に参加して自刃した10代亀 雄、太平洋戦争後のシベリア抑留中に病死した12代繁実など波乱に満ちた生涯を一代ずつ記述。後半の史料編は共著者の佐藤さんが編集し、市右衛門が堀部弥 兵衛の介錯人だと判明した経緯を記した近藤さんのエッセイ(文藝春秋『2008年版ベスト・エッセイ集』選出)も付録した。

「書くべきことを余すことなく、すべて書けた」という渾身の一冊はA5判346ページ。「ご先祖様のご指名と思い、何とか書き継いだ。やっと肩の荷が下りた」と近藤さん。「時代に翻弄されながらも懸命に生きた姿を行間から感じ取ってもらえれば」と話している。

花乱社(TEL092・781・7550)から6月1日発売。3800円+税。

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近藤氏のエッセイは,ペンネーム小山次男として,北日本石油コーヒーブレイクエッセィ に掲載されている.その中には,文藝春秋『2008年版ベスト・エッセイ集』等に選出されたものがある.

(2013.5.28)