パラシュートへの誤解
その7 -1 
自動開傘装置は未経験者が知識を得ずに使えるという意味ではない
                               PJ

1 パラシュートを扱うにはトレーニングによって知識を身につけることが必要です。

2 自動センサーによる危機の感知と自動射出

3 自動開傘という機械に頼った危うさの理由

4 緊急用パラシュートは国家資格となるほどの情報量を必要とする

5 無人航空機用緊急パラシュートに特化した講習の必要性 ドローン危機対策技術者の提唱

① 有人でパラシュートを使うためには従来は軍隊やスカイダイビングクラブでのトレーニングを受けながら必要な知識と技術を身につけていきます。
そうすることで安全な使用方法を学んで危険を回避するわけです。
そのトレーニングでは飛行機に搭乗する前から、フリーフォール中の合図の確認、搭乗した機内のギアチェックからExitの方法、Exit後の姿勢、体制を崩さない方法、崩してしまった後のリカバリー方法、パラシュートのオープン操作の順序と方法、マルファンクション(誤作動の総称)の確認と対処、最悪の場合はcut away(切り離し)からのリザーブパラシュートのオープンの方法などを学びます。
ここで最も重要なことはマルファンクションという現象ですが、後で説明します。日本語では適切に言い表す表現が見つからないので英語でそのまま表現されています。

② 無人航空機の場合は危機状態となった上空では無人であることから墜落をセンサーで感知して、パラシュートを機械的な方法によって自動で開傘させるということが必須となります。アドエアのパラシュートシステムも必然的に自動感知センサー・自動射出システムとなっています。
では自動で開傘するのなら有人で行うようなトレーニングは必要ないだろうという暗示のような誤解がドローンにパラシュートを搭載することを意識している方々の中で横行していると感じています。
増してやパラシュートのタイプは操縦できないラウンド型パラシュートですから操縦技術も知識も必要ない。という認識がそれを助長しているようです。
しかしスカイダイビングクラブのトレーニングでは40年前にすでに自動感知センサー&自動開傘装置は備わっていました。
そのうえでトレーニングを実施するのです。
インストラクターからはこの機械をあてにするなと言われたのを記憶しています。
故障するという意味ではありません。40年前とは言え民製品ではなくて軍事製品です。その精度はあてにできないようなレベルでは決してありません


スカイダイビング用 自動センサー・自動射出装置 ドイツ製

③ ではなぜそう言われたのでしょう。自動でパラシュートが開傘したところで正常な形状での開傘とは限りませんよ という意味です。
自動という言葉に含まれている意味はオールマイティという意味を含んでいるように受け取れますが、パラシュートが開傘するためには一定の条件を満たすことが必要です、(経験値の高い)人間が行えば(より幅広い状況変化に)あらゆる場面に対処できることに対して、自動射出であることはその一定条件の範囲が特定された範囲に限定されるという代償が必須として存在します。
それをさらに高速開傘のような効果を求めた起動装置を付加することでさらにその範囲を狭めてしまうことになります。
 個別に個々のドローン機体が墜落時の姿勢が重量バランス的にどのような姿勢になるのか。どのような挙動を発生するのか前もって100%決まっているならそうして条件範囲を特定して狭めてしまってもその装置の狙いが有利に働きます。
しかし墜落において墜落原因がはっきり想定されているということはパラシュート以外の事前対応策を取ることが可能ですし、むしろそのほう優れた方法と言えます。それはどのような選択肢かと言えばリスクがある場合は飛ばない、飛ばさない、またはその原因を避けられない飛行コースを避けるといった積極的な回避行動という選択です。
危険があるけれどパラシュートが自動で飛び出すから大丈夫!などというフライトプランは存在しないし、してはいけないのです。
つまり、パラシュートを使う場面とは想定外しかありえないのです。想定外の原因でパラシュートを開くということは開傘条件が特定されているとパラシュートが対応して稼働できないこともあるわけです。もちろんそれはパラシュートメーカーとしての矛盾点を付いたジレンマでもあります。

 例えば、前術のマルファンクションの一例ですがドローンが正姿勢から反転して逆さ状態になってしまったら正姿勢でパラシュートを上空へ向けて飛び出させるシステムが反転したら地上へ向けてパラシュートを開かせてしまうのです。上下逆向きに開いたパラシュートは当然ながら風を(空気を)傘体内部に孕んで展開しませんが、そのナイロン生地と紐の物体となったパラシュートなるべきモノの上にドローン機体が落下して包まれてしまったら!?
もし偶然に上手くすり抜けてもプロペラまたはプロペラを支えるアームにパラシュートのサスペンションラインが引っ掛かってしまったら?
それはご想像の通りパラシュートが有効に機能することはありえなくなります。

④ そうした緊急時のパラシュートの取り扱い知識を備えておく必要があるためアメリカでは連邦航空局によって緊急パラシュートの取り扱い資格が発行されて管理されています。いわゆる国家資格です。
日本国内でのスカイダイビングを実施する場合もすべてアメリカの国家資格に沿って行われています。
日本の法によって管理されていないのに、なぜそんな手間がかかることをするかといえば 死にたくないから、死なせたくないからです。

⑤ 今後ドローンはレベル4に進み、第三者上空を飛行する段階に突入します。
上空から墜落してきたドローンは地上で無関係な生活をしている第三者の頭上から衝突した場合に、重篤な被害を与える可能性を高く含んでいます。

過去にはパラシュートではなくパラグライダーですが第三者へのクラッシュによって重篤な後遺症がが残る被害を与え、被害請求額1億円、刑事事件として罪状:過失傷害で書類送検された事例も存在します。

アドエアではパラシュートの取り扱い知識を含む危機対策技術者資格を制度化して知見の普及を目指しています。