パラシュートへの誤解
その9  
非経験者のパラシュート要望条件に含むリスク 
PJ


パラシュートを装備して使うためには専門知識を得るトレーニングが別途必要です。

パラシュートの知識を持たない人がパラシュートの開傘および降下してゆくイメージをする際に緊急事態に対しての話が全然噛み合わないことが通常です。

その原因は次の2つの誤った固定観念によります。
①必ず無風状態の屋内にあるような大気状態におけるパラシュート稼働のイメージをされてしまいます。

②必ず正常飛行姿勢からのパラシュート射出をイメージされてしまいまいます。

①②とも回収用(着陸用)の予めパラシュート使用を予定しているパラシュートであれば許容できますが、

緊急用パラシュートではほぼありえません。同時にそれは緊急用パラシュートの正常開傘を大きく左右します。

パラシュートの区別がついていないということを理解してもらう必要があります。

パラシュートを装備して使うためには専門知識を得るトレーニングが別途必要です。
それがドローン(無人航空機)であっても同様です。なぜなら自立航行できるドローンが自立航行できなくなった状況が緊急事態です。その状況で緊急パラシュートシステムを取り扱う弊社アドエアに対して自律的な緊急回避を期待した内容の問い合わせを受けます。問い合わせの100%と言っても過言ではありませんがそれがいかに矛盾しているかを理解してもらう必要があります。
操縦者がその安全対策をすべて搭載された安全システムに委ねてしまうことをで安全が確保できるかについて熟考を促します。
万が一の墜落で第三者に対して被害を与えてしまった場合に、操縦者または運行業者から被害者に対して安全システムが予想に反して十分に機能しなかったという説明を2023年に報道を賑わせた無責任な加害者による交通事故での実例になぞらえてみます。
自動車交通時で加害者である高齢ドライバーによる買主のそばにいた子犬に衝突してしまい、被害者への説明の要約が「所有している自家用車にはAIによる自動停止装置が付いているが子犬が小さすぎて反応しなかった」というものでした。91歳の高齢者の言動とはいいながらも安全の確保をシステムに後述するシステム管理に依存している無人航空機の現状と比較して如何でしょうか

万が一の無人航空機の墜落からの衝突事故が発生したとするとその被害者の視点からすると、加害者側の安全対策がこの無人航空機には墜落センサーもついているし自動射出装置もついているんですが残念なことになりました。という意味合いのものだとどうでしょうか おそらく激怒されることと思いますが・・・

ドローンに必須の自立飛行が機能しなくなった常態を緊急事態と言います。
それを根拠として考えると緊急対応をシステムによる自動対応に依存することは矛盾していることを理解する必要があります。


ドローンを使うまたは製造メーカーと思われる企業様よりドローン用パラシュートへの問い合わせが寄せられるたび、総重量、墜落感知センサーによる自動発動、開傘時間を問われます。
こうした問い合わせ内容または依頼内容をいただくと、ほぼ確実にパラシュート非経験者であることが想像できます。
こうした問い合わせを受ける際にパラシュート供給への不安からお取引きに際しては質疑応答や知識の習得を前提としたトレーニングの受講をお願いしていますが理解を得られないことがまだまだ通例な現状です。

自動で発動し開傘する機構があれば墜落アクシデントは軽減できるものという固定観念に基づいてこうした希望条件を告げられているのですが、パラシュートの使用に必要な知識のトレーニングを受けてもらわない限りパラシュートがその機能を100%発揮するとは限りません。

センサーによる墜落感知と自動射出はアクシデント発生事後での対応です。

下記に一例を挙げる専門知識によってアクシデントの発生の可能性に備えた体制を事前にしておくことでアクシデントの被害軽減をより確実にすることが可能です。

●使用するドローン(無人航空機)の失速特性を確認しておく(直進時よりも旋回時のほうが失速の可能性が高い)

●使用するドローン(無人航空機)の失速後の墜落時の落下姿勢、挙動(要実証)を確認しておく(パラシュート射出方向の特定)
●フライトコース上の危険空域の確認と風下側の地上の施設の確認(住宅密集地、幹線道路、高圧電線鉄塔など)

知識の習得は単純ではなく、楽器の演奏のような熟練度の高まりによって磨かれますので収益型ビジネスでよくみられるようなセミナーを受けて即日修得できるものではありません。
それは操縦者の生命を保護する目的のスカイスポーツと違い、飛行する無人航空機の下にある地上で無関係な生活をしている第三者の生命と安全を保護するために必要な知識です。
その知識を誤解して軽視してしまうと墜落によって被害を受ける第三者が発生する可能性があり、操縦者や運行者は刑事罰を受ける可能性を含んでいます。

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